
物語の主人公は、H.Hというイニシャルを持つ男です。彼はかって、とある結社へと所属していました。結社の中からメンバーを選りすぐり、東方への旅が行われることになりました。しかし、その旅は途中で頓挫してしまい、H.Hが所属していた結社も瓦解してしまいました。
H.Hは、そんな結社のことを記録に残そうと思い立ちました。結社には様々な禁則事項がありましたので、それに触れない形で記録はまとめ上げる必要がありました。そして結社の行った東方への旅が、なぜ失敗してしまったのかが語られていきます。
失敗の最大の原因は、彼らに従者として同行したレーオの失踪から始まっていました。レーオがいなくなった時、結社のメンバーは必死でレーオを探しました。しかし、どうしてもレーオを発見することができず、数々の口論を繰り返したあげく、集団は瓦解してしまったのでした。
ところが、ある友人の助言によって、H.Hはレーオを発見することになります。そして、これまで彼が真実だと思っていたことこそが、彼自身が作り上げた妄想だということが明らかになるのでした。
物語の後半で、それまでH.Hが語ってきた事実が反転する展開が面白かったです。
この作品も「荒野の狼」と同じく、主人公は著者の分身ともいえる存在です。著者以外にも、著者の友人や物語の登場人物が作中に顔を出していて(「知と愛」のゴルトムントなども登場します)、ヘッセの作品を読んでいるほど楽しめる作品だと思いました。(^^)
最終更新日 : 2022-10-30