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2016-09-05 (Mon) 00:01

こころ/夏目 漱石

こころ (岩波文庫)漱石の作品はいろいろと読んでいるのに、これまでどうしても読み通せなかった「こころ」を、ようやく読み終えました。

学生時代にその一部が授業で取り上げられた時は、今ひとつこの作品の面白さがわかりませんでした。今考えてみると、それは作品を書かれた時代と現代の、人の生き方の違いのようなものが理解できなかったからだと思います。

主人公の「私」は、とある縁から「先生」と呼び尊敬する人と知り合います。先生はかなりの学識がありながらも、それを活かすことなく、相続した財産によって隠遁生活を送っています。私はそれを不思議に思いながらも、その理由を先生は語ろうとはしません。
そして大学を卒業した私は、病気の父がいることもあり、郷里へと帰ります。そして私の父が危篤状態となったところへ、先生からの手紙が届きます。その手紙には、先生がこれまで誰にも語らなかった、友人を裏切って死に追いやったという過去が語られていたのでした。そして明治天皇が崩御して乃木大将が殉死した時、先生もまた死を選びます。

読み終えて気づいたのですが、この作品では主人公をはじめとする登場人物の名前が明らかにされていません。
それ故か、この作品を読んでいると、時に「私」の、時に「先生」のと、それぞれの心の動きに自分と通じるものを発見することがありました。

そして明かされないのは、名前だけではありません。「私」は「先生」からの手紙を読んで、危篤状態の父を残して東京へと向かってしまいますが、「私」のその後がどうなったのか、先生は本当に殉死したのかさえ、読者の想像にゆだねられています。

物語の誰の視点に立っても読みうること。そして、読み終えた後に、様々な想像の余地が残ること。それが、この物語を今でも魅力あるものにしていると思いました。

現代に生きる私としては、明治天皇の崩御→乃木大将の殉死→先生の殉死とつながる心の動きは、やはり理解しがたいものがあります。そして本人の承諾もなしに、先生とお嬢さんの結婚を決めてしまう奥さんも、今同じことをやったら大問題になりそうです。(^^;

でも、そういう今では理解しがたい部分まで含めてが、明治という時代なんだろうなあと思いました。

最終更新日 : 2022-10-30

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