
これまでに何度かトライしたことがありましたが、そのたびに物語に翻弄されて撃墜されてきました。
今回、読破の突破口となったのは、前に読んだ齋藤孝さんの「本をサクサク読む技術」でした。この本の中で、「百年の孤独」について触れている箇所があり、同じ名前の登場人物が何人も登場したり、過去と未来と現在が同時に語られているのは、作者が意図的に読者を混乱させようとしている、という指摘がありました。
そう思って読んでみたら、初めてこの本の面白さに気づくことができました。物語で語られるのは、南米のとある国にマコンドという村を開拓した、ブエンディア一族の隆盛と滅亡です。そこはまさに、何でもありの世界です。ジプシーの怪しげな錬金術や魔術が、当たり前のように日常と同居しているだけでなく、生者と死者の境界さえ曖昧に感じられます。
そんな世界で繰り広げられる、ブエンディア一族の人々の悲喜こもごも。常軌を逸したバカ騒ぎが繰り広げられたり、夢と現実が交錯するような不思議な感覚。そして隙あらば人間を飲み込もうとする、旺盛な植物の繁茂や昆虫などの繁殖。
そんな全てが溶け合った坩堝のような物語に、いいように翻弄された感じです。
でも、その混沌としたところが、とても魅力的でした。物語の整合性や論理は崩壊していると言ってもいいくらいなのですが、物語が本来持っていた原始的な力強さのようなものを感じました。
この作品がノーベル文学賞を受賞して、20世紀が生んだ物語の豊潤な奇蹟とまで言われる理由が、ようやく理解できました。
最終更新日 : 2016-06-21