
物語の舞台は、2020年です。流れ星の予測をする「メテオ・ニュース」というサイトを運営する木村和海は、サフィール3と呼ばれるロケットのボディが、軌道上で不可解な動きをしていることに気づきました。その些細な出来事は、大がかりな軌道上のテロの始まりでした。
そして和海は、フリーのITエンジニアの明利と共に、JAXA職員の黒崎、関口、そしてCIA、北米航空宇宙防衛軍(NORAD)と力を合わせて、テロを阻止するために行動することになりました。
ハードカバーで500ページほどの作品でしが、長さを感じさせない面白さがありました。舞台となっているのが2020年という近未来なこともあり、そこに登場する技術が聞いたことはあるようなものなのがよかったです。
メインとなるテザー推進は初めて知りましたが、テロの実行犯を見つけ出すのに使われるのが、ローコストなシングルボード・コンピュータとして知られるRaspberry Piだったり、和海のサイトの運営に利用されているのがアマゾンのウェブサービスらしかったり、クリック型広告にウィルスが仕込まれていたり、実際にイメージできるものが多かったので、よりリアリティを感じました。
物語は複数の視点から描かれますが、犯人側の行動の動機となっているのが、先進国と途上国の宇宙開発技術の圧倒的な差だったりして、犯人側にも共感できる部分があったのがよかったです。そして犯人がそこに追い込まれる原因が、技術は全く理解していないのに、巨額の資金を動かす権限は持っている政治家だったという理不尽さには、哀しさと情けなさを感じました。
最終更新日 : 2016-05-31