
前巻の終わりで、ようやく膨張する宇宙というモデルが登場しました。しかし、それが広く支持されるようになるまでには、さらなる論争と観測が必要でした。そしてビッグバン・モデルに対して、定常宇宙モデルという考え方が生まれました。しかし2つのモデルは、それぞれに一長一短があり、優れた科学者ですらどちらが正しいとは、すぐには結論を出すことができませんでした。
その突破口となったのは、天文学ではなく原子物理学でした。下巻ではなぜ宇宙のことを知るのに原子物理学が必要となったのか、それがわかりやすく解説されています。そして新たな観測手段として、電波天文学という方法が生まれます。
これがきっかけとなり、ビッグバン・モデルが予測したCMB放射がある偶然から発見されました。
それによって、ビッグバン・モデルと定常宇宙モデルとの論争は、一気にビッグバン・モデルへと傾くことになりました。
前巻を読んだ時も、新たな仮説が立証されるまでの紆余曲折が印象的でしたが、下巻でもそれは健在でした。新たな仮説が受け入れられるまでに、人間はいかに多くの間違いを犯して、そしてそれを正してきたのかと思うと、その重さに頭がクラクラしました。それと同時に、宇宙がどうなっているかを知りたいという強い好奇心が、ここまで人間を進化させてきたのだなあとしみじみと思いました。
宇宙がどうして始まったのか、それを知らなくても日常生活に支障はないかもしれません。でも誰もそれを知りたいと思わない世界だったら、この世界はもっと寂しい場所だったろうなあと思いました。
最終更新日 : 2022-10-30