
物語の舞台となるのは、四国の磯ノ森と呼ばれる小さな町です。主人公の光介は、そこで両親と一緒に暮らしています。
光介は変化のない田舎の生活に飽きて、漠然と進学する時は都会に行きたいと思っています。しかし、何か具体的な夢があるわけではありません。
そこへ突然、光介の伯母である芹(せり)が娘の双葉を連れて帰ってきました。2人は光介の家の2階で、一緒に生活することになったのでした。これまでほとんど音信もなかった伯母が現れたことで、光介は複雑な心境です。しかし、それを機に光介は隠されていた祖父母の秘密を知ることになるのでした。
光介の祖父母は、写真館を営んでいました。祖父はプロではありませんが、それなりに名の知られた写真家だったのでした。東京の美術館での写真展の開催も決まっていたのですが、それはキャンセルされて、祖父母は借金を抱えることになりました。その後、祖父母は一緒に海で心中したと光介は聞かされていたのでした。
しかし、芹はそれは心中ではなく、どちらか一方が相手を殺害した上で命を絶ったという噂を耳にしていました。そして真相は何だったのか知るために、再びこの町に帰ってきたのでした。それ以外にも、シングルマザーの芹は、まだ小学生の娘の双葉を、自分の目の届くところで育てたいとも思っていました。それには人間関係が希薄な都会よりも、田舎の方がいいという判断もあったのでした。
伯母から祖父母の秘密を聞いた光介は、次第にそのとき何があったのかに興味を持つようになりました。そして独自に、真相を知るために動き始めるのでした。
私自身、田舎に暮らしているので、都会に憧れる光介の心情には共感できるものがありました。そして田舎ゆえの住みにくさ(交通手段や人間関係の煩わしさ)が、ちゃんと描かれているのもよかったです。とはいえ、私は少し都会で暮らしてみて、ここでは絶対に生きていけないと思ってしまいましたが。(^^;
物語は青春小説+軽いミステリーという構成ですが、青春小説としては光介に関わる若者が少なすぎる感じで、ミステリーとしても驚きの結末が待っているわけではありません。でも、ちょっとした登場人物まで存在感が感じられて、読んでいて心地よい作品でした。(^^)
最終更新日 : 2022-10-30
著者;近藤史恵 いつも通りの夏のはずだった……。四国、海沿いの田舎町で暮らす高校生・光介の家に、母の姉・芹と、その娘・双葉が同居することになった。すっかり物置と化したかつての写真店のスペース。その再建を試みる芹は、祖父母が無理心中で死んだと聞かされる…… 凄く不思議な雰囲気をまとった作品。それが、何よりもの感想。「青春ミステリ」とあるが、まさにそんな感じ。 物語はあくまでも... …
2016/01/07 02:23 新・たこの感想文