
この修道女フィデルマ・シリーズ、以前から気になっていたシリーズでしたが、翻訳の刊行が第1作からではなく、第5作からだったので、ちょっと読むのをためらっていました。その後しばらくフィデルマのことは忘れていたのですが、先日本屋に立ち寄った時に、第1作が刊行されていることを知りました。そのおかげで、ようやく読み始めることができました。
物語の舞台となっているのは、7世紀です。主人公の修道女フィデルマは、アイルランドの修道女であると共に、法律にも詳しく、現代の弁護士のような役割を担っています。この第1作では、フィデルマがブリテン島のノーサンブリア王国に赴いて、そのウィトビアという街で開催される教会会議に出席するところから物語が始まります。
この時代、フィデルマたちの世界にはキリスト教が広まっていました。しかし、同じカトリック系でもローマ派の定めた宗規とケルト(アイルランド)派の定めた宗規では様々な部分で違いがありました。そこでノーサンブリア王国で、宗規を統一するための討論会が行われることになりました。この会議に、法律に詳しいフィデルマは同行することになったのでした。
そして、いよいよ会議が始まろうとした時、フィデルマの友人でもあり、ケルト派の有能な弁論者としても知られるエイターン修道院長が殺害される事件が起きました。それは単なる殺人事件では終わらず、ローマ派とケルト派それぞれに対立する派閥の陰謀ではないかという疑念を呼び起こしました。さらに、ノーサンブリア王国の国王オズウィーの王位を巡る争い、そしてブリテン島の政治問題にすら発展しかねない危険をはらんでいました。
そこで有能な弁護士であるフィデルマに、事件の調査が依頼されました。しかし、フィデルマはアイルランド派の人間です。そこでローマ派からも修道士のエイダルフが選ばれて、フィデルマと共に真相を究明することになるのでした。
今回フィデルマとエイダルフの初顔合わせでしたが、この後も2人は一緒にさまざまな事件を解決していくようです。
読み始める前は、もう少し推理寄りの作品なのかと思っていましたが、それよりは歴史小説的な色合いが強い作品でした。同じように修道士が登場するカドフェル・シリーズのような作品かと思っていたので、最初はちょっと戸惑いました。
日本人には馴染みのないカトリックの教義を巡る対立にも少し戸惑いましたが、読み進むうちに気にならなくなりました。
それから、この時代の修道院には、男女別々のものだけではなく、結婚した修道士と修道女が一緒に暮らすことのできる修道院も存在したことには驚きました。
というわけで、推理小説としては、少し物足りない感じがしましたが、歴史小説としてみたらけっこう面白かったです。
最終更新日 : 2022-10-30