
この本は、作家の夢枕獏さんが自らの創作方法について語ったものです。元々はカルチャーセンターの創作講座で語られたものを、本として再構成したもののようです。
今はなき朝日ソノラマ文庫でキマイラ・シリーズを読んで以来、獏さんの小説のファンなので、どんな風に獏さんが物語を作り出しているのか興味深く読みました。一時期はものすごい量の作品を短期間に発表されていましたし、勢いにまかせて執筆されているのかと思ったら^^;、歴史ものでは主人公の年表や日表を作成されたり、作品の中でどこからを嘘にするかをしっかり決めていたり、プロの作家さんとはこういうものなんだな〜と感心しました。
本の中では、獏さんの過去も少し語られていましたが、この人は生まれながらに作家になるべく運命づけられていたんだなあと思いました。本が売れてベストセラー作家になられましたが、もし本が売れてなかったとしてもアルバイトをしながら作品を書き続けていたと語られている箇所には、利害を超えて書かずにはいられない作家の本質と覚悟を見た気がしました。
また、作品のあとがきなどでも時折書かれていますが、自分が死ぬまでにどれだけの作品を生み出すことができるかを見据えながら創作を続けているのも凄いと思いました。
それから、最近の作品に以前のような勢いがなくなったことも、獏さん本人が自覚されていました。その上で、若い頃には持っていなかった技で新たな作品を生み出されているようですが、昔からのファンとしてはやはり若い頃のような無鉄砲さが感じられる作品がまた読んでみたいです。
最終更新日 : 2022-10-30