
普段、ネガティブなイメージで語られることの多い"孤独"の価値を、森さん自身の生き方も語りながら、過剰につながりを求める社会への問題提起をしている本でした。
本の内容は5章にわかれています。第1章では、孤独とはどんな状態なのかを森さんなりに定義していきます。最初にきっちりと言葉の定義から始めるあたり、理系出身の著者らしいなあと思いました。そして、人間には他人から認められたい欲求があることを指摘します。それは一般的な集団の中だけでなく、反社会的な集団内にも存在することが興味深かったです。
第2章では、世間でよく言われるように、孤独なのは悪いことなのかを検証します。そして、孤独=悪というイメージが、さまざまなメディアによって刷り込まれた思いこみでしかないことを指摘します。メディアの洗脳のよくある例として、「努力すれば必ず勝てる」や「夢は必ずかなう」などがあります。私自身、かなり後までこの洗脳に気づかず悩んだことがありましたので、これはとても納得できるものでした。
第3章からは、孤独の必要性が語られます。創造的な活動は、基本的に孤独から生まれることが例を挙げて解説されています。そして第4章では、社会の流れは創造力や発想力を必要とする方向へ動いていること。肉体労働や単純作業は、機械やコンピュータによって置き換えられていること。その結果、ますます人間には創造力が求められていること、などが語られます。
そして第5章では、孤独はネガティブなものではなく、自由を獲得することだとポジティブにとらえることを勧めています。現状では孤独を否定する流れが強いので、時に作者の主張はかなり過激な言い方になりますが、つながりこそ全てと考える人たちには、これくらい言わないと影響力がないのかもしれないと思いました。
この本は、既に孤独を楽しんでいる方にはあまり得るところがないと思います。でも、必要以上につながりを求める社会に疲れている方や悩んでいる方には、新たなものの見方を教えてくれる本だと思います。
最終更新日 : 2022-10-30