
物語の前半は、カエサルとポンペイウスとの戦いです。かっての三頭の1人であるポンペイウスとの戦いは、カエサルにとっても容易なものではありませんでした。手始めにカエサルは、東に逃げたポンペイウスを追うことはせず、西を固めることに専念します。そして西を安定化させた上で、ポンペイウスとの決戦に赴いたのでした。
そしてついにカエサルは、ファルサルスの戦いに勝ち、ポンペイウスへの優位を圧倒的なものにしました。カエサルに敗れたポンペイウスは、エジプトのアレクサンドリアへと逃げました。その地でポンペイウスは、エジプト側の思わぬ思惑のために、殺されてしまったのでした。その死を知って、カエサルは涙を流しました。
その後のカエサルは、アレクサンドリアでの戦いを鎮圧します。そして歴史の舞台に、あの有名なクレオパトラが登場してくることになります。とはいえカエサルは、クレオパトラを妾にはしましたが、それにおぼれることはありませんでした。そしてカエサルは、その後の戦いでついにローマ世界を安定させたのでした。
そしてカエサルは、ローマ国家の改革という仕事に着手しました。暦や通貨、さまざまなシステムの改革を次々とカエサルは実行します。それと共に、着実にカエサルは自分の権力を強化していったのでした。しかし、そんなカエサルに不満を持つ人々がいました。これまでもカエサルに敵対してきた元老院派です。彼らはカエサルが王になることを恐れていました。
そして、運命の3月15日が訪れました。パルティアへの遠征を決めていたカエサルは、その日ブルータスたちの手によって暗殺されたのです。しかし、暗殺には成功したものの、ブルータスたちは民衆の支持を得られませんでした。また彼らには、カエサルを殺した後にどうするかという明確なビジョンもありませんでした。
こうしてローマが混乱する中、カエサルが後継者として遺言に残したオクタヴィアヌスが登場します。しかし、この当時オクタヴィアヌスはまだ18歳でしかありませんでした。カエサルもゆくゆくは後継者にと考えていましたが、この若さでそれが託されることになるとは考えてなかったようです。そしてローマ市民にとっても、オクタヴィアヌスは無名の存在でしかありませんでした。
しかし、この青年はカエサルが見込んだだけの者ではありました。カエサルほどの戦いの才能はありませんが、それを補佐するためにカエサルはアグリッパという軍才に長けた青年をつけてありました。とはいえ、今のオクタヴィアヌスには、ローマを治めるだけの力はありません。現時点では、カエサルの部下であったアントニウスの力が大きかったのです。
けれどもオクタヴィアヌスは、時期を待つことを知っていました。やがて着々と力をつけたオクタヴィアヌスは、アントニウスと並んで第2次三頭政治の1人として力を持つようになりました。そんな中、アレクサンドリアのクレオパトラがアントニウスに接近します。結果的に、クレオパトラに踊らされたことで、アントニウスはローマ市民の反発を買い、オクタヴィアヌスの前に敗れることになったのでした。
こうしてカエサルの思い描いたのと道のりは変わりましたが、結果的にはカエサルの遺言通りオクタヴィアヌスが新たなローマの支配者となったのでした。次巻では、皇帝アウグストゥスとなったオクタヴィアヌスが進める、パクス・ロマーナが描かれることになるようです。
前巻も大作でしたが、この巻も超大作で読み終えるまでに時間がかかりました。
作中で作者自身も語っていますが、本当に作者はカエサルに魅せられているなあと思いました。この時期のローマで、カエサルという存在は光り輝いています。そのため、カエサルが暗殺されてしまうと、オクタヴィアヌスやアントニウスが小者に見えてなりませんでした。そんなカエサルの魅力を生き生きと描いた作者に拍手です。
最終更新日 : 2022-10-30