
舞台となるのは、海賊の出没などで話題になっているソマリア近辺です。米軍に協力する形で、陸上自衛隊の空挺団の精鋭がそこにはいました。ある日、米軍のヘリが消息を絶ちました。その捜索救助活動を行うために、友永たちの部隊は現地に向かいました。しかし、墜落したヘリには生存者はありませんでした。
日暮れを迎えたため、そこで野営することになった友永たちの元へ、現地の氏族間抗争で命を狙われている女たちが逃げ込んできました。そして、それと同時に友永たちも血で血を洗う凄絶な戦いへと巻き込まれていくことになるのでした。敵は証拠隠滅のために、とある氏族全体を皆殺しにしようとしていました。そして事件に関わってしまった友永たちも一緒に始末しようとしたのでした。
突然の敵の襲撃を受けて、仲間の半数は殺されてしまいました。しかし、残された友永たちは、なんとか駐屯地へ帰還しようと死にものぐるいの戦いを始めることになるのでした。「機龍警察」でもそうですが、月村さんの戦闘描写には情け容赦ないものがあります。わずかな味方と乏しい武器。これで本当に友永たちが生き延びることができるのか。そして敵だけでなく、アフリカの過酷な自然も友永たちに襲いかかります。
さらに、メインとなる逃走の途中には、自衛隊内部の闇も描かれました。そして、それと同時に部隊内の複雑な人間関係が明らかになっていくのも見事というほかありません。この作品はあくまでフィクションですが、実際の戦いに巻き込まれた時、自衛隊は本当に戦うことができるのか!?と問いかけているようにも思えました。
最終更新日 : 2022-10-30
著者:月村了衛 ソマリアの国境付近、墜落したヘリの捜索救助に向かった陸上自衛隊第一空艇団の精鋭たち。そんな彼らの元に救助を求める女性が。氏族間の争いに巻き込まれたその女性・アスキラの保護をしたその夜、彼女を追う部族が空艇団を襲撃。多くの仲間を失った空艇団の決死の撤退戦が幕を開ける…… 著者の作品は『機龍警察』シリーズを中心に読んでいるのだけど、ある種の一幕劇。『機忍兵 零牙』... …
2016/06/25 00:59 新・たこの感想文