
この作品の主人公は、真剣師と呼ばれる賭け将棋で生きているおじいさんです。他の獏さんの作品のように、超人的な能力や体力に恵まれているわけではなく、それしか生きてゆく道がなかったから真剣師になってしまったというおじいさんです。
ちょっと暗めなお話ではあるのですが、物語の底にある哀しさがとても味わいのある作品だと思いました。
特にどこかで野垂れ死んでもいいという覚悟を主人公の加倉文吉がしているのが、壮絶な生き方をしているなあと思いました。その覚悟が、とても潔いというか格好いいと思いました。
少し前に、プロ編入試験を経てプロ棋士となられた瀬川晶司さんが、ニュースで大きく取り上げられていましたが、もしも文吉やこの小説の中に登場する様々な事情でプロになれなかった棋士たちがこのニュースを知ったら、どんな反応をするのかなあと気になりました。
将棋の世界も年齢制限とか、いろいろな伝統という名の縛りがあるみたいですが、伝統にとらわれすぎずに、真に強い者が名人になれるというシンプルで説得力のある戦いで勝者を決めたらいいのになあと思います。
最終更新日 : 2022-10-30