日々の記録

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低地 (Shinchosha CREST BOOKS)ジュンパ・ラヒリさんの「低地」を読み終えました。ラヒリさんの作品では「停電の夜に」という最初の短編集のクオリティの高さに驚かされました。それ以来、ずっと気になる作家でしたが、その後の作品は読まないままきてしまいました。今回、たまたま図書館でラヒリさんの新刊「低地」と出会いました。そのまま借りて読み始めたのですが、読んでいる途中でそのクオリティの高さに、これはきちんと買って読むべき本だと思って購入して続きを読みました。

物語はインドのカルカッタから始まります。作者であるラヒリさんの両親は、インドのベンガル系の出身で、それは「停電の夜に」でも作品に大きな影響を与えていましたが、この作品ではそれがより前面に出ています。
そこで育ったスバシュとウダヤンという兄弟が、物語の最初の語り手となりました。同じように育ったスバシュとウダヤンですが、性格は正反対でスバシュは慎重な秀才タイプ、ウダヤンは活発な天才タイプです。共に大学に進んだ2人ですが、そこで2人の生きる方向は分かれます。その当時、インドでは革命運動が起きていました。ウダヤンは、その運動に身を投じます。しかし、スバシュはまじめに勉強を続けて、アメリカへと留学するのでした。

そしてアメリカのロードアイランドが、物語のもう1つの舞台となります。ここも両親と移住したラヒリが暮らした、作者にとって思い入れの深い場所らしいです。そこでスバシュは研究生活を続けています。時折は、弟のウダヤンからも手紙が届きます。そしてスバシュは、ウダヤンがガウリという女性と結婚したことを知るのでした。しかし、そんなウダヤンは、革命のための破壊活動の実行者として殺されてしまいました。残されたガウリのお腹には、ウダヤンとの間にできた子供がいました。

インドに帰国したスバシュは、ガウリとその娘の将来を考えて、ガウリと結婚することを決意するのでした。こうしてガウリは、スバシュと共にアメリカに渡り、そこで暮らすようになりました。そしてやがて、ベラという娘が生まれました。しかし、そんな娘にガウリはあまり愛情を感じることができません。それよりもガウリは、ウダヤンと知り合った頃のように哲学などの勉強に打ち込むようになりました。

そしてベラが小学生になった時、事件が起きました。スバシュはベラをインドの実家へと連れて行きます。しかし、ガウリはそれに同行しませんでした。やがて2人がロードアイランドに帰ってきた時、そこにガウリの姿はありませんでした。なんとガウリは、夫と娘を捨てて、自分だけの道を求めてカリフォルニアへと移住してしまったのです。この出来事は、スバシュとベラの心に大きな影響を与えるのでした。

物語はスバシュやガウリが年老いて、ベラに子供ができた後まで続きます。そしてウダヤンの死の真相も明らかになります。物語は淡々と、でも情景描写は細やかで、静かな雰囲気のまま進んでいます。そして、静かに完結しました。読み終えた今、自分の中の気持ちをまだ整理できないでいますが、ラヒリさんの作品のすごさを改めて感じさせられる内容でした。

この作品でも「停電の夜に」で描かれていたように、1つの集団の中で自分だけが部外者であるという疎外感が強く感じられました。実際にそれで阻害されているわけではなく、感覚として周囲との違いを意識せざるを得ない精神的なものです。この違和感が、いい意味で作品に緊張感を与えていて、読者の心をしっかりとつかんでいると思いました。

物語の中心的な視点は、スバシュ、ガウリ、ベラですが、それに限定されているわけではなく、時にスバシュの母親の視点から物語が語られる場所があったり、またインドからアメリカへと場所の移動や時の流れがありますが、これも常に未来に向かって進むわけではなく時に自由に移動します。それでも全体として、1つの大きな物語としてきちんとまとまっているのが凄いです。

最後に、このところ古本屋で見かけた新潮クレストの本を購入することが多いです。本の装丁が気に入っていることもありますが、内容的に優れた作品が厳選されているように感じました。今回読んだラヒリさんの「低地」も、そんな期待を裏切らないものでした。(^^)

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