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2014-07-31 (Thu) 22:17

迷子の王様/垣根 涼介

迷子の王様: 君たちに明日はない5垣根涼介さんの「君たちに明日はない」シリーズ第5弾、「迷子の王様」を読み終えました。

リストラ請負人の村上真介の人生と、その仕事の過程で関わるさまざまな人々を描いてきたこのシリーズも、今回で終了です。今回は「トーキョー・イーストサイド」「迷子の王様」「さざなみの王国」「オン・ザ・ビーチ」の4作品が収録されていました。私自身が現在仕事での転換期を迎えようとしているせいもあったせいか、今回はいつも以上にどのエピソードも心に深く訴えかけてくるものがありました。

「トーキョー・イーストサイド」では、化粧品業界が舞台となりました。主人公となった女性は、下町育ちのしっかり者です。頭もよく仕事もできる彼女ですが、下町育ち故のエリート層との感覚のずれを気にしています。
このエピソードでは、彼女の心の動きも面白かったですが、それ以上に印象に残る出来事がありました。かって村上にリストラされた男が、今ではコンビニで元気に働いている描写があったことです。リストラにあった時、目を泣きはらしていたその男が、今はコンビニでお客に笑顔を見せながら働いていました。この描写に、とても救われるものを感じました。

「迷子の王様」は、大手家電メーカーでずっとテレビの開発を続けてきた男のお話です。男の父親も開発者で、やはりテレビを作っていました。その姿に憧れて、男も同じ仕事を選んだのでした。しかし、現在主流の液晶テレビは、安価な賃金で製造ができる海外製品に押されています。将来の選択に悩む中、男はすでに退職した父親の元を訪れました。なんと彼の父親は、退職以来田舎に引っ越し農業で生計を立てているのでした。父と話をするうちに、男は物作りの原動力となる大切な思いに気がつくのでした。

「さざなみの王国」は、準大手書店に勤務する女性が主人公です。彼女は幼い頃から優秀な姉と比べられ、できの悪い子供とみられてきました。異常な潔癖症だったり、自分の興味のあること以外への関心が薄かったり、もしかしたら彼女は発達障害なのかもしれないと思えました。
無口で愛想が悪い彼女ですが、不思議と周囲の人間から嫌われていません。その理由がじょじょにわかってきます。彼女は普通の人間なら相手に恩を売ったと思える場面でも、それを相手に求めることがなかったのです。ある意味、天然な人なのですが、単に彼女は自分が気になること(お客さんがいるのに店員が見当たらない)が放置できない、見返りを求めずに人の役に立てる希少な人間だったのでした。

そしてラスト・エピソードとなった「オン・ザ・ビーチ」では、なんと村上の働くリストラ請負会社が廃業することになります。開業当初は、競合相手がいない特殊な仕事でしたが、今では競争相手も現れた上、社会の仕組みがこういった仕事を必要としない方向に進んでいたからです。そこで社長の高橋は、早々と廃業を決意したのでした。
仕事がなくなった村上は、陽子と共に海外での休日を楽しみます。その一方で、密かにこれからに向けての考えを固めていたのでした。最終的に村上がどうなったかは描かれず、その進むであろう方向が示唆されただけで終わりました。それでも物語のラストは、さわやかな雰囲気の心地よいものでした。

こうしてシリーズは終わりましたが、できれば村上がこの先どうなったのかを描いた続編も読んでみたいと思いました。(^^)

最終更新日 : 2014-07-31

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