
東京で路上生活者の生活を調べていた著者は、そこで驚くべき光景を目にしました。ホームレスなどとも呼ばれる路上生活者ですが、彼らの中にはちゃんと家がある・・・それもかなり快適に暮らせる・・・という人たちがいたのでした。廃棄された車のバッテリーから電気を得て、捨てられたオートバイなどから得たライトで明かりをつける。そして、同じく捨てられていたラジカセで音楽を楽しんだり、ラジオを聞き、ポータブルテレビを視聴する。
そんな生活をする一方で、彼らはちゃんと仕事もしています。空き缶を回収して業者に引き取ってもらうと、月に5万円ほどの収入があるのだそうです。そこで得たお金は、全て食材やお酒を買うためにあてられます。その他の物はたいてい路上に落ちています。彼らは、私たちが不用品と思っている物をうまく活用して生きているのでした。
この本を読んでの衝撃は、これまで辛く厳しいだけと思えたホームレス生活が、人によっては知恵と工夫でうまく切り抜けて、けっこう快適に暮らしているということでした。そして、この本を読んでいたら、最低限の収入さえあれば、今の日本では意外と生きていけるものなんだなあという安心感を持ちました。
本には書かれてないだけで、実際にはかなり厳しいこともあるのでしょうが、著者が出会った鈴木さんは本当に魅力的な生き方をしていました。
本の後半では、著者がどうしてこういったものに興味を持ったかが、その生い立ちから語られました。秘密基地的なわくわく感には共感できたものの、その前に読んだ内容のインパクトが強すぎて、ちょっと蛇足になってしまった感じがしました。
最後に1つだけ気になったのは、著者の出会ったある路上生活者のことです。ソーラー発電機を導入して自由に暮らしていた彼ですが、65歳になったら福祉施設で暮らすようになったらしいです。これには本当にがっかりしました。自由気ままに生きてきたなら、その生き方を最後の最後まで貫き通して、死ぬときも路上でくらいの生き方をして欲しかったです。それまでろくに税金だって納めてこなかったでしょうに、最後だけ国のお世話になるのは虫が良すぎます。
最終更新日 : 2022-10-30