
物語は、とある日本人がカンボジアを訪れたところから始まります。男の名は、楢本辰次。彼はとある日本人を探しに、カンボジアへとやって来たのでした。男の名は、越路修介。辰次と同じく、修介も元は自衛隊員でした。ところが、修介は妻子があるにも関わらず、突然カンボジアで現地除隊して消息を絶ってしまったのです。その後、修介の妻と結ばれた辰次は、けじめをつけるために修介に離婚届にサインさせようとやって来たのでした。
ここで物語は、カンボジアでサソン村という村の村長をしているチア・サミンという男に移ります。チアは、元はクメール・ルージュのゲリラでしたが、その後投降して農地を得て、今は村の責任者を任せられているのでした。
そんなチアも、修介と関わりがありました。諸外国からの援助金を引き出すために、カンボジアでの地雷除去作業は遅々として進みません。そんなチアたちのために、修介は地雷探知機で地雷を除去するなど、いろいろと便宜をはかっていたのでした。
そして、もう1人の日本人、丹波明和はカンボジアで識字率を向上させるために学校を開いています。彼はカンボジアの現状を変えようと奮闘していますが、人身売買、売春などカンボジアを覆う闇は深まりこそすれ、なかなか薄まりません。そんな彼も、修介とつながりがありました。彼の経営する学校を、修介が資金面などで援助してくれていたのでした。
こんな3人を通じて、カンボジアで生きる謎の日本人、越路修介の正体がじょじょに明らかになってきます。修介はある大きな目的を持って行動していたのでした。計画は順調に進むかに見えましたが、複数の要素がからまって破綻してしまいます。追い込まれた修介がどんな行動に出るのか、それはこの本に興味を持ってくれた方がご自分の目で確認していただけたらと思います。
この本に書かれていることのどれだけが真実なのかわかりませんが、カンボジアといえばこれまで漠然とアンコールワットなどの遺跡の国としてしか知りませんでしたので、この本で書かれた内容には衝撃を受けました。
長い物語ではありますが、途中で読むのをやめようとは一度も思いませんでした。それほど冒険小説として面白い作品だと思います。
最終更新日 : 2022-10-30