
就職斡旋率100%をうたったセミナーが小笠原諸島で行われることになりました。それにひかれて多くの人間がセミナーに申し込みをします。そこから選ばれた人間たちは、セミナーに参加して小笠原の自然や歴史、人々に触れるうちに何かが変わっていくのでした。
物語のメインとなる3人は、引きこもりの大学生、元ヤクザ、太った女性フリーライターと、それぞれにさまざまな問題を抱えています。最初は半信半疑でセミナーに参加した3人でしたが、セミナーでの日々を通して次第に変わっていきます。その中でも一番興味深かったのは、元ヤクザの柏木でした。amazonのレビューを見るまで気づかなかったのですが、彼はヒートアイランド・シリーズの第2作「ギャングスター・レッスン」に登場したことがある人物でした。元ヤクザという設定ではありますが、この柏木が本当に憎めない人間です。ぶっきらぼうなところや、強面な外見ではあるのですが、どこか人間的に愛嬌があるというか、可愛げがありました。
物語の最初は、セミナーの様子が描かれましたが、次第にセミナーというよりは小笠原諸島のたどった奇妙な歴史などが語られる割合が高くなっていきます。それらに触れることで登場人物たちは変わっていくのですが、なんとなく物語がセミナーものから、小笠原の観光案内に変わってしまったような気がしました。
セミナーを無事に終えた3人は、新たな道を歩き始めます。わずか1週間程度のセミナーで彼らは大きく変わったわけではありませんが、物の見方が少し変わったことで、今までよりも生きやすくなったようです。どんな環境で生きていても、本人が充足感を持って生きている、それが大切なのかなあと思いました。
最終更新日 : 2022-10-30