
「サクリファイス」と「エデン」は白石誓を主人公とした長編作品でしたが、この「サヴァイヴ」は物語の視点が誓だけでなく、伊庭や赤城の視点から描かれた物語も収録されています。前2作とは変わり、今回は6本の短編を集めた作品集になっているのも異なります。
収録されている作品は、誓を主人公とした「老ビプネンの腹の中」、「トウラーダ」、伊庭を主人公にした「スピードの果て」、赤城を主人公にした「プロトンの中の孤独」、「レミング」、「ゴールよりももっと遠く」です。
これまでの誓だけを主人公とした作品より、視点が広がった分だけ物語が広がった気がします。また、物語で描かれるエピソードも、「サクリファイス」や「エデン」の過去だったり未来だったりしてバリエーションに飛んでいました。
これらの作品を読んでいて感じたのは、作者のロードレースに対する愛情です。日本ではマイナーな競技であるロードレースの裏側や人間関係などを、これだけ描いている作品は他には思いつきません。この作品と出会ったことで、ロードレースを始めてみよう、自転車を始めてみようと思った方もいるかもしれませんね。
最終更新日 : 2022-10-30
他人の勝利のために犠牲になる喜びも、常に追われる勝者の絶望も、 きっと誰にも理解できない。 ペダルをまわし続ける、俺たち以外には―。 日本・フランス・ポルトガルを走り抜け、瞬間の駆け引きが交錯する。 ゴールの先に、スピードの果てに、彼らは何を失い何を得るのか。 自転車ロードレースの世界で奮闘する若者を描いたシリーズ小説の三作目。 前二作は長編でしたが本書は六短編を収録したスピ... …
2014/02/04 16:00 粋な提案