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2011-05-09 (Mon) 20:23

罪と罰(上)/ドストエフスキー

罪と罰 (上巻) (新潮文庫)学生時代に読みかけて挫折して、それ以来ずっと完読したいと思っていた、ドストエフスキーの「罪と罰(上)」を読み終わりました。

あまりにも有名な作品なので、あらすじを簡単に紹介します。ペテルブルグに住む貧乏学生ラスコーリニコフは、金貸しの強欲な老婆を殺害してしまいました。それはずっと以前から、彼が計画していたことだったのでした。ところが、彼が犯行を行う時にはいないはずだった、老婆の妹が帰宅してしまい、彼はその妹まで殺してしまったのでした。

冒頭は、ラスコーリニコフが殺人の下調べをする場面から始まるのですが、夏のペテルブルグの蒸し暑さのせいか、それともラスコーリニコフが熱病に冒されていたせいか、蜃気楼の中をさまよっているような現実感のなさを強く感じました。実際に、計画的な犯罪に手を染める者は、本当にこんな気持ちになるのかもしれないと感じました。

そして、ラスコーリニコフが実際に犯行を行う場面は、ちょっとしたサスペンス小説のような感じでした。計画通り犯行を行ったラスコーリニコフ。しかし、次々と彼の犯行には狂いが生じます。それをとっさの行動と運で切り抜けるストーリー展開は、とても緊張感がありました。

犯行を終えたラスコーリニコフは、それから数日間熱病に冒されることになります。この時ラスコーリニコフが感じた世界も、ぐにゃぐにゃと現実感がない不思議な世界でした。それは彼の心が罪の重さに耐えかねて見せた幻影なのでしょうか。

残酷な犯罪に手を染める一方、ラスコーリニコフは酒場で知り合った男・マルメラードフが馬車に引かれて事故死する場面に立ち会うことになりました。葬式をあげる費用もないほど貧しいマルメラードフ家のために、ラスコーリニコフはなけなしの手持ちのお金を、その家に渡すのでした。
一方では殺人を行い、もう一方では人助けを行う、ラスコーリニコフの複雑な性格が興味深かったです。

そして故郷から、ラスコーリニコフの母と妹がやって来ます。妹のドゥーニャは、ある金持ちの男との結婚が決まっていますが、その男がラスコーリニコフは気に入りません。彼の下宿にやって来た婚約者のルージンを、ラスコーリニコフは口汚く追い出してしまうのでした。

それを知った母と妹は驚愕しますが、ラスコーリニコフの気持ちは動きそうにありません。おまけに、ドゥーニャと出会ったラスコーリニコフの友人・ラズミーヒンは、ドゥーニャに好意を持ってしまったようです。
上巻では、ドゥーニャとルージン、ラズミーヒンを巡る物語は途中までしか進んでいませんが、この先どうなってゆくのか楽しみです。

そしてラスコーリニコフは、予審判事であるポルフィーリーの元を訪れます。老婆からお金を借りたことがあるのを、警察に明らかにしておいた方がいいという判断からでしたが、ポルフィーリーはラスコーリニコフが事件の犯人ではないかと疑いをいだいているようです。

この時に紹介されたラスコーリニコフの論文が、なかなか過激です。世間には凡人と非凡人がいる。世の中を変えうる力を持った非凡人には、殺人さえ許されるというのです。これは極論なのですが、ポルフィーリーはラスコーリニコフが自分を非凡人の方だと考えているのではないかと勘ぐっています。

いろいろな登場人物が出てきて、複数の物語も絡み合っています。この物語が、最終的にどんな決着を見せるのか、下巻を読み終えるのが楽しみです。

最終更新日 : 2022-10-30

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