
この第4巻には、その他に同じくデュラスの「愛人」とフランソワーズ・サガンの「悲しみよ こんにちは」が収録されているのですが、それぞれ個別に感想を書きたいと思います。
この「太平洋の防波堤」では、インドシナの植民地に暮らす母親と兄妹の3人家族が描かれました。母親は夫と共にインドシナに希望を持って移住してきましたが、現地で夫が亡くなり、酒場のピアニストをするなどして必死の思いでお金をためました。そのお金で、母親は海辺の土地を買いましたが、それは官吏に騙されていたのです。
その土地では、作物を植えて育てようとしても、ある時期が来ると海が浸食してきて、畑を台無しにしてしまうのです。母親はそれでも苦闘を続け、ついには浸食を防ぐために防波堤を築きます。しかし、その防波堤も蟹に穴を開けられて、崩壊してしまいました。
そんな夢も希望もない荒れ地に、息子のジョゼフと娘のシュザンヌは暮らしています。彼らはそれぞれにこの生活から抜け出すことを考えますが、なかなか状況を打破することができません。そんな時、シュザンヌに目をつけたムッシュウ・ジョーという人物が現れます。しかし、シュザンヌは彼にさんざん貢がせはしますが、結婚相手として彼を選ぶことはありませんでした。
そして、親子はムッシュウ・ジョーから手に入れたダイヤを売りさばくために、街へと出かけます。そこでジョゼフは、金持ちの婦人と知り合います。その婦人には、既に夫がいるにも関わらず、ジョゼフはその婦人との情事に夢中になり、ついには家から出て行くことになるのでした。
この作品を読んでいて一番印象に残ったのは、母親の土地ととの壮絶な戦いぶりでした。何も育てられない土地を、母親は必死で何とかしようとしますが、ことごとく希望は打ち砕かれます。そして、ついには母親は心を病んでゆくのでした。そして、ついに母親は命を落とします。その生涯が非常に壮絶なものだったことが、この作品を読み終わった後にも重く心に残りました。
最終更新日 : -0001-11-30