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2009-10-14 (Wed) 22:13

目に見えないコレクション/シュテファン・ツヴァイク

ウィーンのカフェに関する本を読んだのが原因で、久しぶりにシュテファン・ツヴァイクの本が読みたくなりました。ツヴァイクの作品は、これまで伝記を中心に読んできたので、小説は長編「心の焦燥」くらいしか読んだことがありませんでした。

そこで、この機会にと思い、ツヴァイクの短編小説集「目に見えないコレクション」に手を出してみました。その中から、印象に残った作品の感想です。

「感情の混乱」は、とある青年とその恩師との微妙な感情のやり取りを描いた作品でした。青年は恩師のことを心から尊敬しているのに、恩師は時折なぜか冷たい態度を取ることがあります。
それに加えて、恩師夫妻の間には冷たい断絶が感じられます。その理由を知らぬまま、恩師との付き合いを深める青年でしたが、恩師の妻と関係を結んでしまったことをきっかけに、恩師の重大な秘密を知ることになるのでした。
これはある意味、純文学的なBL小説みたいだなあと思いました。(^^;

「目に見えないコレクション」。とある古美術商が、貴重な銅版画を手に入れようと、かってのお得意だった老人の元を訪れます。しかし、老人は盲目になって、自分のコレクションを見ることができなくなっていたのです。
そして、男はその妻と娘から、銅版画は生活の足しにするために売り払われたことを知るのでした。しかし、2人は老人が悲しむことを恐れて、その事実を老人に話していませんでした。そして、老人は今でも自分のコレクションはそこにあると信じているのでした。

「書痴メンデル」。とあるカフェの片隅に常にいた奇人、メンデルに対する回想です。メンデルには、出版されている数多くの本の書名、著者、出版社、価格などを暗記しているという特異な能力がありました。
その能力で、時に書物を求める知識人の役に立っていたものの、戦争が勃発したことが原因で、メンデルに悲劇が襲いかかるのでした。読み終わった後に、戦争のむなしさを感じました。

最終更新日 : 2022-10-30

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