
一番単純な換字式暗号の解説から始まって、暗号の歴史を辿りより複雑な暗号について解説されてゆきます。単に暗号の説明だけでなく、その方式の暗号が用いられた歴史的な実例をあわせて紹介してくれているので、物語としても楽しむことができました。
最初の方は、実際に頭の中で暗号を変換しながら読み進んでいましたが、エニグマの説明あたりから内容が複雑になり理解するのが困難だったので^^;、主にその暗号がどう使われたのかという歴史の部分に興味を移して読み進みました。
途中のロゼッタストーンの解読から始まる古代文字の解読では、解読の内容よりも、それにまつわる人間ドラマの方が面白かったです。見当違いの仮説を立てて、それが原因で真の究明が遅れてしまったり、解読に大きな貢献を果たしたものの、その成果を見ることなく研究者が亡くなってしまったり。
本の後半では、コンピュータを使った暗号が取り上げられました。このあたりは、公開鍵暗号に興味があって、以前別の本を読んだことがあったので、内容の詳しさという点では少し物足りない気がしました。
しかし、その後の量子コンピュータを使った暗号解読と、量子を使った暗号の作成について書かれている部分は、未来の暗号がどうなるかが示されていて興味深かったです。
この本を読み終えて、人には何かを秘密にしておきたいという願望と、誰かの秘密を暴きたいという願望が同時に存在しているように思えました。そのそれぞれの情熱が、時に強力な暗号を生み出し、時に暗号を解読する強い動機となっているように思えました。
ハードカバーで500ページ近い本ですが、知的好奇心を刺激する内容のせいか、予想外に早く読み終えることができました。連休中、時間に余裕ができる方も多いかと思いますが、そんな時この本を手に取られてはいかがでしょうか。充実した楽しいひとときが過ごせるかと思います。
最終更新日 : 2022-10-30