
著者の経験をベースに、4人の架空の登場人物を用意して、その人たちとの対話という形で内容が進行して行きます。とりあげられた4人は、引きこもりの学生のA君。独身で小説を書き続けているBさん。働くことにやりがいを見いだせないけれど、そこから飛び出す勇気もないCさん。そして、ずっと働いてきたけれど、定年後に自分の人生は何だったのかと疑問を持ったDさん。
前半で語られる、人生は理不尽なものであるという著者の主張には納得できるものがありました。誰でも生きてきた間に理不尽な経験をしたことの1つや2つは必ずあると思います。それは苦々しいことではありますが、どうしようもないこの世の成り立ちなのだと容赦なく著者は説明します。
偶然この世界に生まれてきて、さらにいつかは死んでいかなくてはならない。この世に生まれてきた瞬間から、人は理不尽に振り回される存在なのかもしれません。
著者の主張も中盤までは納得できたのですが、最終的に出てきた答えが哲学的に生きることこそが人生をよりよく生きることだという結論には、ちょっと納得できませんでした。著者のように哲学がなければ生きてゆけない人間にとって、それは真理かもしれませんが、特に哲学的に生きようと思っている人々には、その答えは何の救いにもならないからです。
とはいえ、仕事について、生きることについて、改めて考えさせてくれるよい機会にはなりました。
もし仕事のことで悩んでいたり、なぜ働かなければならないのだろうという疑問を抱えているようでしたら、一読して見る価値のある本だと思います。
最終更新日 : 2022-10-30