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2008-07-23 (Wed) 00:22

空飛ぶ馬/北村 薫

空飛ぶ馬 (創元推理文庫―現代日本推理小説叢書)たぶん10年ぶりくらいに、北村薫さんの円紫さんシリーズの第1作「空飛ぶ馬」を読み返しました。

女子大生の"私"は、「織部の霊」のお話をきっかけに、落語家の円紫さんと知り合いました。"私"自身、以前から円紫さんのファンだったのですが、知り合った円紫さんは落語の他に、もう1つの特技を持っていました。それは、些細な出来事から物事の本質を見抜いてしまう、探偵のような洞察力でした。
円紫さんと親しくなった"私"は、日常の中で遭遇した不思議な出来事を、いつしか円紫さんに相談するようになっていくのでした。

この本には、「織部の霊」の他に「砂糖合戦」「胡桃の中の鳥」「赤頭巾」「空飛ぶ馬」の合計5編の短編が収められています。この中で印象に残ったのは、一見何気ない行動の裏側に、陰湿な悪意が顔をのぞかせる「砂糖合戦」、童話をモチーフにしながらも事件が解決された時に日常に隠されたドロドロが姿を現す「赤頭巾」でした。

それでも、作品全体の雰囲気がほのぼのとした温かいものに感じられるのは、最終話の「空飛ぶ馬」が心温まるエピソードだったことと、"私"の日常描写がほのぼのとして微笑ましいものだからだと思います。

この作品、本編の小説もいいのですが、それと同じくらい雰囲気があっていいのが、高野文子さんが描かれた表紙絵です。"私"がちょっと体をひねって立っている、それだけの絵なのですが、それだけで作品の雰囲気が伝わってくるんですよね。
さらに凄いのは、続くシリーズでも"私"が立っているポーズは同じで、ただ髪型や服装が変わり、じょじょに"私"の成長が楽しめるようになっていることです。

最終更新日 : 2022-10-30

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