
この作品では、「玻璃の天」と比べるとベッキーさんの役割が少ないのが残念でした。謎を解決するヒントは与えてくれるものの、謎解きはあくまで英子が行うという構成でした。
「玻璃の天」と同じく、この作品にも3編が収録されていました。第1作の「虚栄の市」は、英子とベッキーさんの出会いを描いたお話でした。昭和初期という年代にもかかわらず、女だてらに運転手という仕事を選んだ別宮を、英子はサッカリーの「虚栄の市」の主人公・ベッキーになぞらえて、密かにベッキーさんと呼ぶことにしました。
そして、ベッキーさんの助言を得て、英子は2つの場所で起こった死亡事件の関連性に気がつくのでした。
第2作「銀座八丁」は、銀座を舞台として暗号がやり取りされるお話です。3作の中では、この作品が一番面白かったです。
そして、第3作「街の灯」は軽井沢の別荘でのお話です。そこで友人から映画の上映に招かれた英子は、その家の家庭教師が死亡する事件と遭遇しました。家庭教師の死は、殺人ではありませんでしたが、何となく後味の悪い作品でした。
元になったベッキーさんがどんな女性なのか気になったので、サッカリーの「虚栄の市」も少しだけ読んでみましたが、英子が感じたように「嫌なところはあるけれど不快な思いは残らない」とは思えませんでした。(^^;

それから、巻末にあった作者へのインタビューで、北村さんがワープロを使って執筆されていることを知った時には驚きました。なぜか、この方は絶対に手書きで執筆されていると思い込んでいたので・・・。(^^;
シャープの書院を愛用されているようですが、ワープロ専用機が姿を消してしまった今、どんな環境で執筆されているのかちょっと気になりました。
最終更新日 : 2022-10-30
著者:北村薫 街の灯 (文春文庫)(2006/05)北村 薫商品詳細を見る 昭和7年。上流階級の子女が集う学校に通う英子。その英子の運転士として、... …
2010/07/10 00:20 新・たこの感想文