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2006-12-10 (Sun) 21:31

イルカと墜落/沢木耕太郎

イルカと墜落「ミッドナイト・エクスプレス」が気に入ったので、その後もいくつか沢木さんの作品を読みました。しかし、スポーツ選手や著名人を扱った本は、それが書かれた時代と深く繋がっている気がして、今ひとつ共感を持って読むことができませんでした。書かれた当時にはノンフィクションであったものが、今ではもう"歴史"になってしまっているからでしょうか。

この「イルカと墜落」は、沢木さんがNHKの番組を制作するためにブラジルへ出かけて、そこで飛行機の墜落事故に巻き込まれた時のお話です。その事故自体も、それなりに興味深かったですが、その中に登場した1人の人物がとても印象に残りました。

シドニー・ポスエロ。アマゾンの奥地で、いまだに文明人と接触を持たず、古来からの方法で森の中で生きている部族を、できる限りそのままの状態にしておくため、文明人を立ち入らせないようにする仕事をしています。
大義名分やきれい事のためではなく、自分がその方が美しいと思うからという理由で森を守り続けているポスエロ氏の生き方には、とても惹かれるものがありました。

人は文明を得て、さまざまな利便性を手に入れましたが、それと共に失われてしまったものが確実にあるような気がします。文明の中に暮らす私達に、その失われたものが取り戻せるとは思いませんが、それを持ち続けて生きている人々が確実に世界のどこかにいる。それだけで、何だか救われた気持ちになりました。
人は、自分の在りたいように在っていいことを肯定されたような気がしたからかもしれません。

最終更新日 : 2022-10-30

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