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2022-09-05 (Mon) 20:18

夏/アリ・スミス

アリ・スミスさんの四季4部作も、いよいよこの「夏」で完結です。

物語の始まりは、サシャとロバートの姉弟、その母親のグレースと、「冬」に登場したアートとシャーロット(本物の方)との出会いからでした。ロバートはSNSのイジメが原因で、いろいろと問題を起こしています。その日も、サシャの手に瞬間接着剤を塗った砂時計を持たせて、サシャを困らせます。そんなサシャを助けてくれたのが、アートとシャーロットでした。

アートとシャーロットは、亡くなったアートの母(ソフィア)が、ダニエルのところから持ち出した丸い石を返すために、ダニエルの所に向かう途中でした。アートとシャーロットと仲良くなったサシャ、ロバート、グレースは、彼らの旅に同行することになりました。

続いて、ダニエルの過去が語られます。ドイツ系のユダヤ人だったダニエルは、敵性外国人として父と共に収容所に入れられていました。ダニエルはドイツに暮らし、夏だけ再会する妹ハンナに約束した手紙を書きますが、それが届くことはありません。

一方、ハンナは名前や国籍を変えて、ナチの手から逃れています。そしてハンナも、兄との約束通り彼に宛てて、届くあてのない手紙を書きます。その手紙を通じて、その後のハンナがどんな人生を過ごしたのかが垣間見えます。

そしてアートたちは、無事にダニエルとその介護をしているエリサベスと会いました。シリーズを通して読んでいると、この出会いは運命の導きによるものに感じられました。

メインの物語の他に、若き日のグレースとジョンとの出会い。そこで2人が見つけた詩が、とても心に残ったので以下に引用します。
>私の中の木は決して死なない。たとえ私が灰になり、塵に戻ろうとも。その木は空と。地上の私たちをつなぐ。
>私の中の木は決して死なない。恋人たちの寝息も。天空の葉と空気が奏でる。内気な音楽とは比べものにならない。

この物語を読んでいる間、いろいろなことを考えました。かってイギリスでも、敵性外国人の収容所があったこと。それは、現在の移民収容施設に通じるものがあります。そしてそれは、イギリスだけでなく世界中で行われています。
国と国を隔てる国境は、目に見えず存在さえ曖昧なものなのに、人を残酷に分断してしまう。そして、国境とは無関係に広がる新型コロナ。その一方で、誰かを助けようと行動する人達がいることの救い。

この「夏」でシリーズは完結しましたが、四季が巡るように、もう一度このシリーズを読み返したくなりました。(^^)

最終更新日 : 2022-10-30

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