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2022-04-11 (Mon) 23:29

ケルト人の夢/マリオ・バルガス=リョサ

マリオ・バルガス=リョサさんの「ケルト人の夢」を読み終えました。

この作品は20世紀初頭にヨーロッパがコンゴやアマゾンで行った、残虐な植民地支配を告発したロジャー・ケイスメントの生涯を描いた作品です。彼はアイルランド人ですが、植民地の過酷な状況を視察した時は、支配国であるイギリスの領事として多大な貢献をしました。

植民地の状況を知るにつれ、ロジャーは自分の祖国アイルランドも長らくイギリスの支配下にあることに思い至ります。最初はゲール語の学習や歴史の勉強を通して、やがて独立を支援するためイギリスと敵対していたドイツと手を結ぶことを目論みます。しかしロジャーの目論見は失敗して、彼はイギリスに捕まり反逆罪で処刑されました。

物語は刑務所でのロジャーと、彼の過去とが交互に描かれる形で進行します。とはいえ、「ラ・カテドラルでの対話」などのように複雑に時間と場所が入り組んではいませんので、リョサさんの作品が初めての方にも読みやすいと思います。

未開の地で、その地の支配者に敵視されながらも、精力的に現地の実態を調査したロジャーの活動に感嘆しつつ、同性愛者という、彼のもう1つの側面も明らかになります。そしてそれは、やがて彼の命取りとなってしまいます。

そして祖国アイルランドへの強い思いが、ロジャーにイギリスからの独立のためには戦うことも辞さない過激なものとなっていきます。未開の地で、現地の人々の悲惨さを告発した彼が、戦争という悲惨を推進する側に立つことになります。

それは不思議なことのような気がしましたが、1人の人間の中に様々な側面があることは、自分自身やよく知った人たちの中にもみられることです。英雄として称えられながら、その一方で反逆者として貶められたロジャーですが、その複雑さがとても人間らしいと思いました。

最終更新日 : 2022-10-30

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