瀬名秀明さんの「ポロック生命体」を読み終えました。
この本にはAIをテーマにした、4作が収録されています。将棋のAIと駒を動かすロボット・アームを題材にした「負ける」、AIが書いた作品を読む新人編集者とメンターの物語「144C」、AIによって作品の内容や読み手がレベル付けさせる状況を描いた「きみに読む物語」、そしてある画家や作家の死後にAIを使って生み出された作品を扱った「ポロック生命体」。
4作ごとに状況は異なりますが、どの作品を読んでも人より優れた知性をAIが持つようになった時、人はそれとどう向き合うべきかを考えさせられる内容でした。
4作の中では、「負ける」と「ポロック生命体」が特に心に残りました。
「負ける」を読み終えた後には、人がAIと共存する意識変革の必要性を感じました。そしてAIも、性能を追求するだけではなく、人と共存する方法を学ぶ必要があるのではと思いました。人にもAIにも知性があるなら、共存するための努力はどちらか片方だけでなく、両者が歩み寄ろうとしなければ始まらないと思いました。
「ポロック生命体」では、ある創作者のデータを学習したAIが生み出した創作物を、著作権という切り口から描いているところが興味深かったです。創作者を学び、学習を深めることで、全盛期の創作者よりも優れた作品が生まれた時、人はそれをどう捕らえるか考えさせられました。
最終更新日 : 2022-10-30