アンリ・ミュルジェールの「ラ・ボエーム」を読み終えました。
この作品は、まだ無名の芸術家の破天荒な生活を描いた連作短編集です。音楽家のショナール、画家のマルセル、詩人のロドルフ、哲学者のコリーヌを中心に、彼らの貧しくもちゃっかりした生活が描かれます。
彼らはそれぞれに才能がありますが、お金には縁がなく、たいていはお金に困り借金だらけです。たまにお金が入っても、恋人たちも呼び寄せて豪勢な宴会を催したりして、あっという間にお金がなくなってしまいます。(^^;
そうした笑いの裏側で、貧しさの中で死んでゆく者が描かれているのが心に残ります。その中でも著者自身がモデルらしい、ロドルフと恋人のミミのエピソードが印象的でした。
2人は熱烈に愛し合っていたかと思えば、ケンカして別れたり、またよりをもどしたりを繰り返しています。そんな中、ミミはとある貴族に目をつけられて、ロドルフの元を去ります。それでもやっぱりよりが戻り・・・と思ったら悲劇的な結末を迎えて驚きました。
この本では注釈が紙面の左ページにあり、読んでいる途中で巻末と本分を行き来しないでいいのはよかったです。ただ1つ残念なのは、過去のエピソードで解説したものは何話の註何番を参照とあるだけで、ページ数が書かれていなかったことです。これがないので、気になる註釈があった時は、そのエピソードを探し回るのが手間がかかりました。
最終更新日 : 2022-10-30