31歳のフリーター・松田裕は、人間文化研究所の不思議な求人広告に応募しました。仕事の募集なのに、勤務時間や勤務場所、給与などが広告には全く書かれていないのです。
そんな不思議な広告に興味を持った松田は、その面接に参加しました。そこでの課題は、用意されていたポール・アンダースンの「タイム・パトロール」というSF小説を読んで、その感想文を書けというのです。
他の参加者が脱落する中、SF好きだった松田は感想を書き上げて面接を受けました。面接をパスした松田は、ようやく仕事の内容を知らされました。それはなんと、ローマとカルタゴが戦った時代に行って、歴史を変えるゲームに補助員として参加するというものでした。
ドインとエンノンと名乗る男女に連れられて、まず松田は太平洋戦争終了後の日本に移動しました。そこでもう1人の補助員・飯島隆男と出会います。飯島は、その時代に生きる大学生でした。彼は肺結核で死ぬはずのところを、ドインたちの補助員になる条件で命を救われていたのです。
そんな飯島と共に、松田は紀元前の世界へと飛びました。松田たちは、事前準備として現地の言葉や知識を疑似記憶として植え付けた上でカルタゴへとやって来ました。ゲームはローマ側とカルタゴ側に分かれて行われ、松田たちのチームはカルタゴ側の担当だったからです。
松田たちの目的は、カルタゴをそれまでの歴史よりも少しでも良い方向に向かわせることでした。そのための工作として、彼らのチームは第二次ポエニ戦争のハンニバルに注目しました。しかし、いきなりハンニバルの元を訪れても、彼らは不審者として信頼されるはずがありません。
そこで松田たちは、小さな時間移動を繰り返しながら、ハンニバルに接近して信頼を得ようするのでした。しかし、同じチームの飯島と松田は考え方の違いから反目しています。
ハードカバー800ページほどの作品ですが、松田の視点から細かくその時代の状況の説明があって、カルタゴやポエニ戦争のことを全く知らなくても楽しめる作品です。最初は松田の説明がまわりくどい気がしましたが、彼が実際にカルタゴで活動するようになってからは、物語の世界に引き込まれました。
メインはカルタゴの運命ですが、このような歴史操作を行えるドインやエンノンは何者なのかという謎も、なかなか興味深いものでした。
最終更新日 : 2022-10-30