前巻でのバルベックからパリに帰った"私"は、ゲルマント館の一翼に引っ越しました。そこで"私"は、ゲルマント公爵夫人に強い憧れを抱くようになりました。公爵夫人と少しでも親しくなろうと、夫人が通りかかる時間に偶然を装って出会おうとするところに若者の初々しさを感じつつも、一方ではストーカーか!?^^;と思ったりもしました。
そして"私"は、公爵夫人とお近づきになるために、前巻で知り合ったサン=ルーの元を訪れます。サン=ルーは公爵夫人の甥にあたり、彼に頼んで正式に公爵夫人に紹介してもらおうとしたのです。前巻でも触れられていましたが、サン=ルーはドンシエールの兵営にいました。
そこで"私"は、サン=ルー以外の若い兵士たちとも知り合いになりました。彼らと"私"は軍略談義をしつつ、本来の目的をサン=ルーに頼む機会をうかがいます。そして、それは一応成功しました。そんな時、"私"はパリにいる祖母からの電話を受けました。祖母の老いを察知した"私"は、パリへと引き返します。
やがてサン=ルーもパリへとやって来ました。彼の女優をしている恋人が、パリ郊外に住んでいたからです。サン=ルーと恋人は、ケンカをしては仲直りするを繰り返しているようです。サン=ルーに紹介されて、初めてその恋人と会った"私"は、彼女が前から知っていた娼婦だと気づきました。
"私"は過去のイメージからその恋人への評価は厳しくなります。しかし恋に浮かされているサン=ルーからすると、彼女は女神のような存在だと思っています。2人の見ているのは、同じ人物なのに見る人によって、その見方がここまで異なるのが興味深かったです。
私たちがある人を知っていると思った時、どれくらいその人の本質を知っていることになるのか考えさせられました。
この巻でも、"私"を通しての繊細で詳細な描写に圧倒されました。特に前半"私"がオペラ座に赴いた時、観客への細かな観察を行い、そこからさまざまなことを読み取り想像が広がります。実際に読んでいた時は、この場面が延々と続くのに少しうんざりしたのですが、読み終えてから振り返ってみるとその場面が意外なほど記憶に残っていました。
最終更新日 : 2022-10-30