いつともわからない未来、人類はイミジェックスと呼ばれる小型のイヤフォンから、あらゆる情報や娯楽、癒やしを得て暮らしていました。しかし第八都市に暮らすラグ・サートという青年だけは、イミジェックスに依存しきることなく、彼ら一般市民を統率する中央登録市民になるために努力を重ねています。
そしてラグは、なんとか中央登録市民になりました。しかしそこで彼は、中央登録市民さえも本部である中央市からの指示で動いているに過ぎないことを知りました。そしてラグは、上司であり第八都市の変革を目論むハクソンと共に、中央市へと赴きました。そこでラグは、中央市は複数の企業体からなる集合体であり、第八都市はその1つのカガ・コンツェルンに属するものでしかないことを知りました。
それと平行して、ラグの身辺には昆虫のような姿をした宇宙人が現れていました。不思議なことに、彼以外はそこにいるはずの宇宙人に気づかないのです。やがてラグは、それもイミジェックスの影響だと知りました。
そしてラグは、第八都市から逃亡することになりました。彼が逃げ延びたのは、中央市の周辺で暮らす自由民と呼ばれるグループの中でした。自由民とはいえ、都市と関わりなく存在しているのではなく、都市に寄生するようにして稼ぎを得て生活しています。
その中の革新的なグループと出会ったラグは、イミジェックスと宇宙人を排除するために活動を始めます。しかし、宇宙人は自分たちの目的のためにイミジェックスを利用していました。そのためラグたちの活動は、都市を守るパトロールだけでなく、宇宙人からも妨害されて成果を上げられません。
そこでラグは、自分たちもイミジェックスを利用して活動拠点を作り上げようと考えました。そのための場所として、ラグは第八都市を選びました。仲間と共に第八都市に乗り込んだラグは、都市のイミジェックスをコントロールして、自分たちの目的のために市民を利用します。
そんなラグたちは、やがて宇宙人との激しい戦いを始めました。しかし、ようやく宇宙人を追い払ったと思ったら、今度は中央市をはじめとする都市でイミジェックスが停止して、都市機能が失われてしまいました。ラグは、これまで自分たちがしてきたことは何だったのかと疑問を持つのでした。
この作品の最初には、私たちの日常の1コマを描いたかのような「はじめに」があります。そして物語の終わりには、「ふたたび」という同じような日常が描かれます。その間にある物語を読み終えた時、「はじめに」と「ふたたび」の持つ意味が見えてきて、驚かされました。
作品が書かれたのが、1970年代なので古さはありましたが、それを差し引いても面白かったです。眉村さんの他の作品にも見られるように、主人公は体制を外から破壊しようとするのではなく、内部にいながら変革しようとします。
わかりやすい文章で、物語が淡々と進みながらも、読み手を離さず、読み終えた後に深く考えさせられる作品なのは、さすがだと思いました。
最終更新日 : 2022-10-30