
興信所の男が、半年前に失踪した夫の行方を捜して欲しいという依頼を担当することになりました。男はできる限り情報を集めて、調査に乗り出そうとします。しかしなぜか、妻から聞き出せる情報はわずかしかありません。妻は全ては弟に任せてあると言うばかりです。
調査員の男は、これは何かの偽装工作ではないのかと勘ぐりながらも調査を開始します。調査の過程で、妻の弟と出会ったり、夫が関わっていたわずかな手がかりが手に入ります。しかし、一番肝心なことを知る前に、手のひらからすり抜けるように事実を知ることが出来なくなってしまいます。
物語の構成は、いっけん推理小説のようですが、決定的に違うのは事件そのものの謎だけでなく、調査員の男の存在すらも最終的にはあやふやになってしまうことです。その結末もかなり不条理なのですが、読み終えた後に1人の人間の存在とは何なのだろうという疑問が深く心に残りました。
最終更新日 : 2022-10-30