
川又さんの作品は、架空戦記ものは何冊も読みましたが、それ以外の作品は読んだことがありませんでした。amazonのKindleストアをのぞいていたら、たまたま川又さんの「幻詩狩り」を見つけたので、この機会にと読んでみました。
物語は、幻詩と呼ばれる文章を取り締まるための取締官の活動の様子から始まります。そして、なぜ幻詩が生まれたのか、その歴史が語られていきます。その過程で、シュールレアリスムに関わる人たちが次々と登場します。その提唱者であるアントレ・ブルトンが、フー・メイと名乗る謎の少年と出会ったことから全てが始まっていたのでした。
フー・メイが書いた詩には、不思議な力がありました。それを読んだ人間が、覚醒剤を使ったかのように現実から遊離されたような感覚を味わったのです。そして彼の最後の作品である「時の黄金」を読んだ者は、仮死状態のような状況に陥り、そのまま命を落としてしまうのです。
その詩の危険性が知られるようになったのは、日本の零細出版社である麒麟社がとある偶然からブレトンの遺品を手に入れたことからでした。その詩を翻訳する中で、それに関わった多くの人たちが呪術的な詩の力に取り憑かれて命を落としました。それがやがて、幻詩を専門に取り扱う取締官の誕生へとつながるのでした。
この本を読んでいて、言葉の持つ力について考えさせられました。SF作品では、つい海外の作家に目を向けてしまうことが多いのですが、国内の作家の作品にもあらためて目を向けようと思わせてくれた作品でした。(^^)
最終更新日 : 2022-10-30