
ハンガリーの村に生まれた著者は、自分の意志によってではなく、外部から強制される形でドイツ語、ロシア語、フランス語を学ばなければならない状況に置かれました。自伝とはいいながらも、その時々の思いが著者自身の小説のような文体で語られていきます。
幼い頃から、本を読むことが好き、文章を書くことが好きだったのに、何度も言葉を奪われる状況が淡々と語られています。抑えられた文体だからこそ伝わってくる、言語を奪われた著者の苦しみと、生きるために新しい言語を覚えざるを得ない状況。そしてその苦しみは、当事者でなければわからないものだということ。それがとても深く心に残りました。
また「悪童日記」で描かれたいくつかのエピソードは、実際に著者とその兄との間で実際に行われたことだったのも驚きでした。90ページほどの作品ですが、読み終えた後に深く心に残るものがありました。
最終更新日 : 2022-10-30