
この本では、先に完結した神の時空シリーズで詳細が語られなかった、潮田教授が主催したバスツアー事故へとつながるエピソードが語られました。物語の中心となるのは、高村皇に仕える磯笛と、潮田教授のもとで助手をしている永田遼子です。
ある日、高村皇に呼び出された磯笛は、とある使命を受けました。それは学会でも異端児として知られる、潮田教授に関するものでした。理由は磯笛には明かされませんでしたが、高村皇は教授のことを疎ましく思っていたのです。
潮田教授は、國學院大學に研究室を持っていました。永田遼子は、そこで働く助手の1人でした。ある日、遼子が研究室に顔を出すと、たいへんな事件が起きていました。彼女が所属する研究室の同僚である、広田が獣に襲われて殺されたというのです。
そんな中、遼子は潮田教授宛に届いた手紙の中に、神功皇后に手を出すなという脅迫状があったことを思い出しました。そして遼子はまだ恋人未満の加藤範夫と共に、神功皇后について調査を開始したのでした。そんな2人に、女子高生の姿をした磯笛が近づきます。
そして第2の事件が起きました。遼子と同じく、潮田教授のところで助手をしていた藤本由起子が、広田と同じように獣にのど笛を食い破られて殺害されたのです。同じ研究室の助手が、立て続けに獣に殺害される確率の低さを考えて、遼子は事件の裏に何かがあると考えるのでした。
神功皇后の調査を進めていた遼子と範夫は、ある日これまでのシリーズにも登場した猫柳珈琲店へとやって来ました。
もともと霊感に優れていた遼子は、そこで頑固な作家の地縛霊・火地と出会うのでした。そして遼子は、火地から神功皇后に関する解釈を聞かされました。それは遼子にとって、容易に受け入れられるものではありませんでしたが、火地の主張を否定するだけの主張も彼女は持っていません。
さらなる調査を進めようとする遼子の前に、再び磯笛が現れました。ここから先は、ネタバレになるので詳しく書きませんが、遼子や範夫に磯笛が接触していたことが、やがてバスツアーでの事故に繋がっていきます。そして、ついに事故が起きることになります。
この本の存在を知った時、てっきりツアーに参加した参加者視点で物語が語られているのかと期待したのですが、そういう方向性の作品ではありませんでした。いつものシリーズと違い、遼子という研究者の視点からの描写が多かったことで、QEDシリーズに近い雰囲気が"途中まで"はありました。
しかし通して読み終えてみると、神の時空シリーズの前日談としても今ひとつでしたし、歴史ミステリーとしても消化不良な気がしました。
最終更新日 : 2022-10-30