
これまで芥川作品は、小説は読んだことはあっても、日記や随筆などは読んだことがありませんでした。本屋で手に取った時、なんとなく面白そうと思って読み始めたのですが、紀行文でありながら著者の人間くささをより感じさせる内容でした。
前半は松江や京都、槍ヶ岳、長崎、軽井沢など国内の旅の様子が語られます。国内編で一番驚いたのは、軍艦金剛に乗った時の記録があったことです。そこに描かれた、石炭をくべる機関兵の凄まじい働きぶり、そして軍艦の砲身にとまった蝶を見た後の著者の思いが、強く心に残りました。
後半は、上海、江南、長江、北京と続く中国への旅が語られました。各所の史跡を巡る情景が描かれるのかと思いきや、実際に現地に赴いてみたら、詩などに歌われているほどの場所ではなかったなど^^;、かなり手厳しい批評が続くことに驚きました。その一方で、現地で出会った人々の描写が、良い面と悪い面の両方から見えてきます。著者は各地の風物より、とことん人間に興味があったんだなあと感じました。
最後にこの本の良いところでもあり、悪いところでもあるのが、本全体の1/4ほどもある詳細な注と地図が巻末についていることです。本文中に注があると気になる性分なので、行きつ戻りつしていたのも読み終えるまでに時間がかかった原因です。(^^;
最終更新日 : 2022-10-30