
この巻では、妤(よ)にかけられた蠱術を破るために、南方の呪術に詳しい医鶃(いげい)が子蓉(しよう)と対決することになります。
苦心の末に費城を破壊は終わりましたが、孔子の目的はまだ達成されていません。孟孫氏に仕える公斂處父(こうれんしょほ)が、残された成城に陣取り、城の破壊をやめさせようとしていたのです。とはいえ、無理に力押しすれば、先の費城にこもって戦った公山不狃(こうざんふちゅう)との戦いの二の舞になってしまいます。
しかし、孔子はこの問題は何とかなると考えていました。この頃、魯の国は日照りに悩まされていました。そこで大がかりな雨乞いの儀式が行われる予定になっていました。その儀式には、公斂處父も参加しなければなりません。そのためには都まで出向く必要があるからです。仮に公斂處父が儀式を欠席すれば、それを理由に処断する口実ができます。
そんな孔子のところに、思わぬお客がやって来ました。なんと魯の都の騒ぎの原因である子蓉が、孔子の元を訪れたのです。子蓉は、顔儒の里に出向くのに、孔子の仲介が欲しいと言います。本来、別の土地から儒者がやって来た時は、その土地の儒者を表敬訪問することが礼儀だったようです。しかし、子蓉や少正卯(しょうせいぼう)たちは、顔儒の元を訪れていませんでした。(それを口実に顔儒の里を訪れた少正卯は、重傷を負うことになりましたが)
その頃、顔儒の里には南方から医術の達人である医鶃がやって来ていました。医鶃は、その眼力で実際に患者を目にする前から、その病を見抜くほどの力を持っていました。医鶃は本来は、妤のために招いたわけではなく、蠱を植え付けられた冉伯牛(ぜんはくぎゅう)を救うためでした。それが結果的に、妤のためにもなったのです。
医鶃はその力をもって、妤を操る子蓉の術と戦います。子蓉の力は、医鶃を驚かせるほどのものでした。結果的に、なんとか子蓉の仕掛けた罠を切り抜けることができましたが、一歩間違えれば死人が出ているところでした。
2人の最後の戦いは、蠱術が最高の力を得るといわれる満月の夜に行われます。強かな医の練達者である医鶃すらも時に出し抜いてみせた子蓉を退散させて、妤を救うことができるのでしょうか!?
今回は、医がお話の中心だったこともあり、全体的に重い雰囲気でした。この本を読んでいるだけで、こちらも子蓉の蠱術にからめとられているような気がしました。(^^;
しかし医鶃すらも驚嘆させる、子蓉の力は凄まじいですね。物語の主人公である顔回や孔子よりも、自由奔放にパワーをふるう子蓉が、この作品で一番魅力のあるキャラではないかと思いました。
最終更新日 : 2022-10-30