日々の記録

アニメと読書の感想をメインにしたブログです。 ☆ゆるゆるっと更新中です☆

眉村卓さんの「カルタゴの運命」を読み終えました。

31歳のフリーター・松田裕は、人間文化研究所の不思議な求人広告に応募しました。仕事の募集なのに、勤務時間や勤務場所、給与などが広告には全く書かれていないのです。

そんな不思議な広告に興味を持った松田は、その面接に参加しました。そこでの課題は、用意されていたポール・アンダースンの「タイム・パトロール」というSF小説を読んで、その感想文を書けというのです。

他の参加者が脱落する中、SF好きだった松田は感想を書き上げて面接を受けました。面接をパスした松田は、ようやく仕事の内容を知らされました。それはなんと、ローマとカルタゴが戦った時代に行って、歴史を変えるゲームに補助員として参加するというものでした。

ドインとエンノンと名乗る男女に連れられて、まず松田は太平洋戦争終了後の日本に移動しました。そこでもう1人の補助員・飯島隆男と出会います。飯島は、その時代に生きる大学生でした。彼は肺結核で死ぬはずのところを、ドインたちの補助員になる条件で命を救われていたのです。

そんな飯島と共に、松田は紀元前の世界へと飛びました。松田たちは、事前準備として現地の言葉や知識を疑似記憶として植え付けた上でカルタゴへとやって来ました。ゲームはローマ側とカルタゴ側に分かれて行われ、松田たちのチームはカルタゴ側の担当だったからです。

松田たちの目的は、カルタゴをそれまでの歴史よりも少しでも良い方向に向かわせることでした。そのための工作として、彼らのチームは第二次ポエニ戦争のハンニバルに注目しました。しかし、いきなりハンニバルの元を訪れても、彼らは不審者として信頼されるはずがありません。

そこで松田たちは、小さな時間移動を繰り返しながら、ハンニバルに接近して信頼を得ようするのでした。しかし、同じチームの飯島と松田は考え方の違いから反目しています。

ハードカバー800ページほどの作品ですが、松田の視点から細かくその時代の状況の説明があって、カルタゴやポエニ戦争のことを全く知らなくても楽しめる作品です。最初は松田の説明がまわりくどい気がしましたが、彼が実際にカルタゴで活動するようになってからは、物語の世界に引き込まれました。

メインはカルタゴの運命ですが、このような歴史操作を行えるドインやエンノンは何者なのかという謎も、なかなか興味深いものでした。
結城浩さんの「数学ガールの秘密ノート 学ぶための対話」を読み終えました。

今回は数学ガールの秘密ノート・シリーズの中でも、異色の内容でした。今回から新しいキャラクター、ユーリの友人ノナちゃんが登場します。ノナちゃんは、数学が苦手な女の子です。なので今回の内容は、数学としては簡単なものばかりです。

"僕"はユーリに頼まれて、ノナちゃんに数学を教えることになります。最初のうち"僕"は、ノナちゃんに教えたことが理解できているのか、理解できてないのか、わからず戸惑います。それは"僕"の教え方やノナちゃんの考え方に、原因があることがわかってきます。

勉強は暗記して覚えるもの。すぐに答えを出さなければいけないもの。間違えてはいけないもの。間違えたら怒られるもの。わからないと言ってはいけないもの。そうノナちゃんは思い込んでいます。

そしてお話が進むにつれて、ノナちゃんの状況が見えてきます。どうやらノナちゃんは、誰かに「どうしてこんなこともわからないの?」と怒られ続けてきたようです。それがノナちゃんを萎縮させていたのです。

"僕"とユーリは、そんなノナちゃんに間違えてもいい、質問してもいい、すぐにわからなくてもいいと教えていきます。
そしてノナちゃんは、最終的に自分が自分の先生になります。この最後の文章を読んだ時、思わずほろっとしてしまいました。
まさか、数学ガール・シリーズを読んで泣けるとは思いませんでした。(;_;)

この本を読んでいる途中で、これは教わる側のためではなく、教える側にとって考えさせられる内容だと気づきました。自分の過去を振り返っても、教わる側の気持ちがわからない先生に傷つけられたことが何度もあります。

なぜ答えがわからないと殴られて、答えを間違えると大勢の前で笑いものにされて、どうして学ぶことが楽しいと思えるでしょうか!?

教える側は、教わる側より"学ぶ"という道の少し先にいるだけという謙虚さを忘れないこと。教わる側は、常に寄り添ってくれる"自分"という先生が一緒にいることを忘れないこと。
アルセーヌ・ルパン全集の第14巻、「八点鐘」を読み終えました。

この作品は、「塔のてっぺんで」「水びん」「テレーズとジュルメーヌ」「秘密をあばく映画」「ジャン=ルイ事件」「斧をもつ奥方」「雪の上の足あと」「メルキュール骨董店」の、8つの連作短編からなる物語でした。

レニーヌ公爵と名乗ったルパンは、恋するオルタンス=ダニエルと共に、さまざまな謎を解き明かします。
「塔のてっぺんで」での最後に、レニーヌ公爵はオルタンスに3ヶ月後の八点鐘が鳴るまでに、オルタンスがなくした大切なものを取り返してみせると宣言しました。そしてそれまでに、最初の冒険を含めて8つの冒険を体験させると約束しました。

そしてレニーヌ公爵は、約束通りオルタンスが今まで知らなかった冒険をさせます。そして最後の「メルキュール骨董店」で、オルタンスがなくした大切なものが登場します。

これまでのシリーズにはない凝った設定が、なかなか面白かったです。どの事件もそれなりに面白いのですが、1つ1つの内容は、これまでに読んだ短編の方が面白かったと思いました。

8作の中では、深刻なのにどこか笑ってしまう設定の「ジャン=ルイ事件」、古典的な推理小説の味わいがある「雪の上の足あと」の2作が特に面白かったです。
プルーストの「失われた時を求めて(5) ゲルマントのほうI」を読み終えました。前巻よりもページ数は少なかったですが、今度は1年半くらい読むのにかかりました。(^^;

前巻でのバルベックからパリに帰った"私"は、ゲルマント館の一翼に引っ越しました。そこで"私"は、ゲルマント公爵夫人に強い憧れを抱くようになりました。公爵夫人と少しでも親しくなろうと、夫人が通りかかる時間に偶然を装って出会おうとするところに若者の初々しさを感じつつも、一方ではストーカーか!?^^;と思ったりもしました。

そして"私"は、公爵夫人とお近づきになるために、前巻で知り合ったサン=ルーの元を訪れます。サン=ルーは公爵夫人の甥にあたり、彼に頼んで正式に公爵夫人に紹介してもらおうとしたのです。前巻でも触れられていましたが、サン=ルーはドンシエールの兵営にいました。

そこで"私"は、サン=ルー以外の若い兵士たちとも知り合いになりました。彼らと"私"は軍略談義をしつつ、本来の目的をサン=ルーに頼む機会をうかがいます。そして、それは一応成功しました。そんな時、"私"はパリにいる祖母からの電話を受けました。祖母の老いを察知した"私"は、パリへと引き返します。

やがてサン=ルーもパリへとやって来ました。彼の女優をしている恋人が、パリ郊外に住んでいたからです。サン=ルーと恋人は、ケンカをしては仲直りするを繰り返しているようです。サン=ルーに紹介されて、初めてその恋人と会った"私"は、彼女が前から知っていた娼婦だと気づきました。

"私"は過去のイメージからその恋人への評価は厳しくなります。しかし恋に浮かされているサン=ルーからすると、彼女は女神のような存在だと思っています。2人の見ているのは、同じ人物なのに見る人によって、その見方がここまで異なるのが興味深かったです。

私たちがある人を知っていると思った時、どれくらいその人の本質を知っていることになるのか考えさせられました。

この巻でも、"私"を通しての繊細で詳細な描写に圧倒されました。特に前半"私"がオペラ座に赴いた時、観客への細かな観察を行い、そこからさまざまなことを読み取り想像が広がります。実際に読んでいた時は、この場面が延々と続くのに少しうんざりしたのですが、読み終えてから振り返ってみるとその場面が意外なほど記憶に残っていました。
以前から気になっていた、カル・ニューポートさんの「デジタル・ミニマリスト」を読み終えました。

さまざまなテクノロジーが、次々と登場して私たちの生活はさらに便利になっています。しかし、その一方でなんだか息苦しさのようなものを感じていました。この本を読んだおかげで、その理由に気づくことができました。

新しいアプリやテクノロジーは、とても便利で有益です。しかし私たちの使える時間は、1日24時間しかありません。
便利なアプリやサービスに縛られた結果、私たちはいつの間にか個人の主体性を奪われていたのです。

アプリやサービスには、故意に中毒性が作り出されています。それを使えば使うほど、開発者や提供者が儲かる仕組みが用意されています。その結果、私たちは本当に大切なことをする時間を奪われていたのです。

その上で著者は、それらのテクノロジーから少し距離を取ることを勧めます。とはいえ完全にテクノロジーを否定しているのではなく、本当に必要なサービスを少しだけ使おうと提案します。

そしてテクノロジーから距離を取るための方法を、いくつかのステップに分けて紹介しています。
デジタル・ミニマリズムの3原則を、最初に注意すべき点を示します。

 1.あればあるほどコストがかかること。
 2.最適化が成功の鍵。
 3.自覚的であることが充実感につながる。

それから、デジタル片づけの3ステップが示されます。

 Step1.30日のリセット期間を定めて、どうしても必要ではないテクノロジーの利用を中止する。
 Step2.30日の間に、楽しくてやりがいのある活動や行動を見つける。
 Step3.休止期間が終わったら、テクノロジーを再導入します。しかしその時は、その1つ1つについて、自分の生活にどのようなメリットがあるかを慎重に検討する。

この後で、孤独の大切さや、いいねボタンを押さない、趣味を取り戻す、SNSアプリをすべて削除しようと提案します。

この本に書かれているすべてが、すべての人にあてはまるわけではありません。しかしそのいくつかは、何かの気づきがあることではないでしょうか。もしそうなら、この本を読んでテクノロジーとの関わり方を見直してみてはいかがでしょうか。
アルセーヌ・ルパン全集の第13巻、「虎の牙(下)」を読み終えました。

上巻では嫉妬に怒り狂うルパンが見られましたが^^;、下巻では1つ謎が解き明かされたと思ったら、さらにそこから二転三転があって面白かったです。特に真犯人が直接手を下すのではなく、被害者を自ら追い込んでいたのが凄いですね。

そして真犯人が、物語の本当に最後の最後まで登場しないのもよかったです。ルパンは卓越した推理力で、全ての謎を見抜きますが、真犯人の異常なくらいの慎重さがルパンを出し抜くことがあるのが驚きでした。最終的にルパンが勝利したのも、運が良かったからでしたしね。(^^;

下巻では、外人部隊に参加していた時のルパンが何をやっていたかも明かされました。そこでもルパンは、いつの間にか敵の女性たちを虜にして、目的を達成していました。出会った女性に愛されずにはいられない。それがルパンの最大の武器かもしれませんね。

いつもは冒険小説の色合いが濃いルパン・シリーズですが、この「虎の牙」では冒険小説と推理小説の面白さが上手く融合されていると思いました。
アルセーヌ・ルパン全集の第12巻、「虎の牙(上)」を読み終えました。

この物語では、ルパンがドン・ルイス=ペレンナとして、物語の中心となって活躍します。

ドン・ルイスは警視総監から呼び出されて、亡くなった大富豪・コスモ=モーニントンの遺産相続人を探します。

ところが、ルパンの目の前で相続人のフォービル氏とその息子が殺されてしまいます。その犯人として、フォービルの妻に疑いがかかります。

事件の謎を追うルパンは、2人の男女が怪しいとにらみます。それを裏付けるかのように、ルパン自身も何度も命を狙われます。ところが、事件は思わぬ方向へと進み始めます。

まだ上巻なので、物語の大きな謎は何1つ解決していません。最初は調子よく事件を解明しているかに見えたルパンですが、真犯人に踊らされていたことが判明しました。他の物語でそうですが、ルパンは積極的に攻めている時は超人的な力を発揮しますが、受けに回ると意外なくらい脆さをみせますね。(^^;

それから驚いたのは、犯人らしい女性に恋したルパンが、彼女が別の男性を深く愛していると知って、激しく嫉妬する場面でした。ルパンも意外と、器が小さいなあと感じました。(^^; 元子分もルパンに絶対服従してないですし、これから大丈夫か心配になりました。(笑)
創元推理文庫のシリーズ刊行が第1期完結してしまい残念に思っていたら、思わぬところから邦訳が出ていました!

シリーズ9作目となる「ねじれたロウソク」ではなく、20作目となる「歌うナイチンゲールの秘密」です。この作品はナンシー・ドルーの一番古いシリーズ中の1作なので、これまでのナンシーの活躍を知っていれば違和感なく読めると思います。

デパートにお父さんのプレゼントを探しに来たナンシーは、そこで気分が悪くなった老婦人を助けました。老婦人を自宅に送り届けたナンシーは、彼女が祖国で起きた革命を逃れて亡命してきた元皇太后だと知りました。そして老婦人には、離ればなれになってしまった孫がいました。

ちょっとした偶然から、ナンシーは老婦人の孫を見つけました。しかし、その青年は下品で王子らしい気品が感じられません。おまけに青年は、老婦人の持つ貴重な宝物を狙っているようです。

そんな中、ナンシーは老婦人の持つインスターエッグのナイチンゲールが、何か歌を唄っていることに気づきました。キャサリンという有望な服飾デザイナーと知り合ったナンシーは、そのナイチンゲールが彼女の国の言葉で、手がかりは宝石箱にあることを伝えていると知りました。

メインとなる宝石箱の秘密の他に、ナンシーの住む町では窃盗事件が多発していました。ナンシーは何度も、その犯人を追いかけますが、その度に犯人とよく似た別人と遭遇してしまいます。その被害者の中には、ナンシーのお父さんもいました。お父さんは、お金と一緒に大切な書類を失って困っていました。

翻訳された方が異なるせいか、創元推理文庫版とは微妙にニュアンスが違うところもありましたが、探偵として活躍する一方で、友人たちとのピクニック、ボーイフレンドとのデート、キャサリンに協力してファッションショーへの参加と、いつものようにナンシーが大活躍しています。

もう続きの邦訳は読めないと諦めていたので、思わぬ形で未読の邦訳と出会うことができてラッキーでした!
高村友也さんの「スモールハウス」を読み終えました。

同じ著者の「Bライフ」は、自作した小さな家に住む著者の体験記という感じでしたが、この本では海外のスモールハウスに目を向けて、それを元に著者の生き方の思索をまとめた感じの内容でした。

この本では、海外の6人のスモールハウス生活者が紹介されています。それぞれの方の言葉はほとんどなく、彼らと話したことによって著者が考えたことがメインでした。日本と海外では状況が異なりますので、こういう形でまとめられたのかもしれませんが、個人的にはそれぞれの考え方をもう少し知りたかったです。でも内容的には、かなり面白かったです。

著者が「Bライフ」で紹介された家は、本当に素人の最小限という感じでしたが^^;、この本で紹介されている方たちのスモールハウスは、コンパクトでおしゃれな家ばかりです。ネットでスモールハウスについて調べると、ここで紹介されているような小さくて可愛い家の情報がたくさん見つかるのは、やはりその方が一般に受け入れられやすいからなんでしょうね。

環境にやさしいとか、自給自足、お金がかからないとか、小さな家のメリットが上げられていましたが、個人が一人になって安心して寛げる空間が確保できることが、私にはスモールハウスの最大の魅力に思えました。シンプルライフや環境にやさしいは、その余禄として家が小さかったから、たまたまそうなってしまったように思えます。(^^;

この本でも名前が出たソローの「森の生活」を読んで以来、私も森での静かな生活にずっと憧れを持っています。でも虫が苦手だったり(子供の頃は平気だったのに、なぜ!?^^;)、家族のことを考えると、なかなか行動できないですね。
今年最初に読み終えたのは、アルセーヌ・ルパン全集の第11巻、「三十棺桶島」でした。

ヒロイン・ベロニックは、若い頃にボルスキーという男を愛してしまいました。しかしベロニックの父は2人の関係を認めず、怒ったボルスキーはベロニックを誘拐して強引に結婚してしまいました。

2人の間には息子が生まれましたが、今度はベロニックの父が、息子を誘拐して逃亡したのです。ところが父と息子を乗せたヨットは、荒波にのまれて沈没してしまいました。2人の死を知ったベロニックは修道院に入りました。

それから14年が過ぎました。修道院生活に慣れなかったベロニックは、そこを出て今は洋服店を営んでいます。ある日、映画を映画を見に行ったベロニックは、映画に登場したあばら家に、彼女が娘時代に使っていたサインが書かれていることに気づきました。

それが気になったベロニックは探偵を雇い、彼女を掠ったボルスキーがすでに死亡していること、そして映画が撮影された場所がル・ファウエ村の近くにあることを知りました。あばら家を探し出したベロニックは、そので1人の老人が殺害されているのを見つけました。しかし彼女が他の人たちとそこを訪れてみると、死体はどこかに消えていたのです。

この事件をきっかけに、ベロニックは不思議な手がかりをたどって、三十棺桶島と呼ばれるサレック島に向かうことになります。そこで彼女は様々な事件に遭遇して、危機にさらされることになります。もちろん最後には、ルパンが現れて彼女は救われるのですが、周囲から隔絶された島で起きる怪奇的な事件はかなり読み応えがありました。

この作品には、前作「金三角」に登場したパトリス=ベルバル大尉も、ルパンの協力者として登場します。ここでのパトリス大尉は、前作のような足手まといではありませんでしたが^^;、すっかりルパンの手下みたいな雰囲気で、これでいいのか!?と心配になりました。
髙野友也さんの「Bライフ 10万円で家を建てて生活する」を読み終えました。

何にも束縛されない自由な暮らしを求めて、著者は都心から原付で半日くらいのところに安い土地を買い、そこに小さな小屋を建てて住み始めます。

なぜそういう暮らしを選んだのか。全くの素人が、自分の力だけで小屋を作った方法。水や電気の確保。毎日の生活にかかる費用。保険や年金、税金、法律のこと。それらが具体的に、解説されています。

本に書かれた内容は10年近く前のことなので、今では変わっている部分もあると思います。それでも素人でも、自分で調べて工夫すれば、著者のように生活をすることは不可能ではないと知りました。

もちろん著者のような生活は、誰にでも勧められるものではありません。しかし自由な自分の時間を満喫できる生き方もあると知ることは、今の世の中に生きづらさを感じている方にとって、大いに力づけられる内容だと思いました。

今の日本では最低限の生活をしても、過去から見たら十分に贅沢な暮らしができる環境だということ。そして生きるために必要な、本当に最小限の収入はどれくらいなのか。それを具体的な数字として知ることができたのは、とても有意義でした。

便利で快適な暮らしを維持するために、多くのストレスを抱えて、常に疲れ果てるほど働く必要が本当にあるのか。その便利さは本当に必要なのか。深く考えさせられる1冊でした。
アルセーヌ・ルパン全集の第10巻、「金三角」を読み終えました。

傷痍軍人のパトリス=ベルバル大尉は、負傷したときに世話になった篤志看護婦のコラリーが、何者かに狙われていることを知りました。

彼女を救うために、パトリスは同じ傷痍軍人仲間を招集して、コラリーの危機を救います。パトリスとコラリーは不思議な縁でつながっていました。2つに割れた紫水晶を、それぞれが所持していたのです。

やがてパトリスは、コラリーの夫が殺された事件を通して、金三角という謎のキーワードと出会います。その謎解きに、やがてルパンも関わってきます。

前巻に続いて、この巻も第一次世界大戦中の物語ですが、戦意高揚的な内容は少なく、謎解きがメインになっています。またパトリスを通して、傷痍軍人に対する差別を取り除こうという意志も感じられます。

ところがパトリス大尉は、彼に忠実に尽くすセネガル人の部下ヤ=ボンに対して、彼を侮辱するような発言を連発します。これが気になって、この物語の主人公のパトリスに、全く共感できなくなってしまいました。

その上、ルパンが登場したあたりから、パトリス大尉が間抜けで足手まといな人物になって、さらに感情移入できなくなってしまいました。(^^; ルパンが事件に関わったのも、ヤ=ボンのおかげでしたし。

というわけで、今ひとつこの作品は楽しいものではありませんでした。タイトルになっている、金三角の謎もあっと驚くようなものではありませんでしたし。唯一の見所は、終盤のルパンの鮮やかな大逆転くらいだったかも。(^^;
アルセーヌ・ルパン全集の第9巻、「オルヌカン城の謎」を読み終えました。

エリザベートと結婚したばかりのポール=デルローズは、彼女の父が所有するオルヌカン城で暮らすため城にやってきました。ポールは幼い頃に父と旅する途中で、フランス領内でドイツ皇帝と出会いました。その直後に、皇帝に同伴していた謎の女性の手で父は殺害されました。彼も召使いにナイフで刺されましたが、なんとか一命を取り留めました。

ポール少年から事情を聞いた警察は捜査に乗り出しましたが、手がかりは何も発見できないばかりか、その日にドイツ皇帝は別の場所にいたという情報まで得ます。結局、そのまま事件は迷宮入りしてしまいました。

しかしポールは、なんとしても真相を突き止めたいと思っていました。そんな彼はオルヌカン城に到着した日に、思わぬ形で事件の手がかりを得ました。

エリザベートの母はすでに亡くなっていましたが、城に残されていた母の肖像画の女性こそが、幼い日にポールの父を殺した犯人の姿だったのです! しかしエリザベートは、母はそんな人ではないと反発します。

そしてポールは、エリザベートと気まずい雰囲気になってしまいます。その上、その翌日からフランスとドイツの戦争が始まり、ポールは戦場へと向かい、エリザベートと離ればなれになってしまいます。やがてポールは、オルヌカン城に大きな秘密が隠されていることに気づくのでした。

ポールとエリザベートの運命、城に隠された謎と、事件の背後で暗躍する謎の敵と、見所がたくさんあって引き込まれる作品でした。でもルパン・シリーズの中では番外編にあたる作品で、ルパンがほとんど登場しないのが残念でした。(^^;

また、フランスとドイツの戦争中に書かれた作品のせいか、フランスを称えドイツを貶める文章があったり、戦意を鼓舞する文章が多いのも残念ポイントでした。

物語本編では、謎が提示される部分は面白かったですが、後半の謎解きや展開が雑な感じだったのも残念でした。
榛野なな恵さんの「Papa told me Cocohana ver.7 〜王女様の中庭〜」を読み終えました。

例によって、本を手にしたのは春頃でしたが、読み終えたのは年末になりました。(^^;
1作1作じっくり味わって読みたいので、まとめて一気に読んでしまいたくないので、どうしても読み終えるのが遅れがちになってしまいます。

でも、この作品のゆったりとして自由な雰囲気を考えると、これくらいのペースで読むのがちょうどいいかもと思います。

今回は、10作の作品が収録されています。どれもいいお話なんですが、その中でも「シアターストリート」「シークレットベース」「リトルスパークル」「フューチャープラン」「レインレイン」が、特に自分の好みに合いました。

そして巻末には、掲載誌の企画で描かれた「こだわりのモノ」が収録されていました。そこでドラマ化されたブラウン神父のことを描かれているのですが、物語の内容よりも衣装や風景に目がいってしまうというのが、榛野先生らしいなあと思いました。
ドメニコ・スタルノーネさんの「靴ひも」を読み終えました。

この著者の本を読むのは初めてでしたが、お気に入りの作家の1人・ジュンパ・ラヒリさんが惚れ込んで英訳したとカバーにあったので、なんとなく読んでみることにしました。

物語は3つの書がなっています。1つめは、恋人を作り家に帰られない夫に向けた、妻からの批難の手紙です。2つめは、寄りを戻した夫婦が老後を迎え、ヴァカンスに出かけた間に家を荒らされ、飼い猫も行方不明になってしまいます。その片付けをしながら夫が妻の昔の手紙を見つけて、夫の視点から過去が回想されます。3つめは、夫婦の息子と娘がヴァカンス中の両親の家を訪れて、対話をするお話です。

正直、この物語を読んでいる間、あまりいい気分ではありませんでした。論理で徹底的に相手を追い詰める妻、身勝手な理由で妻や子供を捨てながらも再び身勝手な理由で寄りを戻した夫。伯母からの遺産をめぐり対立している、息子と娘。どの登場人物も身勝手で傷ついていて好きになれなかったからです。

しかし、不思議なことに読むのをやめることができませんでした。この物語で描かれている家族ほど極端ではないにしろ、どの家族にもある対立や不満、怒り、悲しみなどが凝縮されている気がしたからかもしれません。そして最後まで読み終えた後の読後感は、不快なものではなく、すっきりとしたものでした。最終的に、事件の結末も明らかになり、ちょっとしたミステリーとしても楽しめたのもよかったです。

書き方によっては、もっと重い内容になったでしょうが、耐えられないほどの重さや暗さではないバランス感が絶妙だったと思います。この感じはどこかでと思ったら、ジュンパ・ラヒリさんの作品にも通じるものだと気づきました。
アルセーヌ・ルパン全集の第8巻、「ルパンの告白」を読み終えました。

前巻までは長編作品が続きましたが、この巻は短編集でした。「太陽のたわむれ」「結婚指輪」「影の合図」「地獄の罠」「赤い絹のスカーフ」「うろつく死神」「白鳥の首のエディス」「麦わらのストロー」「ルパンの結婚」の9作が収録されています。

9作の中では、「赤い絹のスカーフ」が一番面白かったです。偶然手に入れた材料から、何が起きたかを的確に見抜き、自分の目的のためにガニマール警部さえ利用してみせる。やはりルパンは、こういう格好良さが魅力だと思います。

その他では、かって愛した夫人に尽くす「結婚指輪」、「ルパンの冒険」のソニアが再登場する「白鳥の首のエディス」、いきなりルパンとアンジェリク=ド=サルゾー=バンドーム公女との結婚が発表される「ルパンの結婚」が面白かったです。

他の話でもそうですが、ルパンは女性に尽くす一方で、多くの女性から愛されてますよね。大胆不敵で冒険好き、上品さと細やかな心を持ち、そして多分イケメン^^;なルパンが、女性から愛されるのは当然なのかもしれませんけど。(^^;
南直哉さんの「老師と少年」を読み終えました。

活きることに悩む少年は、話を聞いてもらうためにとある老師の元を訪れます。生きるとは何か。本当の自分とは何か。少年は老師に問いかけます。

しかし、いつも老師はその問いかけに対して、明確な答えを出してはくれません。ただわからないということを、教えてくれるだけです。

全編を通して、禅問答を読んでいるような感じでした。読み終えた後に、多少心に引っかかりは残りましたが、深く心に残る内容ではありませんでした。老師が答えを出さない(=出せない)のはいいとして、内容的にもう一歩踏み込みが足りないような気がしました。
アルセーヌ・ルパン全集の第7巻、「水晶の栓」を読み終えました。

この事件は「奇岩城」と「813」の間に起きたらしいです。事件はルパンが、手下のジルベールとボーシュレーが計画した、代議士のドーブレックの屋敷からの窃盗現場から始まります。なぜか手下2人は、水晶の栓を手に入れることにこだわります。それが原因で、2人は警察に逮捕されてしまいました。

ルパンは捕まった2人の手下を救おうとしますが、彼らを救い出すのは容易なことではありません。その上、水晶の栓に隠された謎をめぐってドーブレック、警察、そして謎の敵との対決でも、簡単に相手を出し抜くことができません。その間にも、手下2人の死刑の期日が迫ります。果たしてルパンは謎を解き明かして、手下を救うことができるのか。この2つが、絡み合った面白さのある作品でした。

「813」でもそうでしたが、この作品でもルパンは何度も敵に出し抜かれます。悪徳代議士ドーブレックにしてやられるのはともかく、子供にまで出し抜かれるのはうかつすぎる気がしました。(^^;

そして今回も、ルパンは事件を通してクラリス=メルジ夫人と出会います。例によって、ルパンはこの女性に尽くすことになりますが、結末はやはり苦いものでした。それが「続813」で明かされた出来事へつながる行動へと、ルパンを動かすことになったようです。
アルセーヌ・ルパン全集の第6巻、「続813」を読み終えました。

この巻では、前巻で明らかにならなかった謎が判明します。そして物語の鍵となるのが、ドイツの秘密文書だということがわかります。

一応、この事件にもショルメス(ホームズ)が関わっていますが、事件の大きな謎の解決に挑んだらしいことが示されるだけで、作中で再びルパンと対決することもなく、拍子抜けな感じでした。「奇岩城」での扱いも酷かったけど、さらに扱いが酷くなってますね。(^^;

この巻の感想を書くのは、とても難しいです。何について触れても、前巻からのネタバレを踏んでしまいそうです。ルパンと謎の強敵との戦いも面白いですが、それ以上にルパンのはったりの凄さが感じられる内容だったとだけ書いておきます。

そして物語の結末は、「奇岩城」と同じく苦いものでした。とはいえ、勝手に他人を自分の意のままにしようとしたルパンの自業自得な気がしなくも・・・。(^^;
アルセーヌ・ルパン全集の第5巻、「813」を読み終えました。

パリのパレス・ホテルに滞在していたダイヤモンド王・ケッセルバッハが、何者かに殺害されました。その死の直前、ケッセルバッハのところにはルパンが訪れていました。ルパンが初めての殺人を犯したのかと、世間は騒然となります。

捜査の指揮を執るのは、国家警察部長のルノルマンです。彼が捜査に入ってからも、ケッセルバッハの秘書のチャップマン、ホテルの清掃をしたボーイが次々と殺されました。現場には、813という数字の入ったレッテルが残されていました。
L.Mという頭文字の入ったシガレット・ケースもその後の捜査で発見されましたが、犯人によって奪い返されてしまいました。

今回ルパンは、セルニール公爵というロシア人になりすましています。奇岩城の事件から4年が経過していて、ルパンはなぜか両親を失ったジュヌビエーブという少女を、乳母に預けて育てさせていました。そしてジュヌビエーブの相手として、事件の重要人物になりすまさせたジェラール=ボープレという青年と知り合わせます。

これまでのルパン・シリーズは、ルパンと彼を追う探偵や警察という形式でしたが、この作品ではルパンに勝るとも劣らない組織との対立も物語の大きな要素になっています。ルパンと敵組織、そして警察の3つがそれぞれの思惑で動いていて緊迫感のある内容でした。物語は大きな仕掛けが明かされたところで、次巻の「続813」へと続いています。

最後に明かされる大きな謎は、途中でなんとなく答えが見えていて、やっぱりという感じでした。(^^;
物語の大筋はとても面白いのですが、その途中でルパンがジェラール=ボープレを追い込んで、重要人物になりすまさせる場面は、ルパンの冷酷な一面が描かれていて、あまり気分のよい展開ではありませんでした。
アルセーヌ・ルパン全集の第4巻、「奇岩城」を読み終えました。

アンブリュメジーのジェーブル伯爵の屋敷に、夜中に何者かが侵入しました。伯爵の娘のシュザンヌと2年前に両親を亡くして引き取られた姪のレーモンドは、その気配に気づいて目を覚ましました。

レーモンドは銃を手にすると、逃げ出してゆく賊の1人を撃ちました。その弾は賊に当たり重傷を負わせたものの、不思議なことに賊は屋敷の敷地内で姿を消してしまいました。

レーモンドに撃たれたのは、ルパンだったらしいことが判明します。警察は徹底的に周辺を調査しますが、どうしてもルパンを見つけることができません。そこに現れたのが、イジドール=ボートルレという高校生でした。彼の推理力は、学内でも評判になるほどのものでした。

そんな高校生探偵ボートルレが、ルパンの謎を追うことになります。そして彼は、残された謎の文書からエギーユ・クルーズ(空洞の針)というキーワードにたどり着きました。そしてボートルレがその謎を解き明かしたかと思いきや、そこからまたさらに二転三転する展開になります。

この作品には、再びホームズが登場しますが、なんと事件の調査に取りかかる前に、ルパンに捕らわれてしまいます。おまけに、物語のクライマックスではルパンの前に立ちはだかったものの、ホームズの行動が悲劇的な結末を招くことになりました。

物語のメインは、ルパンとボートルレの対決ですが、ホームズはシリーズに登場するたびに酷い役回りになっていて^^;、ホームズも好きなファンとしては、このあたりはちょっと納得いかない感じです。(笑)

とはいえ、シリーズ中の傑作の1つ言われるだけあって、物語はとても面白かったです。特に終盤、エギーユ・クルーズに秘められた歴史が明らかになってくるところが、スケールが大きくてとても面白かったです。
伊東道風さんの「万年筆バイブル」を読み終えました。

この本では、初めての万年筆の選び方、正しい使い方、その構造、インク、世界の万年筆メーカーなどについて、コンパクトにまとめられています。またパイロットの万年筆の製造現場を取材した、カラー写真付きのページもあって、どんな風に万年筆が作られるのかを知ることもできます。

個人的にはデジタル大好きなので、最近では手書きで文字を書くことは少なくなっていました。この本を手に取ったのは、久しぶりに手書きで文章を書こうとしたら、あまりにも漢字を忘れていることに愕然としたからです。(^^;

字を書くだけなら、鉛筆でもボールペンでもいいですが、それだとモチベーションが上がりません。そこで万年筆を使ったら、少し特別な感じで文章を書けるのではないかと思いました。

しかし、ちょっと調べただけでも万年筆は安い物から高い物まで、ものすごく種類があります。また、最近いろいろなインクが販売されていて、それを試してみたいという気持ちもありました。でも、どれを買ったらいいのかわからず迷っていました。そんな時にこの本の内容は、とてもわかりやすくて参考になりました。
アルセーヌ・ルパン全集の第3巻、「ルパンの冒険」を読み終えました。

百万長者のグルネイ=マルタンは、ルパンからの予告状に怯えていました。彼が集めた数多くのコレクションと共に、その中でも特に価値のあるランバール王女の宝冠が狙われていると知ったからです。グルネイ=マルタンは、娘のジュルメーヌの婚約者であるシャルムラース公爵の提案で、宝物があるパリの屋敷へと向かうことになります。

今回、ルパンの捜索にあたるのはゲルシャール警視正です。どうしてガニマール警部じゃないのかと思ったら、この作品はもともとお芝居として作られて、そのお芝居を見たガリマールという人物が、ルパンにしてやられる警部の名前が自分と似ていることを抗議したからでした。

お芝居として元々作られた作品のせいか、1つの場面で登場人物の会話の応酬が長いのが少し気になりました。そして物語の結末では、ルパンがある決断をしているのも、その後の彼の活躍を考えると不思議な気がしました。

次はいよいよ、有名な「奇岩城」です。昔読んだ覚えはありますが、内容は完全に忘れているので^^;、新鮮な気持ちで物語を楽しめそうです。
ウォルター・アイザックソンさんの「イノベーターズII」を読み終えました。

この巻では、パーソナルコンピュータの誕生、ソフトウェアの発達、ネットワークとWebの誕生、ブログやウィキペディアの出現について紹介されます。最終章として、人間のようなコンピュータではなく、人とコンピュータがお互いの長所で協力し合う未来が語られていました。

1巻は自分自身が直接関わる前の時代のお話でしたが、2巻では自分も関わった時代の出来事も語られていて、読んでいて懐かしく思うところもありました。ただ内容的に、ブログとウィキペディアの重要性が強調されすぎている気がしました。

気軽にネットに記事を投稿できたり、共同で百科事典を作る取り組みは、たしかに有意義なものだと思います。しかし、この2つは他の章で取り上げられているような革新性は、個人的には感じませんでした。これらを取り上げるなら、TwitterやGithubなども取り上げて欲しいと思いました。

とはいえ、全2冊にコンピュータの歴史がコンパクトにまとめられた、わかりやすくてよい本だと思います。この本を読んで、コンピュータのことをもっと知りたいという人が増えるといいなあと思いました。
アルセーヌ・ルパン全集の第2巻、「ルパン対ホームズ」を読み終えました。

前巻では互いに顔見せ程度だったルパンとホームズですが、この巻では2つの事件で激突します。収録されているのは、「金髪の美女」と「ユダヤのランプ」の2作です。

あとがきを読んで知りましたが、日本ではホームズと翻訳されていますが、コナン・ドイルからクレームがあったため名前の文字を入れ替えて、エルロック・ショルメスと原書では表記されているんですね。

違う著者が書いたのだから当たり前ですが、この物語に登場するホームズは何となくホームズらしくないんですよね。さらに言えば、ワトソンは「これ誰!?」という感じがしました。(^^;

また、2つの物語ではルパンとホームズの引き分けといった形で終わっていますが、物語の多くでホームズがルパンに翻弄されすぎている気がします。原書がホームズ表記でないのなら、翻訳もショルメス表記にして欲しかったなあ。

とはいえ「金髪の美女」も「ユダヤのランプ」も、どちらも面白かったです。特に「金髪の美女」では、謎の面白さに加えて、仕掛けの面白さがあって楽しめました。ルパンに協力する、謎の金髪美女という設定も魅力的でした。

「ユダヤのランプ」は、物語のボリュームは「金髪の美女」の半分くらいですが、最終的な真実が明らかになった後の切なさが心に残る作品でした。
ウォルター・アイザックソンさんの「イノベーターズI」を読み終えました。

著者のスティーブ・ジョブズの伝記が面白かったので、コンピュータとインターネットの歴史を書いた「イノベーターズI」も読んでみました。

最初に登場するのは、バベッジの解析機関と世界初のプログラマー・エイダです。そしてプログラム可能な計算機という、重要な概念が生まれました。しかしこの時代にはまだ、コンピュータを実現するための周辺技術が整っていませんでした。
パンチカードを利用した集計機械の時代を経て、次に大きな動きがあるのは100年後でした。

チューリングやシャノンの理論、そして真空管を使った電子計算機がようやく現実の物となります。この時に生まれたコンピュータは、弾道計算や暗号解読など軍事目的で利用されるものでした。

やがて真空管に変わり、トランジスターが生み出されます。トランジスターは、やがてマイクロチップへと発展していきます。この時代には、それらの有用性に気づいた人たちは、技術の特許を獲得競争を繰り広げることになりました。しかし、軍事用機器に大量に使用されたことが、結果としてそれらの部品の価格を引き下げることになりました。

それは、ゲームやコミュニケーションの道具としてのコンピュータという、新たな利用へとつながっていきます。MITの学生たちが作り出した、伝説的なゲーム・スペースウォー。それとは全く異なるアプローチで作られた、アタリのアーケードゲーム。そして、軍からの多額の出資を得て実現した、インターネット。

この中で語られていることの多くは、すでに別の書籍で知っていましたが、それでも読んでいてワクワクしました。そこには多くの人が登場しますが、彼らが協力し合ったり、反発したり、外向的な人もいれば、内向的な人も、情熱的な人もいます。そうした様々な人たちから、今のコンピュータやネットが生まれたのだと思うと、感慨深い気持ちになりました。
本邦新訳という言葉に惹かれて、アレクサンドル・デュマの「千霊一霊物語」を読み終えました。

物語の語り手であるデュマは、1831年9月1日にフォントネ=オ=ローズ市を訪れていました。そこでデュマは、とある事件に出会います。石切夫のジャックマンが、自分の女房を殺して捕まえてもらいに来たと、市長のところにやって来たのです。

彼が自首してきたのは、首を落として斬り殺したはずの女房が、「この人殺し!」と叫んだというのです。市長と警視、医師、そしてデュマも現場検証に立ち会うことになりました。そして確かに、ジャックマンの女房が首を切り落とされて死んでいるのを発見したのでした。

本当に殺された女房が叫んだのか、その真相はわからぬままデュマは、その晩は市長のルドリュの屋敷に滞在することになりました。そこに滞在していた他の客たちと事件のことを話し合ううちに、いつしかそれぞれが体験した不思議な物語について語り合うことになります。

そうしてルドリュ、ロベール医師、ルノワール士爵、ムール神父、謎の人物アリエット、グレゴリスカ夫人と、次々に不思議な物語が語られます。推理小説ではないので、それぞれの物語の不思議な出来事が解き明かされることはありませんが、著者の語り口の上手さもあって、物語の1つ1つが興味深くて面白かったです。

というわけで、久しぶりにデュマの作品を読みましたが、昔と同じように読み始めたら止められない面白さでした。(^^)
モーリス・ルブランの伝記を読んで、あらためてルパン・シリーズを読み返したくなりました。今回読んだのは、偕成社版です。児童書なので内容が簡略化されているのかと思ったら、完訳版でした!(^^)

第1巻には、「ルパン逮捕される」「獄中のアルセーヌ・ルパン」「ルパンの脱獄」「ふしぎな旅行者」「女王の首飾り」「ハートの7」「アンベール夫人の金庫」「黒真珠」「おそかりしシャーロック・ホームズ」の9作の短編が収録されています。

読み始めた最初は、漢字にふりがなが多いのが気になりましたが^^;、途中から内容の面白さに引き込まれました。1作ごとに異なるルパンの活躍が描かれていますが、最初の「ルパン逮捕される」と最後の「おそかりしシャーロック・ホームズ」に共通の登場人物がいて、物語が1つの流れとしてまとまる構成がいいなあと思いました。

偕成社のシリーズは、全25巻+別巻5冊の計30冊ありますので、この先を読み進めるのが楽しみです。
マリオ・バルガス=リョサさんの「密林の語り部」を読み終えました。

この作品は、フィレンツェにいる現在の著者とペルーに在住していた当時の著者、そしてインディオの神話のような物語の3つで構成されています。物語は、著者がフィレンツェで密林の語り部の写真を見つけたところから始まります。

ペルーに在住していた当時、著者にはサウル・スラータスというユダヤ人の友人がいました。彼は顔の半分に痣がありましたが、気さくで人当たりのよい人物でした。サウルは密林に暮らす人々の生活に強く惹かれていました。その当時から、密林の部族の言語や生活の研究。便利な道具や宗教の普及が進められていました。

しかし、サウルはそれは間違っていると主張します。彼らの世界は彼らの中で完成されたもので、外部からの干渉は彼らにとって害でしかないというのです。その後、著者はペルーを離れて、サウルとも疎遠になってしまいます。

その物語とはいっけん無関係そうに、インディオの神話らしいエピソードが語られていきます。どのように世界が創造されたと考えているのか、そして彼らが定住せず密林を放浪するように生活している理由などが、そこから読み取れます。

正直に言って、最初はこの神話のようなエピソードはあまり面白いと思えませんでした。しかし、そこにサウルらしき姿が現れてきた時、物語が1つにつながり面白くなってきました。そして、サウルが文明社会を捨てて、なぜ密林で語り部となったのかが次第に明らかになっていきます。

この本でのもう1つのお楽しみは、先に読んだ著者の「緑の家」に登場した人物のエピソードが、この本の中にも盛り込まれていることでした。

物語自体は淡々と進んでいきますが、読み終えた後に自分たちの価値観が絶対なものなのかという疑問、密林を放浪する部族とユダヤ人との連想、自然と共存した生き方など、さまざまなことを考えさせられる作品でした。
ジャック・ドゥルワールさんの「いやいやながらルパンを生み出した作家 モーリス・ルブラン伝」を読み終えました。

アルセーヌ・ルパンの生みの親として知られるモーリス・ルブランですが、その生涯は意外なくらいに知られていません。
詳細な調査に基づいて書き上げられたのが、この伝記です。

内容はその生い立ちから始まり、文学作家としてのデビュー、ルパンを書くことになった経緯、ルパンの大ヒット、文芸家協会での活躍、出版社や映画会社との契約を巡る問題、そしてその最期までです。

伝記には、ルブランの妹ジョルジェットについても数多く言及されています。ジョルジェットは、女優として活躍していて、「青い鳥」で有名なメーテルリンク(作中ではフランス語発音でメーテルランクと表記)と関係をもっていました。

そしてルブランは、同じ芸術家気質を持つ妹を、常に気遣っていました。最終的にジョルジェットは、女優時代に稼いだ財産も失い、貧困の中で亡くなります。そして、そんな妹を追いかけるように、その1ヶ月ほど後にルブランも亡くなりました。兄妹の深い絆を感じさせるエピソードですね。

この本を読み始めた最初は、ルブランの過ごした場所や出会った人々の詳細な描写が少し細かすぎるように感じましたが、途中から内容に引き込まれて、それは気にならなくなりました。

この本を読んだのをきっかけに、久しぶりにルパン・シリーズを読み返そうと思ったのですが、ポプラ社や偕成社から発売されている本の他は、シリーズ通しての翻訳本がないことを知って驚きました。シャーロック・ホームズは、各社から複数の翻訳が全集として発売されているのに、大人向けに翻訳されたルパン全集がないのは残念です。

また翻訳権の問題で、「813」と「続813」は新潮文庫から発売されている堀口大學の訳しか大人向け翻訳がないのも残念です。翻訳を独占するなら、ルパン・シリーズすべての作品をそろえて欲しいと思いますし、それができないのなら、潔く他社での翻訳を認める度量が欲しいですね。

ホームズと同じように、ルパン・シリーズも新しい訳者による、新しい翻訳で全シリーズを読みたいものですね。