日々の記録

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モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書 (NewsPicks Book)尾原和啓さんの「モチベーション革命」を読み終えました。最近体調が悪くて、読書がはかどらなかったので^^;、久しぶりに本を読み終えた感じです。

この本では、50,60代の世代と若い人たちの間では、仕事に対する価値観に大きな差があることを指摘しています。
年配の方達は、物がない時代を経験しているので、自分の周りに物がたくさんあったり、高級なものを持つことに価値を見いだします。しかし、若い人たちは物が十分足りている中で育ってきたので、物自身よりも自分にとっての価値を大切にしていると指摘しています。

それを踏まえて、これからの時代はロボットのように働く人ではなく、自分の好きを仕事に出来る人の時代だと著者は主張します。その背景としてロボットやAIの発達によって、これまで人間でなければできなかった仕事の領域が、ロボットやAIに置き換えられるようになっていることをあげています。

そんな時代にチャンスがあるのは、今までのようにがむしゃらに働くことに価値を見いだしてきた世代ではなく、自分の好きなことなら打ち込める世代だと書かれています。その上で、好きなことを仕事にするための方法として、異なる個性が集まったチームを作ることや、ネット上で可視化されて始めた信頼の重要性などについて解説されています。

この本を読んでいて、これが当たり前の世界になったらいいなあと思いました。私自身が社会人になってから、休日出勤や残業を美徳のように考える風潮や、本当は出たくないのに付き合いで参加する飲み会に辟易した経験があるからです。(^^;
陋巷に在り8―冥の巻―(新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第8巻を読み終えました。

子蓉(しよう)の蠱術から、妤(よ)を救おうとした医鶃(いげい)でしたが、子蓉の予想外の手強さに医鶃も自分の全てを賭けて戦う必要があることを悟りました。そして医鶃は、顔回の力と自らの信奉する神である祝融(しゅくゆう)の力を借りて、妤を救う決意をしました。その方法は、薬酒の力を使って一時的に顔回を仮死状態にして冥界に送り込んで、妤を救わせるというものでした。

こうして顔回は、生きた身でありながら九泉と呼ばれる冥界へと踏み込みました。そこは顔回の想像を絶した世界で、祝融の助けがなければ顔回といえどもなすすべがありません。そして九泉をくだった顔回は、ついに妤と子蓉とを見つけました。しかし、顔回は2人を連れ帰るつもりなのに、子蓉は連れて帰ることができるのは1人だけだと言います。

そして顔回と子蓉との、言葉での戦いが始まりました。子蓉の言葉に、そして子蓉が力を借りた神・女魃(じょばつ)の力で現れた偽の孔子に、顔回は翻弄されることになりました。顔回はその孔子が偽物だということまではわかるのですが、それ以上の行動に出ることができません。

そんな状況を打破したのは、顔回が意識を飛ばしてしまったことでした。九泉の力を受け入れた顔回は、偽孔子も驚く力を発揮して、その正体が女魃だということが明らかになりました。女魃は顔回に剣を向けますが、それから顔回を救ったのはそれまで成り行きを見守っていた祝融でした。

かくして戦いは、祝融と女魃という神同士の戦いに発展しそうになりました。しかし、祝融の本気を女魃が知ったことで、その戦いはなんとか回避することができました。しかしまだ、顔回が妤と子蓉を連れ戻せたわけではありません。顔回は本当に、2人を連れ帰ることができるのでしょうか。

けっこう苦労した8巻ですが、ようやく読み終えました。(^^;
前半の医鶃と子蓉の戦いは、かなりテンポ良く読み進められたのですが、顔回が九泉に向かったところから物語の進行が異常に遅くなって、読み進めるのにかなり気力が必要でした。このペースだと、次巻でも九泉から帰ってこられないんじゃないかと心配になります。(^^;
みんなの道徳解体新書 (ちくまプリマー新書)パオロ・マッツァリーノさんの「みんなの道徳解体新書」を読み終えました。

この本では、日本の道徳教育についてばっさりと切っています。著者の他の本でもそうですが、単なる思い込みや特殊な例が、全て同じだと考えてしまう危険性を指摘されています。

本の中では、道徳の教科書に採用された数々のお話がコンパクトに要約されて紹介されています。その事例をみていくと、ある特定の考え方や価値観を押しつけようとするのが「道徳」の授業だとはっきりしてきます。

どの章も面白いですが、特に印象的なのは、なぜ大人は「人を殺してはいけないのか」という質問に答えられないのかを説明した章が、一番面白く考えさせられました。

「人を殺してはいけない」と言う一方で、死刑制度が存在する矛盾。ここを読んだ時、人は意識的にしろ無意識にしろ、自分にとって都合の悪い人間には生きていて欲しくない=死んでもらいたいと考えてしまうものなんだと思いました。

この本を読んだおかげで、私自身が道徳の授業が大嫌いだったことを思い出しました。(^^;
子供の時には、その理由がうまく説明できませんでしたが、この本を読んで授業の裏に隠された偽善を感じ取っていたのだと気づきました。

また今でも忘れられない、道徳の授業の嫌な思い出があります。授業の中で、先生が自分の周りでみかけた悪いことを挙げなさいと言い出しました。私は特に悪いことを見かけた覚えがなかったので、「何もありません」と答えました。すると先生は、そんなはずはない何かあるはずだと怒り出しました。結局、適当に嘘をついて"悪いこと"をでっち上げることになりました。

今の私が、その時その場所にいたら、「周りに悪い人がいなくてよかったね」と言ってあげたいです。
真幻魔大戦〈1〉ビッグ・プロローグ (徳間文庫)平井和正さんの「真幻魔大戦」第1巻を読み終えました。

このところ同じ著者の「ボヘミアンガラス・ストリート」や「地球樹の女神」を再読してみたのですが、どうも今ひとつしっくりこなかったので、過去に一読だけした「真幻魔大戦」を読み返してみることにしました。

この「真幻魔大戦」は、角川文庫版「幻魔大戦」とは別次元の世界での出来事という設定です。角川版は1967年が舞台でしたが、こちらでは1979年が物語の舞台となり、物語の冒頭で登場するのはルナ姫ではなく、その妹であるリア姫になっています。

リア姫は故郷であるトランシルヴァニアから、アメリカへと向かうクェーサーの専用機にいました。彼女の姉であるルナ姫は、フロイと邂逅することもなく、アル中になって数年前に亡くなっていました。リア姫は、彼女の超常能力に興味を持ったクェーサーの帝王カトーに買われて、アメリカへと向かっていたのです。

順調な飛行が続く中、リア姫の体にルナ姫が憑依しました。そのルナ姫は、リアが知っているルナではありませんでした。彼女の知っているルナとは別のルナが、リアの体を借りて現れたのです。そしてリアは、別次元で起こったルナとフロイとの出会い。サイボーグ戦士ベガとの出会いを知ることになるのでした。

そしてリアは、この専用機を襲う危機を告げました。クェーサーにリアの世話役として派遣された謎の美女ムーンライトは、それを機長へと伝えます。そのおかげで専用機は惨劇を免れて、無事に目的地へと到着したのでした。

クェーサーの帝王カトーは、世界各地から優秀な超常能力者を集めていました。その中に、強力な催眠術を駆使するドクター・タイガーマンがいました。彼はその力を利用して、カトーに取り入ろうとしていました。しかし、彼にとって目障りな存在がムーンライトでした。ゲスな心の持ち主であるタイガーマンは、この事件を利用してムーンライトを失脚させようとしていたのでした。

リア姫の乗っていた専用機の機長は、突然の進路転換の理由をカトーに問いただされていました。しかしカトーに反感を持つ機長は、真実のすべてをカトーには伝えていませんでした。そこでカトーは、タイガーマンの力を利用して、その時に何が起きたのかを詳細に知ろうとしたのです。

すでにクェーサーを退職する決意を固めていた機長でしたが、タイガーマンの強力な催眠を受けて、自分の意思に反してカトーに知られたくないと考えたことまで話してしまいました。その一部始終を、霊体となって屋敷の中をさまよっていたリア姫が目撃しました。しかし、その場に同席したテレパシスト、ジョージ・ドナーによって、彼女がそこにいることが明らかにされてしまいました。それを知ったカトーは、のぞき見している者を何としても知ろうとするのでした。

過去に一読しただけなので、詳細は完全に忘れていました。(^^;
かって読んだ時は新書版でしたが、今回は文庫版を読みました。そのせいか、第1巻の内容としては、ここで終わり!?という少し不満の残るものでした。ルナ姫と比べると、リア姫は精神的に未熟で頼りない感じです。それを補うかのように登場したムーンライトは、神秘的な魅力が感じられますね。
陋巷に在り7―医の巻―(新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第7巻を読み終えました。

この巻では、妤(よ)にかけられた蠱術を破るために、南方の呪術に詳しい医鶃(いげい)が子蓉(しよう)と対決することになります。

苦心の末に費城を破壊は終わりましたが、孔子の目的はまだ達成されていません。孟孫氏に仕える公斂處父(こうれんしょほ)が、残された成城に陣取り、城の破壊をやめさせようとしていたのです。とはいえ、無理に力押しすれば、先の費城にこもって戦った公山不狃(こうざんふちゅう)との戦いの二の舞になってしまいます。

しかし、孔子はこの問題は何とかなると考えていました。この頃、魯の国は日照りに悩まされていました。そこで大がかりな雨乞いの儀式が行われる予定になっていました。その儀式には、公斂處父も参加しなければなりません。そのためには都まで出向く必要があるからです。仮に公斂處父が儀式を欠席すれば、それを理由に処断する口実ができます。

そんな孔子のところに、思わぬお客がやって来ました。なんと魯の都の騒ぎの原因である子蓉が、孔子の元を訪れたのです。子蓉は、顔儒の里に出向くのに、孔子の仲介が欲しいと言います。本来、別の土地から儒者がやって来た時は、その土地の儒者を表敬訪問することが礼儀だったようです。しかし、子蓉や少正卯(しょうせいぼう)たちは、顔儒の元を訪れていませんでした。(それを口実に顔儒の里を訪れた少正卯は、重傷を負うことになりましたが)

その頃、顔儒の里には南方から医術の達人である医鶃がやって来ていました。医鶃は、その眼力で実際に患者を目にする前から、その病を見抜くほどの力を持っていました。医鶃は本来は、妤のために招いたわけではなく、蠱を植え付けられた冉伯牛(ぜんはくぎゅう)を救うためでした。それが結果的に、妤のためにもなったのです。

医鶃はその力をもって、妤を操る子蓉の術と戦います。子蓉の力は、医鶃を驚かせるほどのものでした。結果的に、なんとか子蓉の仕掛けた罠を切り抜けることができましたが、一歩間違えれば死人が出ているところでした。
2人の最後の戦いは、蠱術が最高の力を得るといわれる満月の夜に行われます。強かな医の練達者である医鶃すらも時に出し抜いてみせた子蓉を退散させて、妤を救うことができるのでしょうか!?

今回は、医がお話の中心だったこともあり、全体的に重い雰囲気でした。この本を読んでいるだけで、こちらも子蓉の蠱術にからめとられているような気がしました。(^^;

しかし医鶃すらも驚嘆させる、子蓉の力は凄まじいですね。物語の主人公である顔回や孔子よりも、自由奔放にパワーをふるう子蓉が、この作品で一番魅力のあるキャラではないかと思いました。
失われた時を求めて(3)――花咲く乙女たちのかげにI (岩波文庫)2巻を読み終えてから、5年ほどが経過してしまいましたが^^;、ようやく「失われた時を求めて(3)――花咲く乙女たちのかげに I」を読み終えました。

2巻から時が経過して、主人公はパリで暮らしています。パリには、スワンとスワン夫人となったオデット、そしてその娘のジルベルトも暮らしています。"私"は、何とかジルベルトと親しくなり、スワン家に出入りできるようになりたいと思います。しかし、それはなかなかうまくいきません。

そんな物語と平行して、"私"が見たお芝居や文学、パリの社交界の様子などが描かれていきます。そして念願かなって、ついに"私"は、ジルベルトのおやつの時間に招かれることができました。"私"はジルベルトに惹かれながら、もう1つの興味の対象であったスワン家の様子を詳しく知ることになります。またスワン家を訪れたことによって、"私"は心酔していた作家のベルゴットとも知り合うことができました。

"私"とジルベルトの関係は、悪いものではありませんでした。ところが、ジルベルトの不機嫌に、"私"も不機嫌で応じてしまったことから、2人は仲違いしてしまうのでした。"私"は本心では、ジルベルトのことが好きでたまらないのに、あえて彼女から距離を置きます。

それが原因で、2人の関係はますます疎遠になってしまうのでした。しかし、ジルベルトの母であるオデットと"私"の関係は続いているという、ちょっと不思議な状態が生まれます。

そしてある日、"私"はジルベルトが別の男の子と連れだって歩いているのを目撃してしまうのでした。それが引き金になって、"私"の初恋はあっけなく終わりを迎えます。

基本的な物語としてはシンプルですが、"私"の心の動きや見たものからの連想が広がっていくのが凄いです。
とはいえ、それが物語の読みづらさにもつながっていて^^;、"私"の思考が連続しているため、あまり改行もなく、ほぼ区切れることなく物語が続いていきます。1冊を一気に読めればいいのですが、普通は読者はどこかで一区切り入れたくなります。しかし作品自体に区切りが設定されていないので、それがとても難しかったです。

結局、この5年の間に何度か手にとって読み始めたものの、途中で挫折するを繰り返していました。今回ようやく読み切ることができたのは、自分で内容的に区切りがついたと思ったら、そこでいったん読むのを停止することにしたからでした。

しかし、それだけの苦労をしても、読み終えることができてよかったと思いました。1800年代終わりのパリの社交界の描写も興味深かったですし、芸術に対する著者の博識さや考え方に驚かされました。
覇者の戦塵1943 ダンピール海峡航空戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第13作、「覇者の戦塵 ダンピール海峡航空戦(下)」を読み終えました。

転章では、久しぶりに日下部が登場しました。彼は独自に、戦争を終わらせるために道を探っています。しかし、それには現政権の首相である東條内閣を新たな内閣へと交代させる必要があります。和平への道を進むためには、想像以上の困難を克服しなければならないようです。

その頃、ブナに進出した陣内少佐は、ブナから近いオロ湾に米軍が上陸したらしいことを知りました。少数の部下と共に偵察に向かった陣内少佐は、そこで米豪軍が原住民を協力を得て、積極的な作戦を進めようとしていることを知りました。倒した敵の士官が持っていた写真から、ブナへの攻撃が予想以上に早く行われることを知ったのです。

それに対抗する兵力を確保するために、陣内少佐はラバウルへと飛びました。そこで海兵隊の戦力も合わせて、多数の戦力をブナへと送り届けようとします。しかし、予想に反して陣内少佐の計画は、なぜか順調に進みます。その理由は、なんと陣内少佐らの派遣しようとする輸送艦を囮にして、敵に逆襲しようとする作戦が進められていたからでした。

秋津中佐と会って、それを知った陣内少佐でしたが、現実的に兵力を前線に送り届けるには、この作戦を利用するしかありません。陣内少佐が腹をくくった間に、さらに戦況は変化しました。なんと陣内少佐の留守の間に、ブナの飛行場が海上の重巡から艦砲射撃を受けていたのです。これがきっかけとなり、作戦の内容が変更されました。

陣内少佐らが輸送艦で移送を開始するのは同じですが、当初とは違い大規模な艦隊が編成されて輸送艦の護衛にあたることになったのです。その一方で、ブナに進出している部隊との連携も図られて、ポートモレスビーから輸送艦を狙って出撃する攻撃機を邀撃する作戦も実行されることになりました。

この戦いは、予想外の日本軍の勝利となりました。ブナの航空部隊や輸送船団の護衛部隊が、敵の攻撃部隊に大きな打撃を与えたのです。とはいえ、日本軍も無傷とはいきません。積極的に泊地攻撃を仕掛けた日本艦隊が、別の敵艦隊に待ち伏せされて大きな被害を出したのです。

しかし、これまで一方的に押されていたニューギニア戦線の日本軍は、今回の作戦の成功で、これからの戦いの橋頭堡を築くことに成功しました。とはいえ、陸海軍間の連携のまずさや、個々の技倆に頼るのではなく総合力で戦う方法の確立など、これからの課題も数多くあります。そして最大の課題は、どうやって戦争を終結させるかです。
それが実現するまでには、まだ多くの時間を必要としそうですね。
ダンピール海峡航空戦〈上〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第13作、「覇者の戦塵 ダンピール海峡航空戦(上)」を読み終えました。

東太平洋での戦いが進められている間に、陸軍を中心にポートモレスビー攻略を目指した戦いが強行されました。その結果、制空権を完全に米豪に奪われ、前線への補給も滞り、前線部隊は壊滅的な状況にありました。前線を視察した秋津中佐は、その悲惨な状況に驚きました。そして秋津中佐は、陣内少佐と共に機械化された設置部隊を前線に送り込み、壊滅的な状況にある現地の航空部隊の立て直しを計ります。

ところが、軍の上層部は中部ソロモン方面に、無謀ともいえる上陸作戦を決行しようとしていました。そのために、秋津中佐らは、計画に要となる輸送艦の手配に苦心することになるのでした。そんな無謀な計画を推進しているのは、例によって各務大佐でした。(^^;

それでも何とか、秋津中佐たちは輸送艦と護衛艦を確保して、計画を実行することができました。皮肉にも、軍の主力が中部ソロモン方面に向かったことで、秋津中佐の計画する方面への警戒が手薄になったのです。それでも何度か敵の襲撃を受けましたが、何とかそれを切り抜けてブナに機械化された重機部隊を送り届けることができたのでした。

一方、中部ソロモン方面に侵攻した部隊は、敵の強力な攻撃を受けて輸送部隊の大部分を失う被害を出していました。そのために、部隊は侵攻を断念せざるをえませんでした。しかし、計画を中止したことで、貴重な兵力を失うという最悪の事態だけは免れることができました。

ブナに進出した陣内少佐は、すぐさま飛行場の設置にかかります。それを察知した敵は、連日爆撃を繰り返しますが、それに反撃できる戦力がありません。巧みな偽装で、敵の目を攪乱することで被害を最小限にとどめていますが、いつまでもそれを続けることはできません。

そこへ、陸軍の飛燕部隊が派遣されることになりました。海軍航空隊と違い、陸軍航空隊は海上の航法に不安はありましたが、なんとか6機の飛燕を1機も失うことなく、前線へと送り込むことができました。これが戦局を動かす転換点になればいいのですが・・・。

というわけで、今回は悲惨な状況にある南方戦線の様子が語られました。現実の歴史では、物語以上に前線の状況は悲惨だったようです。補給を無視し、旧来の方法に捕らわれて新しい技術を導入することもせず、上層部の失策が断罪されることもなく。これでは前線の兵士たちは、本当に浮かばれないと思いました。
陋巷に在り (6) (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第6巻を読み終えました。

この巻では、ようやく顔回と孔子が動きました。子蓉(しよう)に操られた妤(よ)は、魯の都の雑人溜りから発生した暴動を楽しんでいます。妤の移動に合わせるかのように、騒乱の発生する場所も移動していきます。そこについに、顔回が現れました。顔回の前に立ちふさがったのは、守り人という使命すら忘れた五六でした。

そんな五六を、顔回はいきなり殴りつけました。普通の状態なら、体術に優れた五六が顔回の攻撃を受けることはあり得ません。しかし今の五六は、妤を通じて子蓉の媚術に落ちています。そんな状態だからこそ、顔回の打撃をかわすことができなかったのでした。

顔回に殴りつけられて、五六はようやく正気に戻りました。そして顔回は、ついに妤と対面しました。わずかの間に、妤の姿は変わり果てていました。子蓉の蠱術に落ちたことで、妤の生気は急激に使い尽くされていたのです。顔回はそんな妤を通して、再び子蓉と対決することになりました。

しかし妤を通しての戦いでは、子蓉に勝ち目はありませんでした。子蓉自身、そんな攻撃で顔回が倒せるとは思っていませんでした。しかし、妤が顔回の命を奪おうとした時、顔回はその攻撃を避けようとしませんでした。その一撃は、五六によって防がれましたが、顔回は妤によってなら命を落とすこともやむを得ないという覚悟がありました。それがさらに、子蓉を腹立たしくさせるのでした。

こうして顔回は、妤を救い出しました。しかし妤は消耗が激しく、このままでは死を免れません。そこで顔回は、妤を顔儒の里へと運ぶことにしました。ところが、その途中で顔回は異変を感じました。顔回は妤を五六に託して、自分は魯の都に残って何かをすべきだと感じたのでした。

その頃、費城の公山不狃(こうざんふちゅう)の元には、大きな革袋が送られてきました。戦いに先立ち、魯が何かを企んでいるようです。袋の中に人がいるのを察知した不狃は、外から袋を串刺しにさせました。その中にいたのは、魯の都で暮らしていたはずの不狃の年老いた両親だったのでした。

それを知った時、不狃は激しい怒りに取り憑かれました。それまで不狃は、費城から積極的に戦いに出ることなく、堅く守りを固めるつもりでした。しかし悪悦の仕掛けた悪辣な呪詛に、不狃は完全に陥ったのでした。そして不狃は、方針を変更して、徹底的に城から攻勢に出ました。その一方で、別働隊として叔孫輒(しゅくそんちょう)を裏道から魯の都へと向かわせます。

これに対する子路は、徹底した積極策で費の意表を突こうとします。当初の予定通り、不狃が守りをかためていれば、子路の無茶な作戦も効果を上げたかもしれません。しかし、不狃が城から出て戦ったことで、子路に率いられた魯軍は行動の自由を制限されて、不狃に攻め込まれることになったのでした。

不狃に率いられた部隊は、鬼神のような戦いぶりで魯軍を圧倒しました。そしてなんと、不狃の部隊は敵の部隊を強引にくぐり抜けて、魯の都へと迫ったのでした。子路に率いられた部隊の中では、子服の部隊のみが叔孫輒の別働隊に気づいていました。彼らは叔孫輒の部隊を追いますが、先行する部隊に追いつくことができません。

そして多くの兵を派遣して、警備が手薄になった魯の都が新たな戦場となりました。先に都に到着した叔孫輒の部隊は、貴族の屋敷が集まる一角を襲い、掠奪に走ります。それに遅れて、別方向から不狃の部隊も到着しました。不狃の部隊は疲労困憊しているはずなのに、鬼神に取り憑かれているためか疲れを知らない戦いぶりをみせました。

魯の都が攻め込まれることを察知した孔子は、定公や孟孫・叔孫・季孫と共に季孫の屋敷へと避難します。それを執拗に不狃が追い詰めます。そんな不狃に、孔子は自ら武器を手に立ち向かいました。そして孔子の放った矢によって、不狃にかけられていた呪術がとけました。それと共に、不狃とその兵を駆り立ててきた、異常な力は失われたのでした。

そこへ、ようやく軍を立て直した子路が到着しました。包囲殲滅されることを恐れた不狃は、叔孫輒と共に裏道を使って費に逃げ延びようとします。ところが、そのルートは子服の部隊が向かっています。費への道を絶たれた不狃と叔孫輒は、わずかな手勢だけを引き連れて、隣国の斉への落ち延びたのでした。

戦いの成り行きを見ていた悪悦は、再び顔回の姿を目にしました。しかし、顔回に気をそらされて、2人の間に戦いは起きませんでした。そして悪悦は、少正卯(しょうせいぼう)の屋敷へと帰ってきました。費兵の侵攻によって、少正卯の屋敷も襲われていました。もちろん悪悦は、それも承知の上でした。混乱の中で少正卯が命を落とせば、悪悦がその代わりを務めることができます。

しかし悪悦の目論見は、子蓉の想像を超えた力に阻まれました。なんと少正卯の屋敷を襲撃した者たちは、子蓉の手で惨殺されていたのです。子蓉の力は、今や悪悦をはるかにしのいでいるようです。しかし、悪悦はその事実を認められずにいます。

というわけで、この巻は前半の顔回と妤、五六の戦い。後半は鬼神のごとき不狃の戦いと、それに応じる孔子の戦いと読み応えがありました。とはいえ、顔回も孔子も自ら積極的に動いたのではなく、基本的に受け身だったのがじれったかったです。(^^;
激闘東太平洋海戦〈4〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(4)」を読み終えました。

ミッドウェイから発進した、5機の機種のバラバラな偵察機は、それぞれの索敵線に沿ってアメリカ軍の機動部隊を探しています。その中の二式陸上偵察機が、ついにヨークタウン型の空母を発見しました。しかし後方には、さらに別の空母機動部隊が存在する可能性があります。

その間も、ミッドウェイでの日米の激闘は続いていました。これ以上の部隊の上陸を阻止したい日本軍でしたが、制空権を奪われ、砲撃陣地を次々に破壊されて、有効な対抗手段がありません。それに対して、米軍はシャーマン中戦車をさらに揚陸して戦力を増強しています。

さらに敵機動部隊の所在がつかめず、ミッドウェイ方面に向かった第三艦隊司令部は方針を決めかねていました。状況を打破するために、索敵機を発進させようとしたところに、さらなる情報が届きます。司令部の予測してない地点に、空母2隻をともなう米艦隊が存在するというのです。

ミッドウェイの日本軍は、増援されたシャーマン中戦車に苦戦しています。そんな中、索敵に向かった偵察機がミッドウェイへと帰還してきました。しかし、着陸する滑走路が戦場となっている上、上空には米軍機の姿もあり、着陸は困難を極めます。帰還機に犠牲が出る中、日本軍は高角砲を対戦車砲に転用して、迫り来るシャーマン中戦車に応戦します。これが予想外の戦果を上げて、米軍は一時的に撤退していきます。

その夜、蓮見大佐は思いきった夜襲作戦を実行しました。ミッドウェイに残された攻撃機を使って、輸送船団を攻撃しようというのです。例によって無茶な^^;蓮見大佐の作戦ですが、ミッドウェイ近海に潜んでいた蛟龍も戦いに加わり、空母と駆逐艦を撃沈する戦果を上げたのでした。

その頃、第三艦隊の索敵機は、米軍の機動部隊を補足していました。続いて到着した攻撃部隊が、次々と空母を狙って攻撃を仕掛けます。しかし敵の対空防御は強力で、攻撃部隊は攻撃ポイントに入る前に数を半減させてしまいました。それでも続く第2波による攻撃で、何発かの打撃を空母に与えました。しかし米空母の防御力は高く、この程度の打撃では早急に修理を行い、すぐに戦線に復帰してきそうです。

さらなる決定的な打撃を与えるために、第三艦隊は第三波の攻撃を実行することになりました。しかし、日没が近づくこの時間帯の攻撃は、攻撃機の帰還が困難になるという不安要素もあります。それでも第三波の攻撃によって、日本軍はついに空母を撃沈しました。

しかし、日本軍の受けた打撃も小さなものではありませんでした。攻撃を受けた空母から発艦した攻撃部隊の襲撃を受けて、旗艦空母の加賀が失われたのです。結果的に今回の戦いで、日本軍は空母1隻、アメリカ軍は3隻の空母を失うことになりました。戦果だけ見れば、日本軍の圧勝ですが、工業力の差を考えれば、貴重な空母を失った日本軍の影響も小さなものではありません。

そしてこの戦いの後、ついに日本軍はミッドウェイから撤退することになりました。日本軍の撤退ぶりは、徹底的なもので、破壊された米軍機や海底に設置された通信用ケーブルにまで及びました。そして最後に魚住上飛曹が言った一言が、この戦いのすべてを語っていると思いました。「撤収するくらいなら、最初から上陸などしなければよかったのに」。

というわけで、4巻に渡って続いた激闘もついに終了です。この戦いでは、電探がますます重要な役割を果たすようになりました。米軍では、電探と連動した射撃管制システムも当たり前のものになりつつあります。さらに米軍は、電探の妨害装置の開発にも成功しています。日米の開発力・工業力の差が、これからの戦いに大きく影響してきそうですね。
陋巷に在り〈5〉妨の巻 (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第5巻を読み終えました。

前巻で子蓉(しよう)の蠱術に陥った妤(よ)でしたが、そんな妤を救おうとするうちに五六も子蓉の術に陥ります。妤と違い、五六は媚術に対する心得もあったのですが、妤への恋心と師匠である顔穆を失った隙を突かれて、いつの間にか媚術に取り込まれていました。

この術の怖さは、かかっている本人は自分の意思で行動していると思っていることですね。周囲から見たら異様な行動も、本人にとっては必然だと知らず知らず思わされてしまう。本当に恐ろしい術ですね。

一方、孔子が進める三桓家の3つの城を破壊する謀略にも支障が生じていました。公山不狃(こうざんふちゅう)の希望を受け入れて、費の前に郈城(こうじょう)が破壊されました。ところが、次は費城となったところで、公山不狃が孔子に不信感を持ったのです。

その原因は、悪悦にありました。孔子と公山不狃の連絡役を務める公伯寮は、悪悦の術にかかって役を果たしていませんでした。それどころか、悪悦の策略によって、孔子が公山不狃に無茶な要求をしたように装われていたのです。こうして孔子の知らないところで、孔子と公山不狃の関係はどんどん悪化していたのでした。

しかし、そんな悪悦の行動は、少正卯(しょうせいぼう)の意図するところではありませんでした。しかし、顔儒との戦いで重傷を負った少正卯には、悪悦を止める力はありません。子蓉に翻弄されながら、少正卯はただ歯がみするしかありませんでした。

その間にも、費城の破壊に向けて魯の都からは、費に向けて多数の兵士が派遣されようとしていました。費に大勢の兵士が赴くために、都の警備は手薄な状況になっていました。そんな中、孔子の部下である申句須(しんくしゅ)と楽頎(がくき)は、都の警備を任されていました。

都を見回っていた2人は、雑人溜りと呼ばれる旅芸人や巫祝のたまり場に、不穏な様子があることを知りました。それを裏で操っているのは、なんと妤でした。妤は子蓉の蠱術に完全に取り込まれて、いつの間にか雑人溜りの首領のような立場になっていたのです。そんな妤に協力するのは、妤を通して子蓉の術に絡め取られた五六です。

いよいよ費城に軍勢が向かう中、悪悦は公山不狃の元を訪れていました。悪悦は自らの策略に、公山不狃たちが踊るのを楽しんでいました。そして悪悦は、思い切った策略を公山不狃に話しました。このまま費城に籠城するのではなく、間道を通って魯の都に攻め込むべきだと訴えたのです。

ところが、悪悦の話術に不審を抱き始めた公山不狃は、悪悦の思い通りには踊りませんでした。陽虎の一件もあって、今では費城に立てこもることになった公山不狃でしたが、魯の国に対する忠誠心は失われていなかったのです。自らの術が破れたと知った悪悦は、これまでの態度を豹変させて冷酷な態度を取りました。子蓉と比べると、このあたりが悪悦が詰めが甘いというか、小者な感じですね。(^^;

というわけで、今回は顔回の出番はほぼなく、悪悦の陰謀と子蓉の媚術が状況を思わぬ方向に動かしていきました。
それに対して何も手を打てない孔子や、相変わらずぼ〜っとした生活を続けている顔回が歯がゆいですね。
覇者の戦塵1943 激闘 東太平洋海戦3 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(3)」を読み終えました。

この巻では、ついにミッドウェイに上陸したアメリカ軍と、それを阻止しようとする日本軍が激突します。
日本軍の予想に反して、アメリカ軍はミッドウェイ環礁の南ではなく、北から侵攻を開始しました。アメリカ軍は、水陸両用車両まで投入してきました。それを迎え撃つ日本軍の思わぬ力となったのは、前巻でミッドウェイにたどり着いた、傷だらけの駆逐艦・天霧でした。

先の戦いで少なくないダメージを受けていた天霧でしたが、その砲塔はまだ一部が使えました。その砲撃が、アメリカ軍の上陸部隊を足止めする役に立ちました。しかし、そんな天霧は散発的に訪れる米軍の爆撃機の攻撃を受けて、さらにダメージを受けてしまいました。それでも天霧の橘川艦長は、最後まで戦い抜く姿勢です。

天霧の砲撃を誘導するために、陸上部隊として天霧から樟葉大尉らがミッドウェイ司令部に派遣されました。しかし司令部は混乱状態で、樟葉大尉らは足手まとい扱いでした。そんな大尉たちを活かしたのは、海兵隊でした。そして気がつけば、海兵隊の蓮見大佐を中心に、海兵隊・海軍・陸軍を混成した集団が出来上がっていました。蓮見大佐のやり方を知らない部隊は、その指揮ぶりに驚きますが、現実にそれが成果を上げるのを見て納得するのでした。

そして日本軍は、一時的にアメリカ軍の攻勢を押し返して、索敵のためにキ74特号機を発進させることに成功しました。さらに今回は活躍の機会がありませんでしたが、かって真珠湾で活躍した潜水艇・蛟龍に乗った酒巻中尉と稲垣軍曹のコンビ+3人の下士官も海中に潜んでいます。

さらにミッドウェイを狙う米機動部隊を目標に、第三艦隊が動いています。圧倒的な物量を投入して日本軍を駆逐しようとするアメリカ軍に、日本軍はどれだけ対抗することができるのでしょうか。

というわけで、今回はミッドウェイの日本軍の苦闘が描かれました。制空権と制海権をアメリカに握られて、ミッドウェイを守備する日本軍は絶望的な状況です。この戦いがどんな形で決着するのか、次巻が楽しみです!
激闘 東太平洋海戦〈2〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(2)」を読み終えました。

ついにアメリカ軍による、ミッドウェイ奪還作戦が始まりました。ミッドウェイに進出していた部隊は、大編隊で押し寄せる部隊の物量に物を言わせた攻撃にさらされることになりました。そして日に日に、迎撃できる機体は失われ、連日の爆撃で滑走路は補修と破壊を繰り返しています。

その頃、本土で姫川大佐を通じて、秋津中佐は岡田元首相の側近・迫水久常と顔を合わせていました。ミッドウェイの部隊を、秋津中佐は自らの及ぶ範囲で助力していました。上層部は既に、ミッドウェイからの撤退を視野に入れていましたが、秋津中佐は前線で戦う兵士たちを見殺しにすることはできないと考えていたのです。

迫水は、現政権ではこの戦争を終わらせる力はないと見ていました。それ故、早期に現政権から新たな、戦争を終結させられる政権を樹立することが必要だと考えていました。秋津中佐の行動は、それが本人が意図したことではないにせよ、現政権の維持につながると迫水は見たのです。その事実に直面して、秋津中佐は自分が軍事軍略だけでなく、政治の世界に足を踏み入れているのだと悟ったのでした。

ミッドウェイでは、海兵隊や陸軍航空隊の部隊が、残された戦力を使って奮戦していました。しかし、アメリカ軍との戦力差が大きすぎて、出撃するたびに消耗を強いられる苦しい戦いが続いています。そんな中、敵中へと進出した魚住上飛曹は、アメリカ軍の大規模な艦隊群を発見しました。そこに空母の姿はありませんでしたが、戦艦や重巡などの大規模部隊がありました。

その部隊は、ミッドウェイを砲撃するために移動しているようです。単機の攻撃では、その部隊に大きな打撃を与えることはできませんが、魚住上飛曹はサウスダコタ級戦艦への攻撃を敢行しました。その攻撃は戦艦に少なからぬダメージを与えたようですが、その戦果を確認することまではできませんでした。

その頃、ミッドウェイ近海には、日本軍の特務駆逐艦が進出していました。その艦隊は、わずか4隻の部隊でしたが、雷撃戦に特化した戦闘力を持っていました。夜の闇の中、その部隊はミッドウェイを砲撃しようとするアメリカ艦隊を発見しました。その攻撃が、アメリカ軍に予想外の動揺を与えることになりました。

アメリカ軍は、この海域には日本軍の艦隊はいないと読んでいました。しかし、駆逐艦からの思わぬ攻撃を受けて、確認されていない艦隊がいるのではないかと思い込んだのです。それが、予定されていたミッドウェイへの砲撃、未知の艦隊探索のための艦載機の分散を生みました。そのおかげで、ミッドウェイの日本軍はようやく一息つくことができたのでした。

そんなミッドウェイに、一機の水偵が到着しました。それはアメリカ軍の陽動によって、ギルバート諸島方面に向かったと思われた第三艦隊からの連絡機でした。そこには、通信参謀の野上少佐の姿がありました。野上少佐は、これから行われる第三艦隊のアメリカ軍機動部隊との戦いに備えて、航空部隊の待避先としてミッドウェイの滑走路を確保する必要性を知らせに来たのです。

司令部の参謀は、それを安易に受け入れますが、野上少佐はその安請け合いに不安を感じます。しかし、予備士官の沖津予備中尉と話をしたことで、大きな収穫を得ることができました。沖津予備中尉は、司令部よりも的確にアメリカ軍の動きを見抜いていたのです。

アメリカ艦隊に思わぬ打撃を与えた駆逐艦隊は、無傷ではいられませんでした。傷ついた艦艇をなんとかミッドウェイまで運ぼうと奮戦していました。途中、何度か敵の航空部隊に発見されましたが、運と海兵隊航空部隊に守られて、なんとかミッドウェイまでたどり着きました。

そこで蓮見大佐は、思い切った作戦を実行しました。傷ついた艦艇をミッドウェイの狭水道に沈めて、アメリカ軍の上陸部隊を足止めするための砲台として利用したのです。使えるものは何でも使う。蓮見マジックの炸裂ですね!(^^;
陋巷に在り〈4〉徒の巻 (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第4巻を読み終えました。今回は顔回は脇に回り、妤(よ)と五六、少正卯(しょうせいぼう)が顔儒の本拠地へと乗り込むお話でした。

前巻で、あれだけの死闘を繰り広げながら、子蓉(しよう)は陋巷にある顔回の家を訪れていました。しかし、あいにく顔回は留守で、顔回の父・顔路が子蓉の相手をすることになりました。下品でとぼけた感じの顔路には、さすがの子蓉も気をそらされて媚術を活かすことができません。

そこへ妤が顔を出しました。妤と対面した子蓉は、顔回を守る力を与えたのはこの娘だと気づきました。妤は単に子蓉の美しさに圧倒されていただけでしたが、そんな妤に子蓉は小さな鏡を与えました。その鏡には、恐るべき蠱術が仕込まれていたのですが、妤はその恐ろしさに気づきません。

妤の異変に気づいたのは、顔穆を失い自らの道に迷う五六でした。五六が妤を見つけたのは、各地からの旅人が集まる陋巷よりもいかがわしい場所でした。そこで妤は、男を誘惑するようなことをしていたのです。五六に救われた妤は、ときどき意識がなくなって知らないうちに出歩くことがあると話しました。それを知った五六は、妤を守ることにしたのでした。

しかし、子蓉の蠱術に操られた妤は、何度も五六の目をかいくぐってみせました。鏡のことは誰にも言ってはいけないと釘を刺された妤は、それを五六にも教えなかったのです。そんな妤のガードに、五六は苦心することになるのでした。

その頃、孔子はかねてからの謀略である、三桓家の3つの城を破壊する計略を実行しようとしていました。事前に季桓氏を動かしていたにも関わらず、3つの城の破壊が議題にあがると議論は紛糾しました。子服景伯の頑強な抵抗に、季桓氏も最初の勢いを失ってしまいました。孔子の謀略が敗れたかと思った時、それを後押しする行動に出たのは、なんと少正卯でした。孔子はそれは危険な道だと知りつつ、自らの謀略をすすめるために少正卯の協力を利用したのでした。

こうして3つの城の破壊が決定しました。しかし、いまだに費城を占拠している公山不狃(こうざんふちゅう)は、簡単にはその決定に同意できません。公山不狃の元を訪れた公伯寮は、先に他の城を破壊した上でなければ受け入れられないと、不狃は断固として譲りません。そんな公山不狃を動かしたのは、公伯寮に同行してきた少正卯の手下・悪悦でした。悪悦は、間違いなく他の城が先に壊されると断言しました。事前にそんな話は聞かされていなかった公伯寮は慌てますが、それを聞いてようやく公山不狃も納得したのでした。

そして悪悦の言葉通り、叔孫武叔(しゅくそんぶしゅく)の城である郈城(こうじょう)の破壊が開始されました。その先頭に立つのは、城の持ち主である武叔です。武叔は少正卯の術に操られて、自らの手で城を壊さずにはいられない精神状態に追い込まれていたのです。その日は雨が降っていましたが、武叔は全くかまわず破壊を強行するのでした。

その頃、少正卯は大胆不敵にも、顔儒の里である尼丘山を訪れていました。そこで少正卯は、太長老から秘礼とされる封の礼を得ようとしていたのです。封の礼とは、天子のみが行うことのできる礼であり、周の時代に行われたのを最後に、誰にも行われていません。それを顔儒が受け継いでいると、少正卯はみていたのです。

もちろん、太長老はそれを本当に知っていても知らなくても、それを少正卯に教える気はありません。あっさりと太長老の前から引き下がった少正卯に、顔儒が放った戦闘犬が襲いかかります。犬が相手では、少正卯は得意の言葉による術を使うことが出来ません。少正卯と犬たちとの戦いは、凄惨なものとなりました。急所は守ったものの、少正卯はこの戦いで大きな傷を負いました。しかし、常人ならば絶対に不可能な戦闘犬との戦いから、なんとか少正卯は生き延びたのです。

というわけで、今回は妤と子蓉の顔合わせと、子蓉が妤に仕掛けた恐るべき蠱術。妤と五六の思わぬつながり。少正卯が孔子に手を貸したことで、ついに実行される城の破壊。そして顔儒の里を訪れた少正卯の死闘と、読み応えのある内容でした。
平井和正さんの「地球樹の女神 Part 1」を再読しました。

「ボヘミアンガラス・ストリート」に今ひとつのめり込めなくて、平井和正さんの別作品に手を出すことにしました。
迷った末に選んだのは、「地球樹の女神」です。「ボヘミアンガラス・ストリート」以降の平井作品は、途中で挫折してばかりですが、この「地球樹の女神」は最後まで読み通しました。

主人公は、IQ400の天才少女・後藤由紀子と、桁外れの問題児・四騎忍です。
三星客船が建造した豪華客船サンライズ号が、海上で行方を絶ちました。懸命な捜索活動にも関わらず、サンライズ号がどうなったのか、その手がかりは全くありません。しかし後藤由紀子は、サンライズ号がどこにいるのか、独自の発明品を使って探知していたのでした。

そんな後藤由紀子を狙う謎の集団。そして後藤由紀子と四騎忍の周囲には、知性を持った観葉植物フィロデンドロン教授や、高校生ながら魔神のごとき柔道の達人である兄の机、妖しい魅力で周囲を翻弄する女教師・御子神真名、ごろつき新聞記者の荒気衛、学ランを着た美少女・禅鬼修羅など、一癖も二癖もある登場人物揃いです。

作品の元となったアイディアが、著者が中学生時代に書いた小説ということもあってか、作品全体にどこか中二病的な雰囲気がただよっています。(^^;
ラスト・ハルマゲドン・ストーリーという宣伝文句にひかれて初めて読んだ時は、真面目な作品なのかと思いましたが、突き抜けた設定や、ひたすら続く登場人物同士の掛け合いを読むと、コメディ作品なんじゃないかと思えます。(^^;

生徒会長として鏡明さんの名前も登場しますし、感覚的には著者の「超革命的中学生集団」+ハルマゲドンという、はちゃはちゃSF路線の作品だったのかなあ。

作品の内容自体は、それなりに(古さを感じながらも)面白かったですが、最初は角川書店から刊行された本作が、どうして徳間書店から続きを刊行することになったのか、その原因である文章の改ざんについての愚痴が巻末に延々と書かれているのにはげんなりしました。

改ざんが著者にとって大問題だということは理解しますが、それは著者と出版社の問題であり、読者としては作品の面白さがすべてであり、どうでもいい話です。
激闘 東太平洋海戦〈1〉―覇者の戦塵1943 (C・NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第12作、「覇者の戦塵 激闘 東太平洋海戦(1)」を読み終えました。

今作の舞台は、再び東太平洋です。哨戒中の伊一六八潜水艦が、アメリカ軍の機動部隊らしき動きをつかんだところから物語は始まります。開戦初期の日本軍の攻撃で、アメリカの太平洋艦隊は大きな打撃を受けましたが、ついに反撃に出ようとしています。

伊一六八潜はその後も敵の動きを探りますが、米機動部隊の動きがなかなか読めません。苦闘の末に、ようやく空母らしき船影を捕らえた伊一六八潜は、その船に魚雷攻撃を仕掛けるのでした。

その頃、陸軍の試作偵察爆撃機・キ74特号機と共に、宮下大尉、坂田中尉、江住技師がミッドウェイに向かっていました。彼らは陸海軍+海兵隊の合同作戦に協力するために、はるばる満州からミッドウェイまで進出してきたのでした。キ74特号は、1万メートルを超える高高度での行動が可能な機体でした。とはいえ、今の段階ではまだ試作機であり、今回はその問題点を発見することも目的の1つです。

ミッドウェイには、同じ陸軍から三八戦隊の屠龍も進出してきていました。しかし屠龍を操る加納中尉と武嶋軍曹は、混乱する指揮系統に振り回されることになりました。海軍と海兵隊の確執が、戦闘指揮を混乱させていたのです。業を煮やした加納中尉は、海兵隊司令官の蓮見大佐と出会いました。それで加納中尉は、ようやく事情を察したのでした。

その頃、トラック環礁にある日本軍の第三艦隊は、決断を迫られていました。米軍の機動部隊が動き出したことを知った第三艦隊は、ミッドウェイ方面とギルバート諸島方面の2つの侵攻ルートを想定しました。しかし、どちらに向かうべきかを決める決定的な情報が入手できないのです。

第三艦隊の司令長官である南雲中将は、通信参謀である野上少佐を密かに呼び出しました。南雲中将は、日本軍の暗号が米軍に解読されている可能性を問いました。以前はその可能性はないと断言した野上少佐でしたが、今回はその可能性はあると答えます。それを聞いた南雲中将は、第三艦隊の無線を封止して艦隊をミッドウェイに向けたのでした。

ミッドウェイは連日、米軍機の爆撃を受けながらも迎撃作戦を継続していました。戦いの中、撃墜した米軍機から回収された装置を、江住技師は調べることになりました。それは電波源を探知して、爆撃を誘導するための装置でした。どうやら米軍は、本格的な戦いの前に日本軍の電探施設を徹底的に破壊しようとしているようです。

一方、日本軍もこの激戦に合わせて、新たな新兵器を投入していました。多知川少佐を中心に開発が進められていた、射撃管制用の電探が戦場に導入されていたのです。持ち込まれた試作品は限られていましたが、それでもその試作品を使った攻撃は、これまでの戦いではあり得ないほどの戦果を上げていました。

そして、いよいよ東太平洋を舞台に、日米の激しい戦いが再び始まろうとしています。その戦いで大きな意味を持ってきそうなのは、電探です。戦いの勝敗を決するのは、人間の技量以上に、電子兵器の性能という時代に突入していたのです。
国力・技術開発力で劣る日本は、どれだけアメリカに対抗できるのでしょうか。

というわけで、再びミッドウェイを舞台に激闘が始まろうとしています。蓮見大佐も登場しましたが、今までよりもおとなしく^^;、本格的な戦い前の前哨戦を描きつつ、技術的な視点も多かったので満足できる内容でした。
陋巷に在り (3) (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第3巻を読み終えました。今回は、ついに顔回と子蓉(しよう)が直接対決することになります!

孔子は、前巻での少正卯(しょうせいぼう)屋敷の家宅捜査失敗の責任を取って、自ら自宅に蟄居しています。そのおかげで、ようやく子貢(しこう)は孔子と顔を合わせることができました。しかし子蓉の媚術に取り込まれた子貢は、それでも彼女の元に通うのをやめることができません。

その頃、顔回は子貢と共に子蓉の元を訪れた冉伯牛の元を訪れていました。どのような巫術を仕掛けられたのか、伯牛は酷い病に冒されていました。そればかりか、その家全体にもその悪影響が及んでいたのでした。顔回は、伯牛家の竈神の力を借りて、それらを祓いました。しかし、伯牛はそれ以外にも、直接体の中に何か術を施されているらしく、顔回の力でもそれ以上の回復は望めそうにありません。

そして顔回は、ついに自らが直接少正卯の屋敷に乗り込むことを決意します。子蓉の魅力の虜になり、いっこうに帰ってこない子貢の奪還と、伯牛に施された術の解呪方法を聞き出そうというのです。屋敷に乗り込むにあたり、顔回は妤(よ)の髪の毛を持参しました。妤は巫子ではありませんが、普通の人には見ることができない使鬼を見ることができますし、巫女としての素質は十分に持っているようです。

顔回がやって来たことを知って、子蓉はうれしくてなりません。自らの魅力に惹かれて、顔回がやって来たのだと子蓉は思い込んでいたのでした。そんな子蓉を、兄の悪悦は止めようとしますが、子蓉の恐るべき力は悪悦をも越えていました。

こうして顔回は、子蓉と対面することになりました。何重にも張り巡らされた媚術の罠に、顔回は何度も落ちそうになりました。しかし、ギリギリのところで顔回は踏みとどまることができました。それは妤の髪の毛に、それだけの力があったからでした。どんなに秘術を尽くしても、顔回が落ちないことが子蓉には信じられません。そして、それは強力な力を持った髪の毛のせいだと子蓉は知りました。

屋敷から帰ろうとする顔回を、悪悦が呼び止めました。悪悦は顔回と戦うことを決意していました。しかし、それを少正卯が止めました。悪悦が顔回に執着している間に、少正卯の屋敷の周囲は顔氏の術者に囲まれていたのです。いつもの悪悦なら、それにすぐ気づかないはずがありません。そんな悪悦を、少正卯はたしなめたのでした。

こうして顔回は、無事に少正卯の屋敷から帰還することができました。悪悦や子蓉も恐ろしい存在ですが、それ以上に少正卯という存在が不気味です。彼は孔子が、三桓家の壊滅を目指していることを知っています。しかし、少正卯はそれを阻止しようとは思っていません。逆に孔子に手を貸すことすら、少正卯は考えています。彼はいったい何を目的に行動しているのでしょうか!?

少正卯は、孔子の勢力を利用するために、門下の公伯寮(こうはくりょう)を取り込みました。公伯寮は、同門の子路の方が孔子に信頼されていることを不満に思っていました。そのわずかな隙を、少正卯に狙われました。そして今では、公伯寮は完全に媚術の虜になっています。少正卯は、公伯寮に何かをさせるつもりのようですが、それは失敗してもかまわない程度の作戦らしいです。つくづく少正卯は、底の見えない恐ろしい人だと思いました。

顔回との戦いに敗れた後、子蓉は夜な夜な出歩いていました。なんと彼女は、顔氏が少正卯の情報を探るために派遣した、巫術者たちを次々と殺していたのです。そして、そんな子蓉と顔氏の太長老の守り人である顔穆とが対決することになってしまいました。老練な技を持つ顔穆でしたが、子蓉の恐るべき媚術はその顔穆の力すら越えていました。

子蓉との戦いで致命傷を負った顔穆は、孔子の屋敷の門前で息絶えました。顔穆は、孔子の母である徴在(ちょうざい)へのかなわなかった恋を抱えていたのです。彼が孔子に対して、どこか突き放した態度を取ってしまうのも、それが原因でした。そんな顔穆は、最後に自らの屍を孔子の前にさらすことで、孔子に何を伝えたかったのでしょうか。

というわけで、3巻は顔回と子蓉との緊迫感のある戦い、謎の多い少正卯の暗躍、顔回の守り人である五六の師でもある、顔穆の思いがけない死と、読み応えのある内容でした。
覇者の戦塵1942 激突 シベリア戦線 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第11作、「覇者の戦塵 激突 シベリア戦線(下)」を読み終えました。

前巻の終わりに、満州へと派遣された秋津中佐は、日ソ間に速やかに停戦条約を締結させるために動き始めました。
それを実現するために、秋津中佐はシベリア鉄道を分断する電撃戦を目論みました。山下中将から作戦実施の許可を得た秋津中佐は、その準備に取りかかります。

ソ連との戦いで、まず問題になるのは重装甲を持つソ連軍戦車への対抗策でした。それを秋津中佐は、ドイツから持ち帰られたロケット砲を使うことで解決しようとします。既にその試作が何度も繰り返されていましたが、技術に無理解な上層部から無理な性能要求を突きつけられて、開発は難航していました。

しかし秋津中佐は、開発中の試作品の投入を決めました。その試作品は、長距離での命中精度に問題がありましたが、100mという短距離なら十分に目的を達していたのです。試作品の数は限られていましたが、秋津中佐はそれを少数の部隊に装備させたのでした。

そしてついに、日本軍のソ連領への侵攻が開始されました。ソ連側も日本軍の動きを警戒しており、それを出し抜いて作戦を実行する必要がありました。しかし、そういった事態も秋津中佐は想定済みで、日本軍の侵攻はほぼ予定通りに達成されたのでした。

いきなり試作品を持たされて、現場の最前線に立った多喜田軍曹は、その性能を全く信頼していませんでした。ところが、開戦初期に試作品が想像以上に効果をあげたのを見て、考えを改めました。秋津中佐の読み通り、その試作品はソ連の戦車を1発で撃破できる力を持っていたのです。

戦いは日本軍優位に推移しますが、その最中に思わぬ横槍が入りました。日本軍の優勢を知った上層部が、さらに大規模なソ連との全面戦争を計画していたのです。そんな無茶を言い出すのは、秋津中佐とも少なからぬ縁のある各務大佐でした。
各務大佐の計画は、ドイツに派遣されている辻中佐を支援するためでもありました。

そんな計画が実施されることになれば、秋津中佐の目論見は完全に崩壊してしまいます。今回の戦いがうまくいっているのは、秋津中佐が機動部隊を集中的に運用して短期決戦を目指したからです。もし戦線が拡大することになれば、ソ連との間に優位な立場から停戦条約を結ぶ機会も逃すことになってしまいます。

そのためには、一刻も早く戦いの要となっているイマンを陥落させる必要がありました。ところが、予想以上に防備を固めていたソ連軍に、日本軍は足止めされかけていました。そこで重要な役割を果たしたのは、牡丹江に派遣されていた航空部隊の存在でした。

その航空部隊が保持する戦力は多くありませんでしたが、戦線が満州から近いこともあり、1日に何度もの攻撃を仕掛けることが可能でした。そんな航空部隊の支援もあって、地上部隊は当初の予定通り、あっという間にイマンを陥落させたのでした。

そして、日本とソ連の間には停戦条約が結ばれました。その条件として、日本は第三国によるソ連の施設の利用を封じました。これによって、ソ連を経由して行われていたアメリカ軍の作戦は阻止されることになりました。さらにスターリングラードを攻略していたドイツ軍は、ソ連軍に敗れていました。それに伴い、ドイツに派遣されていた辻中佐が帰国する目処も立っていません。

危ない橋を渡る局面もありましたが、秋津中佐の目論見はこうして成功しました。ソ連の動きを抑えたことで、日本軍はアメリカとの戦いに集中することができそうです。現実とは違う、この世界の戦いがどう動いていくのか、この続きも気になります。
陋巷に在り〈2〉呪の巻 (新潮文庫)酒見賢一さんの「陋巷に在り」第2巻を読み終えました。

前半は、1巻に続いて陽虎との戦いが描かれました。陽虎がクーデターを起こした裏では、南方の巫術を用いた恐るべき仕掛けが用意されていました。それに立ち向かうのは、顔回です。陽虎は五父の衢(ごほのちまた)に、饕餮(とうてつ)と呼ばれる守護神を呼び出していたのです。

顔儒の一族は、饕餮に立ち向かいますが、饕餮の力は強大で相手になりません。そこに顔回が現れました。顔回は饕餮を、倒すのではなく、神の一人として敬ったのです。それによって、ようやく饕餮を鎮めることができたのでした。

巫儒の力を失ったことで、陽虎の目論見は完全に崩れました。しかし、陽虎もただ者ではありません。数々の危機に見舞われながらも、肝の据わった態度でそれを切り抜けました。おまけに難を切り抜ける中で、ちゃっかりと魯の国の宝物まで盗み出していました。

その後の陽虎は、斉に逃れるも捕らわれてしまいます。ところが、陽虎はそこからも逃げ出して、晋へと逃げ延びました。しかし陽虎はまだ、自らの野望を捨てたわけではないようです。恐るべき野望と行動力の持ち主ですね。
物語の中では、悪役として描かれている陽虎ですが、個人的には自らの意志を貫き、窮地にあっても諦めない姿には、どこか心ひかれるものがありました。

そして物語は、ようやく顔回が妤(よ)と知り合った後にもどってきます。例によって、妤にくっつかれていた顔回は、ちょっとした油断から、謎の巫術師の術中に落ちてしまいました。そこで顔回は、術者に操られた使鬼に襲われますが、自らの力でそれを切り抜けました。
後でそれを知った顔回の守り人・五六(ごろく)は、顔回から目を離して別の企てに力を貸していたことを悔やむのでした。

五六が関わっていたのが、最近魯の国で勢力を伸ばしてきた少正卯(しょうせいぼう)の主催する塾を探ることでした。
少正卯のことは、孔子も危険な存在だと考えていました。しかし、いつの間にか少正卯は、官位を得て魯の宮中に姿をみせるようになっていました。

少正卯は、意図的に孔子に近づきます。孔子はそれを無視しようとしますが、どうしても少正卯の術中から逃れることができません。少正卯の背後には、陽虎の時よりも大きな巫儒の力を持つ者が存在するようです。

その筆頭である悪悦(あくえつ)こそが、先に顔回に術を仕掛けてきたのです。悪悦は顔回の力を試すために、あのような術を仕掛けたのです。それは一歩間違えれば、顔回の命を奪いかねない術でしたが、それくらいやらなければ顔回の実力を知ることができないと悪悦は気づいていたのです。

悪悦には、妖しげな媚術を使う子蓉(しよう)という妹がいます。彼女もまた顔回に興味を持ちました。天性の巫儒の才能を持つ顔回ですが、子蓉の使う媚術に対抗する技は教わってきませんでした。そんな顔回でしたが、なんとか子蓉の気を削ぎ、彼女から害意を奪いました。しかし、そんな顔回に子蓉はますます興味を持ったようです。

その頃、魯の国の貴族が住む町では、異常な事態が起きていました。昼日中の町中に、怪しい巫儒者が数多く現れたのです。彼らは日に日に数を増やし、放置しておけない状況になりました。孔子は司寇(しこう)として、彼らに対応せねばならなくなりました。

そして孔子は、それらの巫儒者の集団が少正卯の屋敷に集まっていることを突き止めました。しかし、兵を引き連れて孔子が少正卯の屋敷に踏み込んだ時、そこには巫儒者の姿はありませんでした。孔子は少正卯にまんまとはめられたのです。
新参者とはいえ、宮仕えする身分である少正卯の屋敷に踏み込んでおきながら、何もなかったでは通りません。少正卯はそこで孔子に恩を売ろうとしますが、孔子はそれをはねのけました。孔子は、この始末をどうつけるつもりなのでしょうか。

顔回と饕餮の戦い、そして悪悦の仕掛けた術との戦い。不気味な存在である少正卯の暗躍と、さまざまな要素が盛りだくさんで前巻以上に面白かったです。
ボヘミアンガラス・ストリート 第1部 発熱少年今頃なんですが、平井和正さんの「ボヘミアンガラス・ストリート」第1部を読み終えました。

29日周期で42度の高熱を発する体質の大上円は、家族とともに新しい街へと引っ越してきました。そこで高熱を出しているその日に、円は運命的な出会いをすることになりました。下劣な暴走族にからまれていた美少女、百合川螢と出会ったのです。それからも、円はちょくちょく螢と顔を合わせることになります。しかし、なぜか円はいつも最後には螢を怒らせてしまいます。

さらに円は、螢のことを慕っている小雪とも知り合います。最初はいきがってタバコを吸ったりしてみせた小雪でしたが、円の不思議な魅力にひかれて態度を改めることになりました。円とその家族は、不思議な力を持つ一族でした。円たちが頻繁に転校を繰り返していたのも、その力が原因だったのです。

小雪を叱った時の円は、ちょうどエネルギーが高まってハイになっている時期でした。そんな円に、小雪は完全にまいってしまったのでした。そして小雪と親しくなったことをきっかけに、円と螢の関係もさらに緊密なものになりました。

そして円は、螢の複雑な生い立ちを知りました。螢の現在の父と母は、どちらも螢と血がつながっていないのです!
螢の実の両親が離婚して、螢は父と一緒に暮らしていました。その父が亡くなって、螢は再婚していた母に引き取られました。ところが、その母も亡くなり、母の再婚相手が別の女性と再婚したことで、現在の複雑な状況が生まれたのでした。

螢は学校では、周囲から完全に孤立していました。みんな螢には一目置くところがあり、彼女に手出しすることができないのです。そんな螢が、次第に円には弱みをみせるようになってきました。円と螢、小雪の三角関係は、これからどうなっていくのでしょうか。

昔、この作品を読み始めた時は、それまでの平井作品との違いに戸惑いしか感じませんでした。しかし、平井和正さんは執筆した時期により、作風がシフトすることに気づいたおかげで、ようやく第1部を読み切ることができました。
覇者の戦塵1942 激突 シベリア戦線 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第11作、「覇者の戦塵 激突 シベリア戦線(上)」を読み終えました。

前巻では技術的な視点が少ないのが不満でしたが、今回は陸軍の電探と本土防空体制を中心に、技術者の出番が多くなりました。

アメリカと開戦した日本ですが、ノモンハンで戦った後、日本とソ連はいまだに中途半端なにらみ合いを続けていました。
公式的には宣戦布告していないので、日ソ間は戦争状態にはないという不思議な状況が続いています。そんな中、ソ連方面から予期せぬ攻撃を日本は受けることになりました。アメリカ軍の爆撃部隊がソ連を経由して、日本本土に爆撃攻撃を仕掛けてきたのです。

これを受けて、本土の防空体制を強化すべきなのですが、海軍はミッドウェイ方面にかかりきりで、本土防空のための戦力を派遣しません。やむなく海上での飛行に不慣れな、陸軍の航空部隊が敵編隊の防空を担当することになりました。しかし、海軍とは違い陸軍では航空機に搭載されている武装が劣るものでした。さらに各所に敵の来襲を検知するための電探が配備されてはいましたが、その扱いに熟達した者がいませんでした。

結果的に、それなりの防備は整えていたのに、それをうまく連携して活用できないために、米軍の東京爆撃を阻止することに失敗したのでした。陸軍の技術士官である多知川少佐は、その現状を調査しますが、その報告は上層部に届くことはありませんでした。この当時、技術者は用兵に口を出すことは許されず、要求された装備の開発に専念していればいいという風潮があったのです。

多知川少佐の上司である漆原少将は、彼の指摘をきちんと理解していました。しかし同時に、その危険性も認識していたのです。そして多知川少佐は、漆原少将のすすめで海軍の技術研究所を訪れることになりました。そこで多知川少佐は、深町少佐と出会ったのでした。陸軍とは別に、海軍の技術開発も様々な問題を抱えていました。民間に委託する形で技術開発を進める陸軍とは対照的に、海軍では独自の研究機関で技術開発を進めていました。

日米の戦いが長期化する兆しをみせる中、陸海どちらの方式にも問題点があることを深町少佐は指摘しました。そして深町少佐は、それを改善するために民間の技術力の向上が必要なことを多知川少佐に訴えたのでした。

そして多知川少佐は、民間の技術指導を行うと共に、本土防空の要となる迎撃部隊の装備の改善に取り組みます。それがやがて、海軍機には既に導入されている電探を搭載した機体の投入へとつながっていくことになります。

深町少佐らとは別に、陸軍参謀本部に所属する秋津中佐も、技術に理解がなく無謀な作戦を連発する参謀本部で孤立していました。しかし、参謀本部の中にも秋津中佐に功績に注目している人物がいました。姫川大佐はノモンハンでの秋津中佐の行動を知って、関東軍の中に不穏な動きがあることを教えます。

ノモンハンであれだけ苦労したにも関わらず、積極的にソ連領に侵攻してシベリア鉄道を寸断する作戦が計画されていたのでした。その背後にいるのは、辻中佐でした。辻中佐はノモンハンで大失態を演じながら、積極さのみが評価される陸軍の風潮から、厳しく責任を問われることはありませんでした。そればかりか、形ばかり参加したマレー作戦が成功したことから、再び参謀本部に返り咲いていたのでした。

辻中佐の勢力は、秋津中佐を参謀本部から追いやろうとしていました。秋津中佐は、あえてその作戦に乗りました。それは辻中佐が密かにドイツに行くことになったからです。辻中佐がドイツにいる間に、秋津中佐はソ連との関係を修復して、辻中佐の行動を無意味なものにすると共に、辻中佐に対抗できる派閥を築き上げようと考えたのです。

そんな秋津中佐の作戦は、うまく成功するのでしょうか。そして、陸海ともに内部体制にかなりの問題を抱えた日本軍は、これからの戦いをどう戦っていくのでしょうか。
覇者の戦塵1942 反攻 ミッドウェイ上陸戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第10作、「覇者の戦塵 反攻 ミッドウェイ上陸戦(下)」を読み終えました。

海兵隊の決死の攻撃で、日本軍はミッドウェイのイースタン島をほぼ占拠しました。しかし、日米の戦いはまだ続いています。最初の戦いで、赤城と蒼龍を失った日本海軍でしたが、残された飛龍の航空部隊を投入して、米空母への大規模な攻撃を実行します。

それと同様に、アメリカ海軍もまた前線で戦う空母レキシントンを支援すべく、エンタープライズ、ヨークタウンの2空母を戦線へと投入してきました。日本軍はエンタープライズの動きまではつかんでいたものの、ヨークタウンの存在を知らず、お互いに一歩も譲りません。

日本海軍は、第一航空艦隊と呼応するように、真珠湾から急行している第二航空艦隊がレキシントンを挟撃する体制を取ります。この作戦は大きな戦果を上げますが、今度はエンタープライズとヨークタウンから発進した米航空部隊のために、日本海軍が危機にされされます。

戦いの中、第一航空艦隊に残された空母・飛龍も被弾しますが、幸いにも大きな被害を出さず、飛行甲板の前部を破壊されるも、応急処置で対応して艦載機を発艦させることができました。しかし、第二航空艦隊は2隻の空母のうち、翔鶴が敵部隊の攻撃を受けて、発着艦が不可能な上に航行に支障を来すほどの大きなダメージを受けていたのでした。

最終的に、日本海軍は米空母エンタープライズにダメージを与えたものの撃沈にまでは至らず、日本海軍の空母・翔鶴も大きなダメージを受けたものの、なんとか戦場から待避できる程度には損害を回復させることができました。

海兵隊は、ミッドウェイをほぼ掌握しましたが、こんなに苦労して手に入れた拠点から、蓮見大佐はすでに引き上げることを考えていました。もちろん、単に撤退するのではなく、今後しばらくはミッドウェイが米軍の航空拠点として利用されることがないよう、徹底的に破壊した上で引き上げるつもりのようですが・・・。

今回も航空戦を中心に、日米の戦いが描かれました。今回もメインとなる視点は、魚住一飛曹でした。前巻では信じられない活躍をみせた蓮見大佐ですが、今回は珍しくおとなしかったですね。(^^;
物語の中心が戦いなので、技術的な動きがほとんど語られず、電探の活用や無線通信による各部隊の緊密な連携の必要性が示されるにとどまっていたのが、ちょっと寂しかったです。
陋巷に在り〈1〉儒の巻 (新潮文庫)先日、「泣き虫 弱虫 諸葛孔明」の最終巻を読み終えましたが、著者には「陋巷に在り」という作品もあったことを思い出しました。

物語の舞台となるのは、紀元前の中国。主人公は「論語」で有名な孔子と、その弟子・顔回みたいです。物語が始まった時、孔子はすでに五十歳を迎えていました。ようやく魯の官吏になった孔子は、魯の中での勢力を拡大しようとしてます。

孔子には多くの弟子がいましたが、その1人・顔回はちょっと不思議な青年でした。陋巷と呼ばれるスラムのようなところに住みながらも、不思議と品の良さを感じさせるところがあります。そんな顔回に惚れてしまったのは、同じ陋巷に住んでいる妤(よ)という女の子です。

陋巷での顔回は、日々何をするでもなく暮らしていました。彼の父・顔路は、葬礼の儀式を取り仕切ることで、何とか生活を立てています。顔回、そして孔子も、顔一族という巫術を操る集団でした。今ではこういった儀式は、怪しげなもののようですが、はるか昔のこの時代その術は間違いなく人々のすぐ側にあったのでした。

そんな顔一族の鬼子と呼ばれたのが、孔子でした。孔子はそれまで巫術として存在したものを、1つに体系化して国を治める元としようとしていたのです。孔子自身も強力な巫術の使い手ですが、それ以上に生まれた時から才を認められていたのが顔回でした。

普段は陋巷でふらふらと暮らしている顔回ですが、時に孔子を助けるために彼の敵と戦うこともあります。とはいえ、顔回は武術で戦うのではなく、巫術を使って敵となる術者と戦います。孔子が斉に招かれて、君主と共に夾谷に赴いた時、斉は彦(げん)一族の呪術を使い、孔子を亡き者にしようとしていたのです。

その背後にいる黒幕は、斉の重鎮である晏嬰(あんえい)でした。晏嬰は高齢でしたが、孔子が勢力を伸ばしている背後には巫儒の力があるとみて、彼を危険な存在だと考えていたのです。しかし、そんな晏嬰の目論見は、孔子自身の力と、顔回の力で消えました。

孔子は、かねてより晏嬰のことを尊敬していました。それ故に、晏嬰が自分の狙うのは、何か誤解があったからだと考えます。そして孔子の代理として、顔回が晏嬰の元を訪れることになるのでした。顔回が晏嬰のところに着いた時、晏嬰は死を目前に控えていました。しかし晏嬰は顔回と話をして、儒を危険なものだと考えていることを聞かせてくれました。

物語は中盤から過去に遡り、魯の国で起きている権力争い、孔子と顔回の過去が語られます。魯は、三桓氏と呼ばれる一族が国を支配してきました。当然、孔子もその独占体制を崩そうとしているのですが、彼に先立って陽虎という男が行動を起こしました。陽虎は、南方の巫術者を使い、自分の地位を固めようとしています。

そこに送り込まれてきたのが、孔子の元に弟子入りするためにやって来た顔回でした。顔回が行った行動によって、陽虎は罠に落ちようとしています。その顛末が語られるのは、次巻以降になるようです。

巫術が超能力的なものとして描かれていて、なかなか面白かったです。本の表紙が諸星大二郎さんというのも、作品の妖しげな雰囲気と合っていて良かったです。(^^)
覇者の戦塵1942 反攻 ミッドウェイ上陸戦 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第10作、「覇者の戦塵 反攻 ミッドウェイ上陸戦(上)」を読み終えました。

アメリカとの開戦と同時に、真珠湾とミッドウェイを同時奇襲攻撃をかけた日本軍。真珠湾での作戦は、それなりに戦果を上げましたが、ミッドウェイでの戦いでは日本軍は大きな被害を出していました。米空母とミッドウェイから航空部隊の攻撃により、赤城と蒼龍の2隻の空母を失っていたのです。

今回は、蒼龍の航空部隊の一員であった魚住一飛曹の視点から物語が始まります。蒼龍から出撃した魚住一飛曹は、想定外の数の敵を相手にすることになりました。そのままミッドウェイへと進んだ魚住一飛曹でしたが、そこには目標としていた敵航空部隊の姿はありませんでした。

作戦を終えて母艦に帰還した魚住一飛曹は、蒼龍が敵の猛攻を受けているのを目にすることになりました。母艦への帰還を果たせなかった魚住は、不時着水して駆逐艦・舞風に救助されたのでした。

大きな戦力を失った日本の機動部隊でしたが、残された空母・飛龍を中心にして戦力の再編成を行いました。それと共に、真珠湾に進出していた部隊との連携を目指します。そんな中、舞風から飛龍へと移った魚住でしたが、愛機を失った彼にそこでの出番はありません。そして魚住は、上官である塩崎中尉と共に、海兵隊の母艦となっている光陽丸へと移ることになりました。

それは魚住にとっては、屈辱的なことでした。海兵隊は海軍から抽出された兵士で構成される部隊ですが、そこに集められたのは技量が未熟であったり、行いに問題がある半端者の集団だと思われていたからです。そんな風に海兵隊を馬鹿にして転籍した魚住でしたが、装備の充実より技量の向上を重視する海軍と、少ない人手や未熟な兵士を支援するために装備の充実を重視する海兵隊の違いに驚くことになりました。

そして、海兵隊によるミッドウェイへの上陸作戦が実施されました。上陸部隊を指揮するのは、棟方兵曹長です。敵前への上陸という危険な任務を、海兵隊はなんとか達成します。しかし、上陸はしたものの敵部隊の反撃を受けて、それ以上の侵攻することを阻止されていました。ミッドウェイ周辺には、米潜水艇部隊も展開しており、後方からの補給も滞る上陸部隊は、危機にさらされます。おまけに、本来なら海兵隊を支援するはずの航空部隊が、飛龍を中心とした海軍部隊の索敵のために駆り出されていて、上陸部隊は航空部隊の支援を受けることもできない状況です。

ここに颯爽と登場したのが、海兵隊司令・蓮見大佐です。今回の蓮見大佐は、いつもの艦戦ではなく、陸軍から借り受けた旧式の連絡機でした。敵前に強行着陸した蓮見大佐は、前線の部隊に指示を与えて、イースタン島の占拠を目指します。
蓮見大佐は、例によって無茶としか思えない作戦の強行を棟方兵曹長に命じます。そんな作戦がうまく行くのかと、棟方が不安に思う中、どこからともなく海兵隊の航空部隊が現れて、彼らの作戦を支援します。

それが、蓮見マジックの始まりでした。なんと蓮見大佐は、海軍の支援に向かった航空部隊が母艦に帰還するついでに(!)、ミッドウェイ上陸部隊の支援を行わせたのです。海兵隊には未熟な搭乗員が多いことを逆手にとって、母艦への進路を誤ってミッドウェイに進出してしまったことにしたのです。(^^;

さらに蓮見マジックは続き、航空支援を受けた上陸部隊は、敵の滑走路を占拠することに成功しました。そこに現れたのは、空母から発艦はできるけれど、着艦はできない若年兵の航空部隊です。棟方たち上陸部隊が、滑走路の占拠に成功していなければ、彼らは母艦に着艦することもできず、不時着するしかありません。1つ何かが狂えば、完全に破綻する無茶な作戦のはずなのに、結果をみれば収まるべき場所にきちんとピースが収まってしまう不思議。これはもう、蓮見マジックとしか言いようがありません。

というわけで、ミッドウェイに侵攻した海兵隊は、その占拠にほぼ成功しました。しかし、同時に上陸作戦を決行した陸軍部隊は苦戦しているようですし、敵空母の殲滅を目的として発艦した海軍航空隊の作戦は完全な空振りに終わりました。
最終的な戦いの行方は、まだどう転ぶかわからない状況ですね。
覇者の戦塵1942 急進 真珠湾の蹉跌 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第9作、「急進 真珠湾の蹉跌」を読み終えました。

この巻では、ついに日米が開戦します。史実とは異なる状況の変化があるので、この世界での最初の日米の戦いも異なるものになりました。その一番大きな違いは、アメリカが日本の侵攻を事前に予期して、戦いへの備えを進めていたことです。

物語は、南シナ海で行動する日本軍の駆逐艦が、アメリカ国旗を掲げた哨戒艇を発見するところから始まります。すでに日本軍は、この方面に向けての作戦をスタートさせていたため、駆逐艦は米軍への通報を警戒して哨戒艇を撃沈しました。

そして舞台は、奇襲攻撃が行われた真珠湾へと移ります。真珠湾に侵攻した日本の機動部隊は、湾内に停泊中の艦隊に攻撃を仕掛けます。ところが、湾内にいたのは旧式の艦艇ばかりで、新型の戦艦や空母の姿は発見できません。2回に渡る攻撃で、日本軍はそれなりの戦果を上げましたが、その直後に今度は米軍の逆襲を受けることになったのでした。

すでに日本軍の艦艇や航空機には、電探が装備されていました。しかし、直接相手を攻撃するものではない電探を、上層部は軽く見ていたのです。また、新たに搭載された装備ということもあり、その操作に熟達した兵が決定的に不足していました。

ところが、戦いが進むにつれて、司令部は電探の有効性を認めざるを得なくなってきました。そして、電探を搭載した偵察機を早期に警戒に上がらせていたため、空母・加賀を中心とする艦隊は敵の反撃に備えることができたのでした。しかし、航空部隊の熟練度は低いものの、米軍は多くの潜水艦部隊を展開していました。結果的に、空母・加賀は飛行甲板に爆撃を受けて、戦線から離脱することになったのでした。

この世界では、真珠湾攻撃と平行して、日本軍はミッドウェイにも機動部隊を派遣していました。ところが、ミッドウェイに進出した日本の機動部隊は、アメリカ空母に搭載された艦載機の攻撃を受けて、日本軍の空母は壊滅的な打撃を受けていたのでした。

今回はそんな戦いの様子が、真珠湾攻撃部隊を指揮する瑞垣少佐、空母・加賀に乗り込んだ航空参謀の出島少佐、真珠湾内に突入して敵艦を攻撃する特別格納筒部隊の酒巻少尉、と複数の視点から描かれていました。異なる視点からさまざまな戦いが描かれるのは興味深かったですが、真珠湾を攻撃した瑞垣少佐が加賀に帰還したあたりは、瑞垣少佐の視点と出島少佐の視点が入り組んでいて、読んでいて混乱するところがありました。
泣き虫弱虫諸葛孔明 第伍部酒見賢一さんの「泣き虫 弱虫 諸葛孔明」も、この5作目でついに完結です。

この巻では、孔明の南征と北伐が描かれます。南征では、有名な戦って捕らえた孟獲を7回打ち負かして7回逃がす作戦が描かれます。この戦いの主眼は、敵を討ち滅ぼすことではなく、孟獲を心から蜀に心服させることでした。そのために、孔明は配下の武将の反感を買いながらも、あえて何度も孟獲を逃がします。

南征は本史には記述が少ないらしく、三国志演義の方にならって語られています。そのせいか、このところはっちゃけぶりが減った孔明が、久々に変態ぶりを発揮します。(^^;

蜀と戦う南蛮勢力も、最初はワイルドなファッションの敵という感じでしたが、後の戦いになるほど人間離れしてきて、北斗の拳みたいな雰囲気が漂い始めます。それを孔明は、この日のために用意した妖しげな怪獣戦車(?)で迎え撃ちます。

そして孔明は南蛮を心服させて後方の憂いをなくし、北伐に専念できる体制を作り上げたのでした。そしてついに、孔明は有名な出師の表を書き、悲願の北伐に挑みます。

魏と蜀では、国力に大きな差があるため単独の成功は困難です。北伐を成功させるには、呉にも魏に侵攻してもらい、魏に二正面作戦をとらせる必要があります。しかし、呉は肝心なところで国内が安定していなかったり、孫権が戦下手だったりして、今ひとつ魏を攻めきれません。

また蜀にとって決定的に不足していたのが、人材と補給体制でした。特に人材面の差は大きなものがあり、孔明と話が合い有能だけれども実戦経験がない馬謖を街亭に派遣したことから、蜀は決定的なチャンスを潰して北伐から撤退せざるをえなくなってしまいました。

信賞必罰の厳格さを重視してきた孔明は、ただでさえ人材が足りないのに、馬謖を斬らせることになりました。その後も続く北伐の中、劉備をずっと支えてきた趙雲が亡くなり(涙)、まだ若い張苞と関興までもが亡くなりました。そしてついに、孔明自身の命数もつきようとしていました。

五丈原に侵攻した蜀に対して、魏は司馬懿が司令官となり、徹底して守りを固めることで蜀を追い込もうとします。その上、司馬懿は孔明の命数がつきかけていることを見切っていました。そして孔明が死んだとみるや、司馬懿は蜀の陣地へとなだれ込みます。ところが、そこに死んだはずの孔明の姿が・・・。

驚いた司馬懿は、必死でその場から逃げ出します。これまた有名な「死せる孔明、生ける仲達を走らす」ですね。
それ以外にも、孔明は自分が死んだら魏延が裏切ることも予見していました。最初に三国志を読んだ時は、裏切った魏延 の悪役ぶりばかりに目が行きましたが、孔明は魏延を作戦中に殺そうとしたり、魏延から恨まれるのも無理ないと思えるようなことをやってますね。(^^;

というわけで、ここに笑える三国志も完結しました。全体を振り返ってみると、やはり第一部と第二部の面白さが際立っていました。初めて読む三国志本としてはお勧めできませんが、小説でもマンガでもいいので三国志を読み通した後この作品を読むと、その面白さを堪能できると思います。
覇者の戦塵1942 撃滅 北太平洋航空戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第8作、「撃滅 北太平洋航空戦(下)」を読み終えました。

上巻では、ソ連の強襲に日本軍が電探を活かして、何とか反抗する展開でした。占拠された武蔵基地への爆撃も成功して、ここから巻き返しかと思いきや、意外なことに戦いは膠着状態に陥っていました。前線の兵士は闘志にあふれているのですが、後方からの支援が滞っているのです。海軍の主要部隊は、いずれ実行される作戦のために力を注いでいて、北千島に振り向ける余裕がなさそうです。

そんな中、アリューシャン方面に進出していた伊五三潜水艦は、アメリカからソ連へ物資を移送している艦隊を発見しました。そこに投入されていたのは、なんとアメリカ軍の正規空母でした。輸送している戦力が北千島に投入されたら、再び日本は苦しい状況に追い込まれます。伊五三潜は、敵の移送ルートを想定しつつ行動を開始します。

そして、前巻で起きたアメリカの測量船誤爆事件の真相も明らかになりました。測量船といいながらも、その船は妨害電波を発信し、ソ連軍を支援していたのでした。その船を爆撃したのは、黒崎二飛曹でした。彼は自分の行為の正当性を主張しますが、司令部はそんな彼の言葉を聞き入れませんでした。そんな状況の中、蓮見大佐が司令部に出向いていたのでした。

帰還した蓮見大佐は、不足している航空機の補充してきました。そればかりか、黒崎二飛曹の行った爆撃を、蓮見大佐が行ったことにして、部下をかばっていました。蓮見大佐は、やることはとんでもないですが、こういう男気をみせるのが格好いいですよね。

そして世界情勢は、日本とアメリカの開戦は避けられない方向に動いていました。そして、さらに驚くべき事実が明らかになりました。黒崎二飛曹が爆撃した測量船に、最終的にとどめを刺したのは、ソ連軍の爆撃機だったのです。表向き、その事実は伏せられているようですが、それをきっかけに米ソの親密な関係は崩れようとしています。

そんな中、政界から引退した宇垣大将は、アメリカとの開戦はやむなしと考えていました。しかし、現在の政権では、この危機を乗り越えることができないとも予想していました。そして戦いを止めることはできなくても、戦いをやめる算段ならできると、宇垣は考えていたのでした。

その頃、幌筵島では次の作戦に向けて蓮見大佐が動き出していました。陸上基地で空母への着艦訓練を行った後、前巻にも搭乗した特設運送艦・光陽丸へと移動して、アメリカからソ連への物資輸送を阻止する作戦を計画していたのでした。
そして伊五三潜は、空母を守ろうとする敵駆逐艦との駆け引きを続けつつ、空母の動きを捕らえようとしています。そんな中、敵艦を撃沈した伊五三潜は、その生き残りを捕虜として得ました。

その間に、ソ連の駆逐艦がアメリカ空母との合同を目指して動いていることが明らかになりました。なぜソ連の駆逐艦が、そんなことをするのか。蓮見大佐はその目的が、輸送される航空機のパイロットを送り届けることにあると見抜きました。
米ソの合同を阻止することが、物資の輸送を阻止することにつながるのです。

海兵隊の航空部隊は、それを阻止する作戦を決行しようとします。しかし、ソ連軍も大量の爆撃機を投入して、日本軍の行動を封じ込めようとします。そして北太平洋上で、日本軍とソ連軍の激しい戦いが繰り広げられることになりました。戦いの中、海兵隊の航空部隊を移送する光陽丸も、飛行甲板に爆弾の直撃を受ける被害を出しました。それによって、航空部隊の光陽丸への帰還は一時的に不可能になりました。

戦況が混乱する中、鹵獲したシュルツモビクを利用して、蓮見大佐がとんでもない作戦を考え出しました。黒崎二飛曹をシュルツモビクに搭乗させて、ソ連軍への航空機輸送を阻止しようというのです。しかも、本来陸上への着陸しか考慮されてないシュルツモビクを、修復させた光陽丸の飛行甲板に着艦させて、翌日の攻撃に参加させようというのです。

こんな無茶な作戦を、蓮見大佐と黒崎二飛曹は実現してしまいました。黒崎二飛曹の操るシュルツモビクは、空母の飛行甲板に並んだ艦載機に壊滅的なダメージを与えることに成功したのでした。

この作戦の後、日本軍は北千島に侵攻したソ連軍を完全に押さえ込みました。そんな中、新たな戦いが始まろうとしていました。日本軍が、英米との本格的な戦いに突入したのです。しかも、その初戦で日本軍は大きな被害を出したようです。
その戦いの詳細は、次巻で語られることになりそうです。
覇者の戦塵1942 撃滅 北太平洋航空戦 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第8作、「撃滅 北太平洋航空戦(上)」を読み終えました。

占守島に配備された尾辻兵曹は、導入されたばかりの試作十四号電探の異変を知りました。異変の原因は、機器の不良によるものと考えた兵曹でしたが、それはソ連による大規模な北方への侵攻作戦の始まりだったのでした。

攻撃の規模を把握できなかった日本軍は、一気に占守島への上陸部隊と空挺部隊による攻撃にさらされ、島の各所に配置されていた電探施設は次々と破壊されていきました。そればかりか、ソ連の侵攻部隊は占守島の先にある幌筵島にも及んでいました。

その頃、海軍と陸軍の合同による輸送演習が千島海峡で実施されていました。大規模な敵の来襲を知って、海軍と陸軍それぞれの参謀の意見が対立していました。輸送船の安全を第一に考える陸軍は、早期の戦線からの撤退を考えていました。一方、海兵隊の戦闘機を多数搭載する海軍参謀は、ただちに偵察機を派遣して状況を把握しようとしていたのでした。

そして艦攻での電探の調整のために派遣されていた深町少佐は、電探の操作に精通していたことから、艦攻に搭乗してソ連の動きを偵察する任務を与えられることになりました。技術士官でしかない深町少佐にとって、これは思いもかけないことでした。しかし、突如現れた海兵隊の蓮見大佐に押し切られて、深町少佐も偵察に協力することになったのでした。

この海兵隊司令の蓮見大佐は、常人とかけ離れたとんでもない人物でした。(^^;
戦闘機に搭乗するのに、なぜか軍刀持参だったり、後ろでどんと構えていてもよさそうなのに、自ら進んで危地に飛び込んでゆく大胆不敵さ。こんな大佐に指揮される部隊は、当然そんな上官に振り回されることになるのですが、大佐はその驚異的な能力で、あっさりと危険をくぐり抜けてしまいます。

そんな暴れん坊の活躍もあって、日本軍はじょじょに体勢を立て直していきます。もちろん、その裏では大佐にこき使われる深町少佐の苦労があったり、占守島で陸軍に協力して電探を活用した尾辻兵曹の地道な努力もあったりしますが。

そんな物語の合間に、今では首相の座から引退した宇垣大将のところへ、日下部記者が訪れました。海外の新聞にも寄稿し、海外経験も豊富な日下部が出入りすることを、宇垣は黙認していました。そんな2人の会話を通して、この世界の日本が置かれている政治状況が明らかになっていきます。

宇垣の後任として首相になったのは、近衛文麿でした。しかし近衛は陸軍を押さえることができず、政治体制は弱体化していました。そして欧州では、ドイツ軍がソ連へと侵攻して、独ソ戦が始まっていました。こんな時期になぜ、ソ連は北千島に侵攻してきたのか。その意図が、じょじょに見えてきます。

日下部は、今回の背景にはアメリカの思惑が絡んでいると言います。ドイツに西の輸送経路を押さえられたソ連と、北満州油田の開発による日本の急速な工業化を危険視するアメリカ。さらには、陸軍が政府に無断で進めたドイツとの密約。
前作で阻止された三国同盟は、宇垣の知らないところで再び動いていたのです。

アメリカ政府の上層部は、既に日本との戦いを想定していますが、アメリカ国内の世論は、今のところ開戦に消極的です。
しかし日下部は、いずれアメリカは大義名分を用意して、この戦いに参加してくると読んでいました。そんな時、今の内閣では日本を支えきれません。だから日下部は、宇垣が再び政権に返り咲くべきだと考えていたのでした。

2人の会談の間にも、戦いは続いています。蓮見大佐に率いられた艦爆戦隊は、ソ連軍に奪われた幌筵島の武蔵基地への夜間爆撃を敢行します。それと連携して、海兵隊が幌筵島へと上陸する作戦です。占守島にいた尾辻兵曹は、上官と共に幌筵島へ向かい、上陸した海兵隊と合流するはずでした。

ところが、島に上陸はしたものの、そこに海兵隊の姿はありませんでした。海兵隊の作戦遂行中に、同様にソ連軍は松輪島にある海兵隊基地を爆撃していたのでした。さらに敵情の偵察を続ける深町少佐は、アメリカのアリューシャン列島から大規模な編隊が飛んできたことを知りました。ソ連軍が次々と攻撃部隊を送り込んでくる裏には、やはりアメリカの支援があったのでした。

さらに、海上を航行する特設輸送船団にも危機が迫っていました。敵は日本軍が電探を使っていることを察知して、錫箔をまいて妨害工作を行います。しかし、それが逆に深町少佐に敵の存在と位置を知らせることになりました。しかし、少佐の予想外のところから、B-25の編隊が進撃してきていました。

その編隊に、有効な武器を持たない蓮見大佐の艦攻が接近します。捨て身で船団を守ろうとしたのかと思いきや、大佐は敵に肉薄することで敵編隊の行動を乱して、彼らを自滅させたのでした。こんな無茶をしながらも、蓮見大佐は当然のように生き残っているのが凄いですね。(^^;

戦いはいまだ続く中、宇垣の元にある知らせが届きました。北千島に接近していたアメリカの情報収集船を、海兵隊の航空部隊が誤爆していたのです。・・・がしかし、それはアメリカ国内の世論を動かすために仕組まれた謀略に、まんまと日本がはまってしまった結果のようです。

アメリカの参戦も遠くない状況の中、この世界の戦いはどんな方向に向かうのでしょうか。

今回は、蓮見大佐のキャラがとにかく強烈でした!(^^;
覇者の戦塵1939 殲滅 ノモンハン機動戦 下 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第7作、「殲滅ノモンハン機動戦(下)」を読み終えました。

一時的に休止していますが、日満軍とソ蒙軍の戦いは続いています。圧倒的に不利な状況の日満軍でしたが、前巻の終わりに決死の渡河作戦を決行したことで、なんとか戦局を互角の形成にまで持ち込みました。しかし、ソ蒙軍の前線部隊の増強は続いており、これを放置すれば日満軍は決定的な敗北を喫しそうな状況です。

そんな中、秋津少佐は奉天製作所の佳木斯(チャムス)分工場で、驚くべき戦車が試作されているのを目撃しました。それは海軍の艦艇で旧式になった砲や、旧世代の飛行機のエンジンを転用して製作された戦車でした。その戦車は水密性にも優れており、なんと陸上だけでなく浅い川であれば水中でも進行できる水陸両用戦車だったのでした。それを知った秋津少佐は、海軍陸戦隊をこの戦いに投入すれば戦局を打破できると考えたのでした。

しかし陸軍、とくに関東軍の内部には、陸での戦いに海軍を投入することに対する反発が根強くありました。秋津少佐を満州に派遣した石原少将からも、海兵隊が今回の戦いに投入されることがないように念押しされていました。それでも秋津少佐は、ノモンハンでの戦いの決め手となるのは、この部隊を戦線に投入できるかにかかっていると確信するのでした。

その頃、ノモンハンでの前線では、ソ蒙軍による本格的な総攻撃が開始されていました。日満軍は連日、大量の砲撃にさらされて圧倒されていました。しかし、室生中尉らを中心に前線の防護陣を堅牢に構築していたおかげで、なんとかその猛攻に日満軍は耐えていたのでした。

戦いが進展する中、乏しい戦力をやり繰りして、室生中尉の率いる砲戦車を中心とする部隊は、反撃に出ました。その作戦は一応の成果を上げましたが、戦いの後で驚くべき情報を室生中尉は入手しました。ソ蒙軍の日満軍に対する北と南からの包囲網は、1つだけでなく、内側の戦線のさらに外側により大きな包囲網が展開していたのでした。

この包囲網が完成すれば、日満州軍は壊滅的な損害を受けることになります。室生中尉は、その情報を司令部へと伝えようとします。ところが、あきれたことに後方で戦いを指揮する関東軍司令部は日曜日だからと羽をのばしており、そのために前線への指示が停滞するという事態に陥っていたのでした。

そんな中、室生中尉の前に秋津少佐が現れました。秋津少佐は、関東軍司令官である永田司令官を動かして、ついに前線への海兵隊投入が決行されることになりました。秋津少佐や海兵隊の小早川少佐が事前に先行して準備を整えておいたこともあり、海兵隊の前線への投入は迅速に行われました。

そして海兵隊の主導による、渡河作戦+南北の部隊を指揮する敵司令部への奇襲攻撃が開始されました。限られた時間の中、夜明け直前に作戦は決行されました。その戦いで、海兵隊の十二試重戦車はその力を発揮しました。重装甲と水陸両用という特徴を活かして、敵司令部を潰走させたのです。とはいえ、さすがの海兵隊も戦車戦の経験は不足しており、室生中尉らの部隊の支援がなければ、部隊が壊滅するところでした。

司令部を失ったソ蒙軍は、大混乱に陥りました。そして戦いは、再び膠着状態に陥りました。ソ蒙軍を率いた将軍は更迭され、戦いの間に密かに進行していた独ソ不可侵条約が結ばれていました。さらに、史実では日本・ドイツ・イタリアの三国で結ばれた三国同盟も、この世界では日本は参加しないという形で決着しました。
この戦いのもう一方では、欧州での戦いが拡大していました。ドイツのポーランド侵攻に応じて、ソ連も東欧や北欧への侵攻をもくろんでいます。

というわけで、今回はさらに史実から離れた展開+架空戦記のお約束^^;新型兵器の投入もあって、物語はさらに史実とは違う方向に動き始めました。この世界がこの先どんな方向に向かうことになるのか、この続きも楽しみです。
覇者の戦塵1939 殲滅 ノモンハン機動戦 上 (C★NOVELS)谷甲州さんの覇者の戦塵シリーズ第7作、「殲滅ノモンハン機動戦(上)」を読み終えました。

これまで読んできた覇者の戦塵シリーズは、角川から発売されたものの合本版でした。この本から、中央公論社のC-NOVEVLSシリーズとして書き続けられています。

今回は、モンゴル人民共和国と満州国との国境紛争という形で、モンゴルを後押しするソ連と、満州国の関東軍との戦いが繰り広げられることになりました。その背後には、北満州油田の権益を狙うソ連の思惑があります。一方の関東軍は、戦車戦に対する理解のないまま、無謀ともいえる作戦を連発します。

今回メインの語り手となったのは、第4連隊の試製1号砲戦車を指揮する室尾中尉です。欧州での戦いを経験しているソ連は、戦車を用いた作戦に精通しつつありました。そんなソ連軍に、日本軍は大苦戦することになるのでした。

ソ連の戦車の完成度は、独自に戦車戦を研究していた室尾中尉さえも驚くものでした。日本軍の九七式中戦車では、ソ連のBT戦車の装甲を破ることはできませんでした。それだけでなく、戦車の進行方向にピアノ線を利用したワイヤーを張り巡らせ、それに絡まった戦車が行動不能に陥ったところを攻撃する作戦も、日本の戦車部隊に大きな被害を与えていたのでした。

そんな中、唯一の救いは戦車部隊の後方に、段列と呼ばれる支援部隊が同行していることでした。段列による、傷ついた戦車の修理や防護陣地の急造などの支援があるおかげで、なんとか戦車部隊は崩壊を免れていたのでした。ところが、戦車の価値を認めようとしない関東軍の参謀は、時折前線に現れては無茶な命令を強要します。

その参謀・各務中佐だけでなく関東軍の司令部には、いまだに歩兵こそが重要だとする考えが染みついていました。そして戦車や段列などに無駄な機動力を使うなら、火炎瓶を持って戦車に突撃しろとさえ言い出す有様でした。

しかし戦場の実情を知る室尾中尉や、段列を率いる上川大尉には、それは受け入れられる考えではありませんでした。こうして関東軍は、下士官や兵士の能力は高いのに、司令部がそれを活かすすべを知らないために、苦境に陥ることになるのでした。

苦しい状況の中、室尾中尉と上川大尉は戦場に残された敵のBT戦車の鹵獲を目論みます。その作戦も多くの兵士の犠牲を生みましたが、BT戦車を確保したことで室尾中尉たちは今後の作戦方針を立てることができました。
日本軍よりもはるかに強力な砲塔を装備したBT戦車ですが、戦い方を工夫すればそれに対抗できると室尾中尉は気づきました。また試製1号砲戦車の砲撃なら、BT戦車を撃破できる力があることもわかりました。

補給も滞りがちで、部隊のやり繰りにも苦労する中、司令部は歩兵を主体にした反撃作戦を実行します。しかし、その準備の間にソ連側も部隊が補強されており、戦線は膠着状態に陥りました。

そんな状況を変えたのが、国内から戦いの実情調査に赴いていた秋津少佐と、戦力補強のために派遣された段列部隊を指揮する寺岡大佐と陣内大尉でした。彼らの力で、傷ついた戦車の修理と鹵獲した敵戦車の戦力としての利用。さらに歩兵部隊を支援する砲戦部隊を支援するために行われた渡河作戦では、重機を活用してわずかの時間で渡河ポイントを築き上げました。

そのおかげで、日本軍はソ連軍をハルハ河西岸まで後退させることに成功しました。しかし、ソ連はさらなる戦力の増強を続けていて、これで戦いが終わったわけではありません。にもかかわらず、日本側は相変わらず部隊の増強が進んでいません。こんな状況で、日本軍はソ連軍の侵攻を食い止めることができるのでしょうか。

とりあえず上巻だけ読み終えましたが、上巻だけでも独立したお話として楽しめるようになっているのがよかったです。
これまでの戦いも激しかったですが、この巻からはより激しい戦いが繰り広げられています。それなのに、相変わらず独断専行を続ける関東軍と、各務中佐に代表される無能な司令部。敵の戦力は脅威ですが、それ以上に味方の無知と傲慢が、戦いをより苦しいものにしているように思えます。